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婚約者ということは、やっぱり玲さんは女の人で間違いない。
詳細を尋ねてもいいのか迷ったけれど、なんだか宏志さんがあたしの言葉を待っているように感じられる。
「どうして、玲……玲子さんは、自分を宏志さんの彼氏だって言っているんですか?」
うまく考えがまとまらなくて、そんな、宏志さんもおそらくわからないことを質問してしまった。慌てて追加する。
「あの、玲子さん、別の人になっちゃった……て、えぇと、人格が……入れ替わっちゃったというか」
「そうだな」
宏志さんはうなずいて、腕を組んだ。
「玲子がどうしてあんななっちまったかちょっとわかんねぇんだが、人格交代……とか、そういうものかと思ってる。だから、斗真のあれを目の当たりにして驚いた」
「似てますか」
「多分だけどな。まぁ、女のほうの玲子は長らく見てないから……同じだとも限らないが」
そう言った宏志さんの顔は、普段からは想像できないぐらい沈んでいた。あたしだって、斗真が陽の斗真でいることが増えてきたらと思うと……こわい。
「あの玲っていうやつは、おれをヒロだと言う。最初はあいつも混乱してて。あいつのヒロが、この通り男だからさ。おれだって突然のことで何がなんだかだし、とりあえず状況を受け入れるので精一杯だった」