30/132
3
「……斗真?」
動きを止めた彼をそっと見上げる。眉間にしわを寄せ、目を呟ってる。やがて、ぴくりと片方の眉を吊り上げるようにして、まばたきした。
「どこか、具合が悪いの?」
斗真の、こんな不機嫌そうな表情って、見たことがないな……と思っていると、
「……ふーん、そういうこと」
半ばヤケのような、けれどどこか面白がっている口調。あごを引くこともなしに眼球を動かし、視線をあたしに落とす。
「ま、悪くない」
急、に。
押し倒され、顔の横で泥が跳ねた。瞬間、よみがえる嫌悪感。首筋にかかる息。
「そう固くなるなよ。体は、おまえの彼氏だろ」