第6章 足止めの町
レオンは荷物をまとめ、チェックアウトのためにロビーのあるオフィスへ向かった。昨夜の静けさとは打って変わり、ロビーの中はざわめきに包まれているみたいだ。
ロビーへ続く外通路を進むにつれ、話し声が次第に大きくなっていく…
何か騒ぎでもあったのか?
ロビーに入ると、宿泊客たちが何やら驚いた表情で話し合っている。誰もが不安げな顔をしており、落ち着かない様子だった。
レオンは何が起こったのか知ろうと、近くにいる宿泊客に話しかけようとした。その瞬間、
**「レオン!」**
聞き覚えのある声とともに、肩を軽く叩かれる。
振り向くと、エミリーが立っていた。
「エミリー?この騒動は何なんだ?」
彼が問いかけると、エミリーは少し肩をすくめながら答えた。
「町外れの一本道で大きな木が倒れてしまって、通行止めになってるのよ。しかも、その道は観光名所の絶景ポイントに向かう唯一の道なの」
レオンはその言葉を聞いて、ロビーの混乱の理由を理解した。
ここは殺風景な田舎町だ、あの有名な観光名所の絶景を目当てに宿泊した客が多かったのだろう。
―通行止め― つまり、観光名所へ行けない。
だから、皆こんなに騒いでいるのか。
「それって、昨日の風の影響か?」
エミリーは頷いた。
「そうみたい。昨夜の西風がかなり強かったでしょう?町の人たちは時々あの風が問題を起こすって言ってるけど、今回は本当に大変なことになったわね。」
レオンは少し考え込んだ。確かに昨夜の風は異常なほど強かった。建物の窓を揺らし、街灯の光をかすかに歪ませていた。
あの風が大木を倒したのか…。
「俺も今日そこへ行ってから、次の町へ向かう予定だったんだよ」
レオンは苦笑しながら言った。
すると、一人の宿泊客が急にラジオを手にして人々を黙らせた。
「ちょっと静かにしてくれ!ニュースが始まるぞ」
ロビーのざわめきが次第に落ち着き、古びたラジオからアナウンサーの声が流れ始める。
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**「こちらローカルニュース。昨夜の強い西風の影響で、町外れの道路で大木が倒れ、観光名所へ続く唯一の道が封鎖されました。町が周辺都市から離れているため、撤去には時間がかかる見込みです。
当局によると、現在撤去部隊が準備を進めており、作業が完了するまで**3日間**はかかる予定とのこと。
町に滞在する観光客の皆様は、移動計画を見直し、町の施設を利用するようお願いします。」**
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ラジオが静まり返ったロビーに響き渡る。
レオンは腕を組みながら「3日か…」と呟いた。
エミリーは彼の表情をじっと見つめ、問いかけた。
「どうするの?」
レオンは軽く息を吐き、明るい表情を作りながら答えた。
「元々自由気ままな旅なんだ。せっかくの絶景を見ないなんてもったいない、3日なら適当に暇つぶしするさ」
そして、彼はニヤリと笑いながら付け加えた。
「何より、君ともっとお喋りする時間ができて嬉しいよ!」
エミリーは目を細め、からかうような口調で言った。
「ほんとにそう思ってる?」
彼女は腕を組みながら考え込むような素振りを見せた後、ふいに手を差し出した。
「だったら、あの絶景ポイント以外 "何も無い" 町の観光ツアーに招待しちゃおうかしら!?」
自虐じみたその言葉とともに、エミリーは微笑んだ。
レオンは一瞬思考を止めた。しかし次の瞬間、それが事実上のデートの誘いだと気づいた。
彼はゆっくりとエミリーの手を取る。
「じゃあ、そのツアーに参加しようかな!」
エミリーは満足げに頷き、2人は向かいのレストラン店へ朝食に向かった。
この町に予期せず3日間滞在することになったレオンだったが、それは悪くない選択肢に思えてきた。




