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朝、目覚めると、部屋にはあたし一人だった。ベッドには、あたし用の着替えが置いてあった。品のよい水色のワンピースだった。
身支度を済ませ廊下に出てウロウロしていると、天狼が歩いてきた。
「あ。おはよう」
首にタオルを巻き、朝練でもしてきたような風体だ。汗を流しにシャワーをしてくると言ってすれ違い、振り向いて、
「食堂は向こう、行けばわかる」
と指さしで教えてくれた。
「お姉さんも食堂へ?」
「ん? ああ椿? 椿は部屋だろう」
「いなくて」
「そんなわけ……ああ」
天狼は、合点がいったという様子で頷いた。
「昼夜逆転だから」
「お布団にもいなかったよ?」
あたしはといえば全然合点がいくはずもなく、しかも適当に流されてしまい、モヤモヤを抱えたまま食堂へ向かうことになった。