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手当てをしているあいだ、陽の斗真はあいかわらず不貞腐れた様子だったけれど、とりあえずはおとなしくしていた。傷自体は大したことはなく、血液を拭き取ってしまうと傷口もどこかわからなくなってしまう程度のものだった。うっすらこぶの痕があるぐらいで、それも明日には消えていそう。
目の前の彼をながめながら、宏志さんと玲子さんのことを考えた。あのふたりも、陰と陽、ふたつの世界に関わっているのかもしれなかった。性別が逆転してるなんて初めてだけど、考えてみれば斗真や由真ちゃん、それにあたしや、悠星……みんなそれぞれ事情が違っているのだ。性格、性別、陰と陽が出会って起きる同化から消滅までの期間。ううん、消滅が絶対というわけでもないんだ。玲子さんはもう一年もあの状態だというし……もちろん、ふたつの世界とは関係のない二重人格の可能性だってあるけれど。
男のほうの玲さんと話す機会、あるだろうか。ヒロ以外に興味なさそうな彼は、世界についても頓着していないだろうか。
「……ぼーっとして、どうした」
いきなり、でもなかったかもしれないけれど、声をかけられてあたしは跳ね上がった。斗真が怪訝そうにこちらを見ている。