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女難危行・拉致した皇女と六人の嫁  作者: 雛人形
第一章
10/90

意思

よろしくお願いします。

ちょっとセリフ多いかも

  「俺を捜してた?」

 渡航船へと渡る木製のタラップに片足を乗せた状態から動きは止まった。見知らぬ世界へと、突然投げ出され、何度も死の恐怖を覚悟させられた。それらを作り、自分に味合わせた元凶(おんなが、二日の時を経てユキヒトの目前に再び姿を現した。今、初めて自分の中に、暴れまわり制御し兼ねる物が生まれた事を自覚した。それは直ぐにでも体を引き裂き、外へ出ようと騒ぎ立てる。


 「ロゼ様、何とか間に合いましたね」


 「ええ! 」


 ブラッディは、主の目的が達成できた事に安堵している。駐屯地では悲惨な結末を味わい、胸に深い傷を負ったが、それもこれで報われる。


 「やはりローゼス皇女であったな」


 「そうですね、皇女様でしたね」


 渡航船へ既に乗船していた二人は、前から予想はしていたがはっきりとした確信が持てなかった理由から、その名を口にはしなかったが、予想通りの召喚者出現で初めて声にした。


 唯一人、心落ち着かぬ者が居る。従者マリネだけはこの現状をまだ喜べずにいる、体は緊張を保った状態から解き放たれていない。それは一言だけ発した後は沈黙したまま固まり、その者がロゼを見る目は、決して安堵した心境を語っていない事を感じているためだった。


 「自己紹介も終わったし、一緒に首都へ行きましょ!」


 ロゼはユキヒトを連れて行こうと、手を取り…………。

 激しく弾かれた━━━。


 「やっ………ぱりそうなってしまった…」


 己が危惧した情景が現実に目の前で起きてしまった。落胆と、考えを打ち明けなかったことに、後悔の念を覚えるが、もう遅い手遅れとなった。彼は激しく感情のまま動いてしまったのだ、もう激情は止められないかもしれない、行く付く処まで進むはずだ。

 

 そして、ロゼは手を弾かれた理由が理解出来ていない、ぽかんと手を見詰めるだけ。あちらの世界で出会って、此方へと連れ添う移動中にミスして落としたけど、自分は探し当て迎えに来たのに、如何して手を弾かれるの?と。

  

 もう一度手を伸ばして………。

 彼の言葉が先制してその手を退かせる。


 「質問が有る」

 ユキヒトの声には、何の情も乗っていない。


 「何かしら?」

 一緒に行く上で、分からない事が有る、程度にしか受け取っていない。


 「あんた……、俺を元の世界へ、帰す事が出来るか?」


 又もや、何も情が感じられない言葉を吐き出す。

 ユキヒト自信の鼓膜にさえ、他人が語っている様に響いている。


 一度召喚した者を、元の世界へ帰す魔法をロゼは知らない、その術が存在するのかさえ知ってはいない。突然有した召喚の力はフォーチュンの災いを祓う、その義務感から力を行使し別の世界へと赴き、その使命を全うした。そして、その力は生涯一度限り二度は使えない、彼女に招致した者を元の世界へと帰す力は無い。


 嘘を語る理由が無い、ロゼは正直に答える。

 

 「出来ないわ、私にはムリね」


 「そうか、分かった」


 ロゼの返事を聞くと凍結していた体が動き、、踵を返しタラップを登っていく。質問されたから正直に返答した、事情がまだ飲み込めないロゼは、付いていけず陸地に残っている。二人の従者が駆け寄り声を掛けるまで、今度はロゼが止まっていた。本来ならその時点で、タラップが収納され出航となっていた筈、何が起きているのかさっぱりとわからない船主が乗船していない事に救われた。


 「ロゼ様!! 」

 「姫様!! 」


 禁じた呼称を耳に我に返る。


 「ああ、待って━━━! 」


美しい金髪を振り乱しながら、駆け上がる、遅れて従者二人もロゼに続き乗船した。

ユキヒトはマストの付近で陸に背を向け立っていた。静かに近寄り、拒まれた事情が分からないロゼはそれを聴こうとする。


 「えっと、何がご不満?教えてく…………。

 「あんたに、用は無い帰れ」


 最期まで話を聞かず、即座に追い返す無礼な振る舞いだ。

 プラッディが剣に手を掛けたまま至近距離へ詰め寄った。

 

 流石に斬り付けはしないだろうが、刀身が鞘から抜かれた━━━!

 

 ドン━━━!


 ブラッディは船の縁まで吹き飛ばされた。

 手で押した位では届く距離ではない、が、ユキヒトは動いていない。


 「おい━━━! 」

 「ユキヒトさんっ! 」


 在り得ない物を二度も体験している二人は彼を抑えようと飛び付く。

 

 「落ち着けユキヒト! 」

 「話を聞いてあげて! 」


 女性二人に体を抑えられている姿を見て、ロゼが怒った。自分付の従者が、不埒にも吹き飛ばされて怒りを表した。騎士を、貴族を一般人が不遜にも突き飛ばした。


 「ちょっと、いい加減にしなさいよ! 」


 「ロゼ……様……………」


 船の縁に掴まりながら立ち上がる、その姿を目にして更に激怒するロゼ。

 自分に健気に付き合っている者が突き飛ばされた! 。

 

 「そう……いう気なら! ……少し懲らしめる! 」


 ボウッ!  炎がロゼの手に舞う。


 アリアネスとハルの体が、ゆっくりと僅かに浮かびユキヒトから離れる。

 

 「いけません━━━、ロゼ様! 」

 

 「大丈夫よ! 、殺すわけじゃないから」

 

 女二人がユキヒトから離れ止まると、腕を彼に向け振った。

 

 手から放たれた炎は一直線に進み、対象を焼いた……筈。が、その炎はユキヒトの身体へ着弾する前に、呆気無く消滅していった。火傷して転げまわる所を水系の魔法で消し、仁王立ちして踏ん反り返った後。悠然と言葉を吐き捨てる予定が、消し飛んだ。


 「へっ?、何、したのあなた…」


 皆が、無言で動けず金縛りにでも罹っている中、ロゼに近付く足音だけが聞こえる、ユキヒトが彼女の傍に到達すると、足音も止り再び静けさが拡がる。


 「もう一度言う、あんたに用は無い帰れ! 」


 「如何して?、何故そんなに冷たく言うの?」


 あっちの街では、こんな怖い顔していなかった。もっと優しい顔をしていた筈、それが今は冷たく、罵る様に帰れと言われる。


 「本気で分かってねえのか?」


 「私には…あなたが怒ってる理由が…分からない」


ユキヒトはじっとロゼの顔を見て、冗談でもふりをしている訳でもなく、本当に自覚していない事がわかった。分かったからと言って、彼女に同行して首都へと赴くつもりは無かった。


 ここでハルが割って入ってきた。


 「ユキヒトさん……、皇女様の事情も聞いてあげれませんか?」

 「私からもお願いします! 」


 マリネも傍に寄って、懇願してきた。


 

   ふっ、関係者をまとめて一掃しようとおもったが、


     何やら妙な雰囲気ではないか…………


 「其処か━━━! 」


 アリアネスがマストの最上部へ矢を放った! …………空を抜けて行く。

 

 渡航船の舳先に黒衣の者が姿を晒した。

 甲板上に散らばっていた全員、そちらへ身構える。


 「皇女様一行には、御初に御目に掛かる 」


 ユキヒト達の方を向きなおす。


 「此方は三度目だが、姿を見せるのはやはり御初かな?」


 船主が悲鳴を上げて船室へ飛び込む、彼を脅したのはこの者と判明した。

 昨日の奇妙な現象は全てこの者の仕業と見える。


 「昨日の妙な気配も、ユキヒトを閉じ込めた結界も貴様か! 」

 「如何にも、全て私が仕掛けた事だ」


 ロゼの前を庇っている、従者ふたりを掻き分け黒衣に物申した

 「あんた何者?、私達に何か用?」


 六名に鋭い視線を向けられているのに、黒衣の者は動じもせず答える。


 「いえいえ直接、貴女達には用は御座いませんよ、用が在るのは……


 黒衣のマントの下から、腕を伸ばした指はユキヒトに向けられている。


 渡航船の船主を脅し船を出港させず、気配だけ残し姿を消し、ユキヒトを騙し誘き寄せ結界に閉じ込め、大蛇に襲わせた。何の為なのか?、そしてユキヒトに用事が在ると言う、彼が異世界から来た事も知っていて、何等かの理由で近付いて来た、此れからその真意を語るつもりなのか?。


 「異世界人が邪魔なのだよ」


 「つまり、あんたが厄災て訳ね!、この場で終わらせてやるわ」


 マリネとブラッディが剣を抜いて構える、場の雰囲気でアリアネスとハルも戦闘の体勢を取った。マリネとハルはそれぞれの相方に、間接魔法の詠唱を唱え始め、ロゼは先程より更に巨大な炎を身に纏わせた。此れから船上で、戦闘が開始される。


 誰もがそう身構えていた。


 「ちょっと、待てよ━━━━!」


 ユキヒトが場の雰囲気を散らした。


 「要は俺が、この世界から居なくなれば問題無いだろ」


 「………………そうだ」


 「俺は元の世界に帰る、その方法をラケニスに聞きに行く」

 「ほう三魔女ラケニスか……」


 「交戦もいいが、この二人には世話になった、怪我させたく無い」

 

 「貴様が帰る保障は……?」

 「聞いた筈だろ、妙な雰囲気と言ってたし、芝居じゃ無い」


 黒衣の者は言葉を絶ち、じっと甲板に居る全員を見ている。


 「………………良かろう、今は引こう、だが吐いた言葉を違えた時は!」

 「そん時は、何時でも襲って来い!」


 黒衣の者は、今のやり取りを最期に再び姿を消し去った。

 船上からは、戦闘開始の緊張状態からは開放された。


 ロゼが傍に来て、説得を続け様とするが、先にユキヒトが切り出した。


 「今の見たろ、俺が遮らなかったら戦いになった」

 「そう……ね、確かに」


 「理不尽に、命を喪いかねない世界から、元の平和な場所へ帰る」

 「でも……この世界は、今危機に曝されて」


 「らしいけど、それはそっちの事情だ」

 「そんな…………、助けてくれると」


 「あの時、自分が異世界から来たと言ったか?」

 「それは……言ったら信じた?」


 「信じな無かったら、黙ったまま連去るのか?、俺の世界では誘拐だ」

 「うっ…………」


 「生き抜いたが三度、死の危うき目に遭った、命のやり取りを言ったか?」

 「伝えて……ない」


 「この世界に飛ばして、何故放置した?」

 「そ、それは………」


 「二日後に突然現れて、弁解も謝罪も無く、一緒に来い?」

 「ご、御免なさい……」


 「これだけの帰りたい理由を言ったんだ、もう納得しただろ?」

 「では、この世界を見捨てるの?」


 「見捨てる?、事情の説明は最初じゃないのか?」

 

 ユキヒトとロゼの、二日間を埋めて余りある会話は終わった。

 

 会話を終えたユキヒトは、船室へ逃げ込んだ船主に出航する旨伝えに行く。数分後、船主が飛び出してきて、船員を連れて来るとタラップを上げ、渡航船は港の岸壁から離れて出港した。


 出航の準備中、船員が甲板を走り回るが、ロゼはその場から動けず呆然と立ち尽くしている。準備の邪魔になるが、皇女だと分かると船員では退けとも言えず、マリネに支えられてその場から船室へ移った。船員はやっと準備を進められ、渡航船は港を離れる事が出来た。


 船室へ入ったロゼは、一言も言葉を出さず、沈黙したまま茫然自失を脱しきれないでいた。長い期間を共に過ごしてきた従者の二人でも、この様な姿を見たことが無く、傍を離れる事が出来ない。何時ものロゼにならこの様な危惧はしないが、責任を感じて命を絶つのでは?、とさえと見える変わり様であったのだ。


 一方、ユキヒト達は甲板に居た。


 船の縁で海を眺めているユキヒトの傍にハルが訪れた。


 「言い過ぎと思う?」


 聞かれてから、少し考えてハルは答えを返した。


 「う、ん……少し、でもユキヒトさんの気持ちも分かります」

 

 答えた後、間を空けてから、続けて話を聞いて欲しいと頼むハル。


 「あの黒衣の……尋常な力では無かったです、助けて貰えませんか?」


 ハルからの言葉は正直、ユキヒトの気持ちを大きく揺らした。彼女は遇えて答えを待たず、その場を離れていく。示し合わせたかは分からないが、ハルが去った立去った後に、アリアネスもユキヒトと話をしに訪れた。


 「やっぱり、言い過ぎだと?」

 「いや、私でも同じ事を言ったと思うぞ、多分」


 アリアネスは意外にも、同意する様な言葉を用意していた。


 「私とハルは、ユキヒトの意思を尊重してきた、その上で……

 「その先は、聞かなくても、分かるよ言いたい事」

 「そうか……、どう決め様と、私とハルは最期まで付き合う」

 「うん、ありがとう」


 それじゃあと、アリアネスもその場を立去って行った。二人の言いたい事は理解出来ていたし、助けたい気持ちは、間違い無くあるのだ。何が起きようとしているか及びつかないが、真っ先に被害を受けるのは、何時も一般人だ。それと、真相は知らなくても、首を縦に振っていたのは事実だ。


 「はぁ━━━、参ったね全く」


 

 「申し訳ありません」


 「うわ!」

 

 突如、声掛けられ慌て振り向く。


 そこには、マリネとブラッディ、従者が立っていた。


 『ご無礼招致で、お話を聞いて頂きたく参りました』

 

 


ありがとうございました

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