94/132
67
閉館時間が迫っている。荷物を片付けながら、何気なく近くの本棚に目が向かう。
「……、あっ」
まるであたしに見つけられるのを待っていたように、それとも今まさに出現したという雰囲気で、一冊の薄い本が目にとまった。
「同じ……じゃ、ない」
棚から抜いたその本は淡く発光していた。以前、由真ちゃんが解読してくれたものとは内容が違う。なんて書いてあるかは相変わらずあたしには読めないのだけど、今回のは絵入りだった。どうやら陰と陽の世界のことが描いてあるようで、こちらでもよく見かける、勾玉と勾玉が合わさったような太極図と様相が似ていた。
ページをめくっていると、閉館のアナウンスが流れはじめた。あたしはその本をかばんに入れ、なじみの司書さんたちに挨拶をして図書館を出た。勝手に持ち出してしまったことにいささか良心が痛んだけれど、これもおそらく所蔵の品ではないはず。