プロローグ:囚人のジレンマ
囚人のジレンマとは、ゲーム理論に基づく思考実験である。
ある事件で、共犯関係にある二人の犯罪者が逮捕された。
警察は二人の囚人をそれぞれ別の部屋に隔離し、取り調べを行った。
二人の囚人に対し、警察は以下の取引を持ち掛ける。
「罪を自白し、捜査に協力した者はその場で釈放する。しかし、黙秘権を行使し捜査に非協力的態度をとった者は三年の刑を受ける」
「二人とも黙秘を貫いたら、刑はそれぞれ一年とする」
「二人とも自白した場合、刑はそれぞれ二年とする」
この取り調べによる結果は、以下の四つのケースが考えられる。
【囚人Aが自白】×【囚人Bが黙秘】=囚人Aは釈放。囚人Bは懲役三年。(合計懲役三年)
【囚人Bが自白】×【囚人Aが黙秘】=囚人Bは釈放。囚人Aは懲役三年。(合計懲役三年)
【囚人Aが自白】×【囚人Bが自白】=両者共に懲役二年。(合計懲役四年)
【囚人Aが黙秘】×【囚人Bが黙秘】=両者共に懲役一年。(合計懲役二年)
以上の点から、両者にとって協力して『黙秘』(合計懲役二年)することが最良の選択である。
しかし、個人的利益を追求した場合にはその限りでは無い。
【自白した場合】 0年~一年の懲役刑。
【黙秘した場合】 二年~三年の懲役刑。
と、なるため、相手を裏切り自白(合計懲役〇年)する方が有利となる。
これにより、両者が個人的利益を追求した場合、協力関係は破綻し結果として最も不利益な選択(合計懲役四年)を選ばざるを得なくなる。
この思考実験によって得られる回答は、個人的利益に基づく最適解は、公共の利益に基づく最適解と必ずしも合致しないことを示している。