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肩に置かれた斗真の手が、迷うように私を抱き寄せる。まったく強引さを感じないその動作に、むしろあたしのほうから体を預けた格好になる。
ふわりと毛布をかけられたような、そんな心地に、少しずつ気持ちが落ち着いていくのを感じた。
「ありがとう、もう大丈夫」
斗真の胸をそっと押し、ひとり立ち上がる。
「ごめんね、由真ちゃんの服を汚してしまった」
「そんなことは……。それより」
斗真はすぐにあたしの目線の高さを通り越し、廃墟の町を見渡して言った。
「ごめんな。向こうでは一花の町があるところだから、ショックだろう」
「そう……かも」
町と町の境界なんて意識していなかったし、町の景色だって正直、普段生活をしている部分しか知らなかった。なのに、灰色の残骸にまみれた眼前の光景は「元あった町の姿ではない」ことだけは確か。胃をじかに鷲掴みにされるような、重苦しい衝撃があたしを苛む。
「……。あっちが図書館、だよね?」
指差し、隣の斗真を見上げる。
「こっち側が西で、北はこっちかな」
「そうだな」
「だったら、あのあたりがあたしの家」
最初にこちらの世界にきたとき、あたしは泣きながら、まず家があっただろうところまで歩いたはずだ。ほとんど道に迷っていた状態だけど……。そこはもうひとりの、陽のあたしの家。
「もう一人のあたしは、町と一緒に死んでしまったのかな」