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新世紀の殉教者

君は小さな奇跡

作者: keisei1

 君は小さな奇跡 偉大なる驚異 新たな息吹


 産声をあげる赤子を祝福する彼は 紛れもなく新時代の宣教師だ 


 だが彼は今では ナスカに新しく地上絵を描き 


 モーセのように 海を二つに分け隔てたのは


 全てトリックだったと告白している

 

 そのせいか 祝福されたはずの赤子は 青年になった今


 宣教師に唾を吐きかけ 彼をその地位から引きずり落ろそうとしている


 かつて赤子だった青年は 宣教師の首を斬り落とし


 「革命を成就させよう」と雄叫びをあげている


 赤子は 自分なら本当の奇跡を起こせると信じているんだね 


 「小さな奇跡」が「小さな脅威」に成り変わったその瞬間


 僕は音楽の流れるイヤホンをしばらく外す


 歴史は繰り返す そう 全くその通りだ


 僕らはこんな馬鹿げたことを繰り返し


 灰から灰へと葬られて土へと還るんだ


 

 君は小さな奇跡 偉大なる驚異 新たなる神風


 少年院に収監された少年達を 右手を翳し(かざし) 


 祝福する彼は 間違いなく新時代の宣教師だ 


 だが彼は今では 顔の崩れ落ちたスフィンクスを修復し


 ノアのように新たな方舟はこぶね 宇宙船を空へと飛ばしたのは


 全て嘘偽りだったと懺悔している 


 そのせいか 祝福されたはずの少年達は 出所した今


 宣教師の服を炎で燃やし 彼の手に入れた名誉を奪い去ろうとしている


 かつて ただの少年犯罪者に過ぎなかった彼らは 宣教師の首をはね飛ばし


 「革命を成功させよう」と煽り立てている


 彼らは自分達なら 本当の奇跡が起こせると信じているんだね


 「小さな奇跡」が「小さな脅威」に成り変わった瞬間


 僕は文字をタイプする手をしばらく止める


 歴史は繰り返す そう 全くもってその通り


 僕らはこんな気狂いじみたショーを演じ続けて


 灰から灰へと葬られて土へと還るんだ



 僕が新著しんちょをしたため終えた時


 誰かが電話越しに僕を罵ったような気がした


 「人種融和を説いた彼は こめかみを弾丸で貫かれて 死んだではないか」

 

 僕が新著の末尾にサインをし終えた時


 誰かがメール越しに僕を嘲ったような気がした


 「人類愛を説いた彼は 腹部をナイフで刺されて 死んだではないか」


 彼らは立て続けに「現にあの宣教師だって!」と口にする


 全くこんな馬鹿げたやり取りを繰り返し


 僕らは灰から灰へと葬られ土へと還るんだね


 何と言っても 僕の新著のタイトルは


 「君は小さな奇跡」なのだから


 


 

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