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今日、あたしが訪れると、そこには道端宏志さんという、三十そこそこのお兄さんがタバコをふかしていた。地毛だという金色の剛毛が日の光を受けて輝いており、ふたつの碧眼はあたしを見つけると、ちょうど獲物を見つけた肉食獣のようにギラリと光る。職業がら体格もよく、けれど、けして襲いかかってきはしないライオンに、あたしは話しかけた。
「こんにちは。斗真はいませんか?」
「まだ上がってないよ。親方に絡まれていたから」
ハスキーな声を間近で聞きながら、指し示された方向に目を向ける。とはいえ、仕事場はここからは見えない。老朽化した建物が解体されて、その水道管やらを撤去しているところらしい。
「すっかり気に入ったみたいでさー」
宏志さんいわく、親方さんの生き別れた息子さんと、斗真がよく似ているんだとか。年の頃合いも同じだそうだ。
「どんくらいかかるかわかんないけど、待つ? うちくる? 一花に見てほしいものあんだけど」
「新作?」
「そうそう」
宏志さんは嬉々として、タバコを携帯灰皿にしまいこむと、アパートの外階段を駆け上がっていった。