表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/164

本編-0016 ビルド考察~エイリアン

【9日目】


拠点に戻った後、俺は5日間ほど引きこもった。


空腹を覚えたら青酸モモをかじりつつ、それでも飢餓感が強くなれば【命素操作】によって直接自分自身に命素をぶち込んで体力回復的な感じで誤魔化す。

一度集中すると倒れるまで集中してしまうのは、俺の長所であり短所だ。


睡魔も我慢出来るだけ我慢して、人間時代にも不可能であった5徹を達成したのであった――やり遂げて燃え尽きちまったぜ、真っ白にな……へへっ。


こほん。

その間、俺はひたすら魔素・命素をラルヴァやらスレイブ=コクーンやらに送り込む「産む機械」と化していた。

が、当然のごとくヒマだったので、思索に耽りつつ、その時間を利用して『エイリアン』と『エイリアン=ファンガル』のスキルテーブルを確認したので、得られた考察を述べておこう。


とりあえず、昨日と同じ時間にきっかりベータと交代して俺のそばへやって来たガンマに【情報閲覧】をかけてっと。

……こいつら、いつの間にシフト制みたいなもの組み上げたんだか。


【基本情報】

名称:ガンマ

種族:エイリアン

位階:3〈技能点:残り1点〉

HP:45/45

MP:11/11


ここら辺は以前も見たな。

復習みたいなもんだ。

だが、よく見てみると、位階がランナーの場合は最初から3であることがわかると思う。比較対象としては、たとえば『産卵臓』は位階が5だった。後はスレイブは2だな。


で。

なんか振れそうなのが1点あるんだよねぇ。

最初から全てが振られている、というわけでもないようだ。


んー。

アルファからイプシロンといった初期メンバーには、この数日間で愛着が湧いたから、あまり実験扱いしないで、振るならちゃんと振ってやりたいんだよね。


たかが1点、されど1点。

まぁ、とりあえずエイリアン達のスキルテーブルを拝見いたしますかねぇ。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


ほほう、これはこれは。

全体的な印象としては物理型。ビルド次第でタンクにもアタッカーにもなるといったところだ。

で、種族としては「エイリアン」でありながらも「系統」という下位分類が、別のスキルテーブルとしてぶら下がっている。アルファ達に関してはそれが【走狗蟲】というわけで――「系統」に対応する形で、技能がいくつか載っていた。

【咬撃】とか【爪撃】とかのあたりだろうか、初期の攻撃手段がそれによって強化されているというわけだな? で、多分、ランナーから上の進化種では、ここらの技能は引き継がれるか変化するんだろう――楽しみだぜ。


それから、種族『エイリアン』で一番強烈な特徴として【精神同調】系統の技能と【因子】系統の技能が挙げられる。

いやさ、やけにランナー同士の連携が良いとは思っていたんだが、まさか種族技能の裏打ちがあったとは――いや、その程度であれば狼だとかいった野生動物にもあるのかもしれないが。


だが、ゼロスキルによる最低限の効果だけでもこれほどの連携を見せているわけだから、もし【群体本能】から先のスキルを実際に取得していったら、こいつら一体どうなるんだろうな?


技能の概要説明も、一応見てみると、【精神同調】系はやはりエイリアン種同士のノンバーバルな意思疎通・連携能力を飛躍的に向上させるというもの。

別にそれぞれの個体の意識が消えるわけでもないようで、たとえばアルファが見たものをベータへ「同調」する際に、ベータは自分自身の目で見ている景色と重なるように、いわば"二重"の景色を見ることになるようだ。


ただし、この時ベータは増えた情報量を自分自身の(・・・・・)脳みそで捌かねばならない――考えてもみろ、右目でテレビを見つつ左目でyoutubeを同時に見るなんて芸当が戦闘中に苦なくできる奴がどれだけいる?

だから、必ずしも何匹も同調させまくって、一個の生命体みたいに動けるようになるわけでもない。

しかも、別にこの弊害は「視覚」に限った話じゃあ無いようだしな。

右目でテレビを見つつ左目でyoutubeを見ながら、さらに右耳と左耳で別々の音を追いかけ、おまけに右鼻の穴と左鼻の穴で別々の匂いを嗅ぎ分けられる奴なんて、双頭の聖徳太子でもなきゃ不可能だろうよ。


その意味では、【精神同調】は劇的な能力アップというものではない。

あくまで狼の群れとかライオンの群れの延長線上にあるようなものだ。


……それに。


「ギャ! グ! ガフ!」


「3個? 外れだベータ。正解は18個」


「ギィゥ……」


「ギャァァグギャアアァアギィイイ!」


うなだれるベータ。

そして、ねぇ()どん()気持()ち? とでも言わんばかりの勢いで周囲をぐるぐる回って煽る6体目走狗蟲(ランナー)のゼータ。

おう、ゼータ。お前、さっきデルタに同じことして手酷く痛めつけられたのを忘れたのか。ベータがのんびり屋だからって、やりすぎるとまた痛い目見るぞ――こいつも個性際立ってんなぁ、同じエイリアンなのにこんなに違うのかこいつら。


おほん。

今、何をしているのかというと、同調能力の精度実験である。

ゼータの前には18個の青酸モモが積まれており、1メートルほど離した場所で、ベータに後ろを向かせる。そしてゼータから「視覚」を同調させて……モモが何個あるかを、ベータに数えさせている。

結果はご覧の通りだが。


なんとまぁ、わずか1メートルの距離で18個の青酸モモを数えさせることすら、困難を伴う程度の精度でしか無いのである――少なくとも、ゼロスキルに頼った程度の【精神同調:同族】では。


しかも距離が離れるほど、精度はさらに指数関数的に低下することもわかった。

こりゃ、仮にランクMAXまで点振りしたとしても、たかが知れているかもしれんなぁ……バディを組ませたランナーを使って遠方を偵察させる計画は、ちょっと上手くいかない可能性が高い。

それよりは素直に、今後偵察向けの"因子"とそれによるエイリアンの進化種が手に入ることを期待した方が現実的かもしれんね。


とまぁ、こんな風に「感覚同調」それ自体は効果としてはささやかなもの。


ただし、だからと言って要らない子認定は早計である。

少なくとも「感覚同調」ではなく"脳みその情報処理能力"に関しては――【副脳蟲(ブレイン)】を噛ませると、話は全く変わってくることがわかったのだ。


因子【肥大脳】が解析完了さえすれば幼蟲(ラルヴァ)から進化可能となる【副脳蟲(ブレイン)】。

【精神同調:副脳】の概要説明からこいつの特性を推察するに、なんと、同調した他のエイリアンの"情報処理"を、その発達しているであろう巨大な脳によって肩代わりできるようなのだ。


……つまり、ベータとアルファがお互いの感覚を共有する際に、重なった映像とか音とかによる感覚の混乱だとか情報処理量増加による脳みその負担を、そのままブレインに押し付けてしまうことができるのである。

一方ランナー自身は、そうして空いた脳みその処理容量分を、自分の身体制御などに回せるようになるため、動きのキレを格段に上げられることが予想できる。


これは――俺のエイリアン達に、優先して振りたい技能だな。

「質より量」という、当面の俺の戦力拡充方針とも親和性が非常に高い。


まぁ、副脳蟲(ブレイン)を生産する目処がまだ立っていないし、本気でやろうとしたらレベルを6以上は上げないと【精神同調:副脳】には点振りできないのだから、今すぐにってのは無理そうだが。

ただ、前提技能の【群体本能】に振るだけでも、連携効率は今よりは上にこそなれど下になるということは、まず無いだろうな。


となると、迷宮としての総合力を考えた時、俺自身のビルドでは【眷属技能点付与】の優先順位を上げるべきかな? いや、【眷属経験点共有】によって俺自身が振れる技能点を増やすことだって、結果的には【眷属強化】系統の技能なんかに回せるようになるわけだから、どっこいといったところか。

優先順位は同程度、交互に点を振っていく感じにするのが良いかな。


以上が【精神同調】系統の技能の所感だ。

次は【因子】系列だが――この技能もまた、なかなかに魅力的で悩ましい。


とりあえず【因子枠増加】のⅠとⅡの概要説明を見るに。

どうやら【進化】に必要な"因子"には……注入できる種類に上限があるようだ。


走狗蟲(ランナー)なら「3」種類であり、奴隷蟲(スレイブ)では「2」種類――てなると副脳蟲(ブレイン)は「1」種類とかじゃあないよな?

まぁともかく、そんな形で"進化回数"の上限が設定されており、因子枠の上限以上に無理に因子を注入しようとすると――破裂(・・)するらしい。


そして、これを緩和するのが【因子枠増加Ⅰ】と【因子枠増加Ⅱ】というわけだ。

まぁ――実際に進化させていってみない限りは、この辺りは説明だけではわからないことも多いだろうがな。

例えば、進化に際して因子が必要なかった【産卵臓】みたいなのもあったし。

必ずしも「因子枠数=進化可能回数」ってわけではなさそうか。


魅力的ではあるな。

魅力的な技能系統ではあるが……どちらかというと、この系列は「量より質」感が大きいかな、強いて言えば。

進化を繰り返して、より上位個体へなった後に、さらに限界を突破する感じで使えば良いだろう。

少なくとも、焦って全ての走狗蟲(ランナー)に取らせるほどの技能ではない――俺の護衛なんかで、ピンポイントで"質"が求められる少数のチームを作る時に考慮するとかで大丈夫だろう。


……いや。

だったら、今その精鋭部隊を創設しておこうか。

5日間でランナーもそこそこ増やせたし、統率する立場に立つ個体も必要だろう。

「質より量」とはいえ「質」も備えておく余裕が無いわけでもない。

というわけで、俺は【産卵臓】を【進化臓】へ変態させる傍ら、アルファ~ゼータら6体の"名付き"達に、【因子適応】がランク壱になるよう点振りしてやった。

そして他の"名無し"のランナー達には、同様に【群体本能】に1点振っていった。


さぁてと。

戦闘部隊については、こんなところかいな。


んじゃ、次は奴隷蟲(スレイブ)か。


挿絵(By みてみん)


ランナーと違って進化後の位階は2で、追加で振れる技能点は無し。

……うーん、こいつら非戦闘員だからなぁ、経験点を稼がせる機会は少なそうだ。


あと「進化」「胞化」関係は一応固有スキル扱いになっていたが、特殊なものなんだろう、ランクは無かった。


振れない以上は、悩む愉しみは味わえない。

何かスレイブ達に上手いこと経験点を稼がせる方法が見つかれば話は別だが、今はとりあえず、地道に「エイリアン」としての"経験"を積んでいくという、自然な位階上昇を待つ他は無いか――1年で位階1という可能性が大だから、気休め程度の可能性大だが。


そこまで考えて、俺は種族『エイリアン』の技能周りの振り返りを打ち切る。

――なにせ、ようやく一つ目の【進化臓】が完成したのだからな。


   ***


【進化臓】の見た目は、胞化前の【産卵臓】を一回り大きくした感じである。

"肉根"が太く丈夫に――俺の太ももぐらいの太さの、血管なんだかよくわからない濃い赤色の管が、蠕動しつつ地面に伸びて相変わらず青と白の明滅に向かって這っており、グロテスク度では【産卵臓】を上回っている。


だが、それ以上に特徴的なのは、やはり"杯"の部分だろうな。

産卵臓が「何も無いところに"卵"を生み出す」ことから、お椀状の空洞として"杯"が表現されていたのに対して、進化臓のそれはまるでカマキリの卵を包んでいる例のぶよぶよかのような肉袋であった。

軽くつねってみると、いやいやするかのように進化臓全体がぶるぶる震える。

きめぇ。

構わず伸ばしてみると、お前はゴムかというぐらい、びよんぶよよん伸びる。

きめぇ。


……なるほどね。

これは"容れ物"であり、外付けの「繭」みたいなものってわけだ。

走狗蟲(ランナー)をこの肉袋の中に入れて【因子の注入】をぶち込んで放置すれば、周囲の魔素と命素を自動で吸収しながら、新たなエイリアンに進化するという仕組みだろう。そして、その進化先のエイリアンが多少巨体であったとしても、これだけよく伸びる肉の袋ならば十分に包んだ状態でいることが可能、と。


思ったより場所を取りそうかもしれないな。

産卵臓5基から離れた区画にしておいて良かった良かった。


とりあえず【情報閲覧】かけるかね。


【基本情報】

名称:進化臓

種族:エイリアン=ファンガル

位階:5〈技能点:残り2点〉

HP:125/125

MP:37/37


うむ。

種族『エイリアン=ファンガル』の比較材料が他に【産卵臓】しかないからまだ未確定だが……位階1ごとの増加量はHP31、MP9てところかな。


後は、そうだな……振り残しが「2点」か。

ええと、すると? ランナーが位階3で進化したて時の振り残しが1点だったことと合わせて考えると――エイリアンとエイリアン=ファンガル共に、初期技能点2で、位階1ごとの獲得技能点は1で確定ってわけか。


そうか、たったの1しかないのかぁ……いや。知性種と違って"職業"が無い分、これはこれで妥当なところなのかもしれないな。

それ以上がどうしても欲しければ、後は【眷属技能点付与】でどれだけ底上げできるかってところだろう。


【コスト】

・生成魔素:390

・生成命素:450

・維持魔素:80

・維持命素:50


【産卵臓】よりは上か。

まぁ胞化にかかった時間もこっちがずっと長かったしな。

スキルテーブルはこんな感じだ。


挿絵(By みてみん)


(固有技能)

・胞化:貴種化臓(※因子:必要因子の解析が完了していません)

・胞化:亜種化臓(※因子:必要因子の解析が完了していません)


さて、さて。

これはなんというか、かなり意外な結果だった。

言うなれば【進化】は動物型、【胞化】は植物形で"施設"みたいな存在。スキルテーブルもまた、かなり異なるラインナップと予想していたんだ。

が、蓋を開けてみれば中身はほとんど同じ、と。

魔法関連のところとか魔素・命素関連のところが多少違う程度でしかない。それと「感覚」周りかな、あえてピックアップすれば。


ふううむ。


あれか?

植物形ぽく見えても――やはりエイリアンとしての本質は"肉と神経"の塊ってか?

確かに、よく見てみりゃ【内臓流動】とかいう技能あるし。

"植物"に肺とか心臓は無いよな、さすがに。


すると……あぁ、なるほど。

なんとなく、理解できてきたわ。


要は、蟻とか蜂みたいな真社会性昆虫がカーストごとに分かれる形に近いのか。


例えば、体内に大量の蜜を貯めこんで「倉庫」の役割を果たす蟻がいる。

例えば、互いに連結して仲間に川を渡らせる「橋」の役割を果たす蟻がいる。

例えば、仲間の頭上で寄生蜂を警戒する「センサー」の役割を果たす蟻すらいる。

それこそ「女王」だって、ほとんど動かずひたすら卵を産み続けるんだから、"施設風"に表現すりゃ「生産工場」の役割を果たす蟻じゃあないか。


動物型とか植物型って分け方は、しょせん俺の先入観でしかなかった。


言うなれば『エイリアン=ファンガル』は動かない動物型(・・・・・・・)

内臓もあれば脳もあり、意識もあって、性格の違いだってある――故に、基本種族のエイリアンと同じく【精神同調】も【因子適応】も当然のように持っている。


斯くして、俺はまた一つ自らの【エイリアン使い】としての特性への理解が進んだのであった。


で、後は『固有技能』もとい【進化臓】の更なる"胞化先"だな。


【貴種化臓】に【亜種化臓】ねぇ……わくわくさせてくれるじゃあないのさ。

「必要因子」とやらがわからない以上は、まだなーんにも取れるアクションは無さそうだが。


でも、先の愉しみが無くならないどころか増えていくというのは、良いことだ。

それは間違いない。俺の「エイリアン使い」としての底は未だ見えないねぇ。


……さて。

それでは、いよいよ俺の【エイリアン使い】としての本領発揮が近づいてきた。

発光洞窟もとい俺の迷宮(ダンジョン)の整備状況を確認しつつ――アルファ達を"進化"させていってやろうじゃないか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ