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宏志さんの部屋は一見殺風景だけど、窓際の一角に、そのスペースはあった。てのひらに乗る大きさの茶色い小瓶がぎっしり詰まった棚、辞典や図鑑といった書籍類。陰干しにされたハーブの数々、調合のための道具……宏志さんは、「香り」を趣味にしているのだった。手軽なアロマオイルはもちろん、ちょっとマニアックな怪しいパヒュームも手掛けているらしい。ちなみにプロではなく、アンダーグラウンドな内職らしい。だから、あたしと斗真以外、この部屋に入れたことはないという話。
「シャワー浴びてきますんで、くつろいでて」
宏志さんはさっさとお風呂場に向かった。