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帰宅すると、母が夕飯の支度をしていた。手伝ったほうがいいかな、とは悩んだけれど、今は一大事なのだ。一刻も早く、次に自分が何をすべきなのかを考えなければ。
「……ヒロさんを見習わなきゃ。あたしが動かなきゃ」
呪文のように唱えて、自らを奮い立たせる。手早く着替えをすませ、本と対峙する。
けれど妙案がすぐに浮かぶはずもなく、あたしは本を机の上に置いて、しばらく眺めていた。
「由真ちゃん……」
ぽつりと口をついて出たのは、消えてしまう前に同種の本を解読してみせた、彼女の名前。
陰陽が特殊な状態で同化してしまっているらしいあたしには読めないけれど、もしかしたら、あたし以外の誰かは読めるのでは。
「斗真。……玲さん」
二人に、この本を見せてみるーー?