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シャワーのカランを回すと、少しだけ冷たい水が出たけれど、すぐに浴室に湯気が立ちはじめた。雨と、シャワーとでは、同じ濡れるのでも全然ちがう。顔面を叩くように降ってくるお湯は、不安をきれいさっぱり洗い流してくれるような気がした。
気を取り直して、肌に張り付いた服を脱いでいく。
「着替え、置いておく」
浴室のドアの向こうから斗真の声が聞こえたときは、心臓が思いきり跳ねた。顔を向けるとすでに彼は洗面所を出ていったあとだったけれど、いちど早まった鼓動はなかなか落ち着かない。
ひやりとした感触を求めて、浴室の鏡の曇りに手をあてる。てのひらを押しつけたまま、きゅ、きゅ、と動かしてみると、湯気越しの私が現れた。これといってスタイルがいいわけでもない自分の身体が、急に恥ずかしくなってしまう。せめて、もう少しの胸と、腰のくびれがあったら、自信が持てるのかな。
「……斗真もシャワー浴びたいって言ってたんだ。急がなきゃ」