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何がくるのかと思ったら、ヘリコプターだった。すごい音。こんな近くで聞いたことなんてない。
プロペラが巻き起こす粉塵から、リーダーさんがあたしをかばった。宏志さんが不満そうな顔をしながら、風に背を向けている。彼も、あたしに同じことをしようとしてくれたみたい。
「さあ、乗って」
リーダーさんがあたしの肩を抱くような形でヘリコプターに乗り込んだ。銃を突きつけられたときは厳しい気配を醸し出していたけれど、それ以外は紳士的なようだ。ちらっと見上げると、お父さんぐらいの年齢に見えた。うちのお父さんよりずっと……渋めだ。
運転席の後ろにあたしとリーダーさんが座り、さらに後ろの席に宏志さんと、ほかの二人が座った。宏志さんは間に挟まれて、ものすごく不機嫌な様子。
ヘリコプターはゆっくりと上昇していった。下のほうをのぞきむと人為的な町と町の境目が空恐ろしく、すぐに目を離した。
「高いところは苦手かい」
リーダーさんが気遣ってくれた。どうやらあたし、震えていたらしい。両手をギュッと握って、首をふる。
「いえ……大丈夫です」
この人たちは、政府の人たちなんだろう。ヒロさんが言っていた、町を、あたしの家族を、ヒロさんを……死なせた政府の……。
これからあたしたち、連れて行かれて、どうなるの? あたしは道を作れる無極、宏志さんは陰の世界の住人。ただではすまないと思う。