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ぽかんとせざるを得なかったあたしに、天狼はたたみかけるように詰め寄ってくる。
「そいつ、どこにいる? 政府のやつらより先に確保したい。人質にされたら厄介だ」
「ほ……ほかにも、人質にされている人がいるの?」
「それはわからない。おまえと知り合いだというのが危ないんだ、おまえ、そいつを切り捨てることはできないだろ? エサにされたら、おびき出されるだろう?」
思い切り頷いたあたしに、天狼も、シリウスも……苦々しい顔で舌打ちした。
「くっそ、先に知ってりゃ関わり合いにならなかったのに」
「どの道、生まれた場所が場所だからな。後悔してもしょうがないぞ、シリウス」
「生まれたときから太極太極っつわれて、ここにきて手柄横取りされるとか」
「太極になりたくなかったんじゃないのか」
「っ、そうだけどな!」
どうやらこの二人は、ふたつの世界に関する大事なところを知っている家の人間……のようだ。そして、おそらく陽と陰、それぞれの同一人物。一人ずつ存在したままというケースもあるんだ……必ずしも合体するわけでは、ないのかな。
斗真が太極候補なら、玲子さんもそうなのかもしれない。由真ちゃんもそうだったのかもしれない。
「……、あー。ちくしょう、とっとと太極候補連れて帰ろうぜ」
シリウスは背伸びをしたり、腰をひねったり、明らかにやる気のなさそうな雰囲気だ。天狼はといえば、腕組みをして考え込んでいる。
斗真を、この人たちに会わせて大丈夫なんだろうか。少しは謎が解けるのだろうか。少なくともあたしより事情を知ってはいるようだけど。……斗真が同行を承知するかどうかも問題、か。
でも、状況を変えなきゃ。
進展するのか、後退するのかはわからない。それでも何か行動しなければ、あたしも斗真も、宏志さんたちも立ち往生したままだ。