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まさか、という思いで涙があふれてきた。
これは陽の斗真。あたしの好きな斗真のなかに、彼がいるなんて……!
のしかかってくる体はまだずっしりと重く、由真ちゃんのような得体の知れない儚さはない。けれど、いつかは同じように消えてしまうのだと戦慄した。
「斗真っ、いやっ、斗真、戻ってきて」
腕を突っ張り抗いながら懇願する。陽の斗真は、この事態が何を意味するのか気づいていないのだろう、あたしの反応を楽しんでいるふしさえある。
「オレだって斗真だからな。由真もこんなふうになっちまったのか? 陰の由真は、どんな女なんだろうな」
言葉のひとつひとつにいやらしさを感じて、背筋がぞわぞわする。
抵抗していた腕を組み伏され、観念して目を閉じたとき、ふいに体が解放された。