48/132
21
「あたしは、いずれ消えてしまうの。陰と陽が出会ってしまったから」
「……何を言ってんだ?」
「ふたつの世界に、それぞれ自分がいるの。自分同士が出会ってしまうと、くっついて一人になるの。そうしたら、消えて、何もなくなってしまうの」
怪訝そうにする悠星から極力、視線を逸らさないようにして続ける。
「残された時間がどれだけあるかわからない。だから、あたし、あなたと一緒にいるわけにはいかない」
斗真と、一秒でも長くいたい。それは言葉にはしなかったけれど、彼にはきっと伝わったはず。
だから、走り出した瞬間、舞い上がった土埃のなかで一層、力強く、斗真の左手があたしの手をつかまえた。
――消えてしまうのなら、すべての時間をともにしたい。少しでも長く、遠くの未来を生きたい!
「そう簡単に消えてたまるか」
斗真の呟きは、あたしに力を与えてくれる気がした。
追いかけてくる悠星の声が聞こえるけれど、大丈夫。絶対、つかまらない!