偶然な、単なるプロローグ
閲覧ありがとうございます。
気まぐれで更新いたします。
『もちろんだよ! 明後日も、その次も、その先もずっと会えるよ!
じゃあ、また明後日ね』
「……ですか……のー……大丈夫ですか? 風邪ひきますよー!」
「─?!」
突然飛び込んだ光に思わず少年は目を細めた。と、同時に自分がそれまで眠っていたことを知る。
「おー起きた、良かった良かった」
少年の横には中腰の少女。肩には茶色く細長い小動物が乗っている。
焦点の定まらないまま、少年は少女に聞いた。
「……ここは…?」
「ここ? アシュートリア街とセトリノ村の間かなー。もうちょっと行ったらセトリノ」
「…そうなんだ…」
少年にとっては知らない場所だった。
それはもう理想的な、明るい緑一色の草原。そこに通る一本の道。道から少し外れた小高い丘に立つ一本の大きな木。
今日は気持ち悪い程気持ちいい快晴で、絵に描いたようなこの場所はまさにピクニックにぴったりだろう。
そんな木のふもと、まるで死んだように一人の少年が寝ていたら、誰でも気にはなるものだ。
「君は?」
「あたし? いやぁたまたま通りかかっただけなんだけどね、きみがこんなところで寝てるからさーつい気になって声かけちゃった」
「………」
「ね、きみはなんでここにいるの?」
「なんでって…」
「だってここ、普段は人こないよ? ピクニックには最適だけど見たところきみは手ぶら。つまり客観的にみて目的が分からない」
「えっと……」
しばしの沈黙。
少年は黙りこんだあと徐にわからない、と呟いた。
「えっ?」
「…分からない。僕がなんでここにいるのか。というか、ここに見覚えがない」
予想外の返答に、少女は思わず絶句する。
「家は?」
「…………」
「分から…ない?」
「過去の記憶が、こう、もやもやして、…うっ」
突然少年に頭痛が走る。
「ああ無理しないで!」
「だ、大丈夫…ごめん」
「うーん、状況から判断するに、きみは記憶喪失だね…」
「そう、なの、かな?」
頭をおさえ目を泳がせる少年を見ながら、少女は考える。
「……………事件の匂いがする……………」
「? 今なんて」
「よし! じゃああたしがきみの記憶を取り戻す手伝いをしてあげるよ!」
「えっ?! い、いいよ! なんで」
「いやいやこれから何すれば分からないでしょ? あたし一応放浪の身で、暇だし助けてあげる!」
「ひまっ、え?」
少女は張り切り、少年の手を引っ張り立たせた。
「こう見えてもあたし情報屋なの。きっと役にたつよ!」
「えっと……」
「きみの名前は? 思い出せる?」
握られている手と少女の顔を交互に見ながら、やがてはっとして考え込み少年は言った。
「…メノ。僕の名前はメノだ」
「そう、名前が分かって良かったよ! あたしの名前はネルティ。忘れないでね?」
少年─メノと少女─ネルティ。
これは、偶然出会い偶然展開される、二人の小さな物語である。