60/132
33
陽の斗真はあたしにチラリと視線をくれて、面白くなさそうに鼻を鳴らした。
「お先に帰らしてもらうわ。あまえは、その獅子舞みたいな頭に送ってもらうがいいさ」
アパートの場所は知っているんだろう、彼はあたしたちに背を向けると、さっさと暗闇の中に姿を消した。追いかけて捕まえておくべきかと思ったけれど、あたしにとっては危険人物とはいえ、つい最近までこちらの世界でふつうに暮らしていた人だ。警戒しすぎるのもおかしいかな、と踏みとどまる。……単に、恐かっただけかもしれない。
「事情アリ、かぁ」
宏志さんは髪をくしゃくしゃかき回して、顔を歪めた。
「ごめんな、一花。知らなかったとはいえ無理矢理飲ましたり、刺激したりして」
「いえ……。あ、帰るの一人で大丈夫ですから! 宏志さん早く行ってあげなきゃ」