よるがけ。
欲
僕は時々想う。
死んだらどうなるかとか、もし時間が戻せたらとか、とか、とか、とか…。
そんなの妄想。
でも、僕は動ける。行動できる。
そうだ!何か、行動しよう!いや、行動を起こすんだっ!
今を変えなきゃ、未来なんて変わらない。寧ろ未来が僕を待っていたって過言ではない!
そして、新しい自分と未来へ。
って…
さっきまで握っていた安いサバイバルナイフは一匹の犬の腹部に刺さっていた。
『あーぁ、またやっちゃった』
降りしきる雨の音
湿って重い空気
呼吸は穏やかで、何も感じない。髪の毛から滴る水滴が、犬の鼻先を一層湿らせる。
見慣れてしまった、赤。
未来も希望もこの刃物に乗せてどこまでも…
…っと
僕は、もぅ動かない犬からサバイバルナイフを引き抜いた。
温かい。血の匂い。
生きてた、さっきまで、遠退く、命。
わかってる。わかっているんだ、僕だって…
無意味な事だって。
でも知りたいんだ、命の儚さを。美しさを、屍から感じる無灯火な淡い何かを…
『ありがとう』
昔の夏休みにみんなで公園で遊んでた。
みんな照りつけてる太陽の下で走ってた。
僕は木陰が好きだった。そして、ハサミも好きだった。
お母さんに、色画用紙をもらっていっぱい切った事も覚えてるし、お母さんにお花をあげる為にハサミで切っては摘んで持っていった事だって覚えてる。
お母さんは笑ってた。
それでハサミは持ってたんだけど…それ以前に交ざれずにつまらないという不満が増えたんだと思う。
カマキリの首を切り落とし、バッタの足を切り千切り、蝉の胴体を真っ二つにした。
あの夏が懐かしい。
屍となった『モノ』。
未来…、将来…、希望…。
所詮は大きな箱で、その中に担ったものなんて入っていく訳でも、たかが入れようとなんてしない。
だからか…
僕は違う心の箱を手にしてしまったのかもしれない。そぅ今まさに、その箱にあらゆる欲を投げ入れている。
欲張りで。
メランコリックなリアル。
食べてもいいよね?
僕の一部になるから。
ありがとう、そして
『いただきます。』
なんだお前、気持ち悪っ
病気だなコイツ
違うよ……。
病気じゃないよ見ている世界が違うだけ。
END
慾