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二階を上がると、突き当たりと、その両隣りに部屋が三つあった。左側の斗真の部屋だけ、ドアと窓が開け放たれていて、湿り気を含んだ風が渦を巻くように吹いている。雨はやんだらしい。けれど晴れ間は見えず、灰色の空は低いままだ。
机と椅子と、ベッドだけが置かれた部屋は殺風景だった。鼻をつく埃っぽさは、ここがしばらくのあいだ使われていなかった証拠だろうか。ぴしっとかけられたベッドシーツによれや窪みをつくってしまうのは気がひけたので、フローリングの床に座った。両膝を抱え込んで、そっと息を吐く。耳をすまし、この家に近づく人がいやしないかと警戒した。もし、斗真の家族が帰ってきたら。玄関に置きっぱなしのあたしの靴を見られたら、なんて思われるだろう……?
「なんにしたって、詮索されるよね……」
斗真のお父さんお母さんはどんな人たちなんだろう。斗真みたいに、あたしを「陰の人間」だからと邪険にしない人たちなら、いいのだけど。