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沈黙が流れた。何も言葉が浮かんでこない。触れれば電撃がビリビリと走りそうな壁を挟んでいるみたいで、動いたら、ダメな気がしてきてしまう。
呼吸すら、禁じられているような錯覚。
早く、あたしの好きな斗真が戻ってきたらいいのに……泣きそうになるのをこらえて唇を噛む。
する、と。
こわばった頬に、温もりを感じた。
「……斗、真?」
目の前の彼は、どこか悲しそうな目で。
無言で、あたし同様……唇を噛んでいるようだった。
「斗真? ーー」
頬にあてられた手に触れようとして、逆に手を握りしめられた。彼が、ほんの少しだけど震えていることに気づく。表情は固く、口端が歪んでいる。
「……同じなのに、違うってのは……、堪えるだろう?」
絞り出すような、苦しげな声。
「何年もたってようやくカラクリがわかったと思ったら。今度は俺が。余計にタチ悪ィ状態じゃねえかよ」