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それから彼は、濡れた手をぬぐってから、あたしの手をとった。
「行こうか」
「……大丈夫かな」
「俺が守るよ」
斗真の言葉は力強い。幸せが込み上げてくる。ちょっとくっつきたくなって、彼の腕に少しだけ肩を寄せる。
「――っ、なんだ」
慌てたように、斗真が身じろぎした。そんなにびっくりされるとは思っていなかったあたしは、変なことをしてしまった、と顔が熱くなるのを感じた。とっさに言い訳も浮かばず、
「ごっごめっ……」
謝る言葉もちゃんて出てこなくて、離れるしかなかった。
「ごめん。ちょっと、びっくりした」
手をつなぎなおしながら、斗真が呟くように言う。
「いやだったわけじゃないから。そこは勘違いしないでくれ」
見上げると、彼は唇に微笑を乗せていた。
ふつうの彼女だったら、改めてくっつくべきなのかな……?
悩んでいるうちに、目的地に着いてしまった。