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こじんまりとした和室に灯りがともると、思いのほか近代的で、ちょっと拍子抜けしてしまった。歴史を感じる文机にはノートパソコン、土壁には液晶テレビがはめ込まれていて、寝床もベッドだ。ぬいぐるみがそこかしこに飾ってあり、いたるところにレースがひらひらしている。鴨居はプリザーブドフラワーで彩られ、かすかにアロマの香り。
気持ちのいいお部屋だな……とポーッと突っ立っていると、お姉さんにローブの袖をくいくいと引かれた。
「私のとお揃いでよければ、着替える? お布団はべっこがいい?」
押し入れの中のたんすから単を出してくれたので、お言葉に甘えることにした。
「おトイレは廊下を左に行ったとこ。眠くなるまでお喋りしようー。女子会、女子会」
うきうきしているらしく、お姉さんの頬はほんのり上気している。ベッドの隣に敷いてもらった布団に、なぜか二人で並んで寝転ぶことになった。
「天ちゃんもシリウスくんも女の子だったらよかったのになー。二人のお母さんたちは、よくこの部屋にきて、一緒に遊んでくれたものだけど。もうお人形遊びをする年でもなくなったから、しかたないけど」
「二人のお母さんたちも、陰と陽とで同時に存在してたんですか?」
「うん、そうだよー。ここはちょっと、特殊なところだから」
「いま現在の無極と太極の人って……ここに住んでらっしゃるんですか?」
質問しても大丈夫な気配がしたので、続けて聞いてみる。お姉さんは頷いて肯定してみせた。
「天ちゃんとシリウスくん……二人の本当の名前は青星というのだけどね、命名した人が現在の太極でね。孫のようにかわいがっていたのよ」