第5章-2 過ぎ去った嵐
「いい加減にしてくれ!こっちは疲れてるんだ!!」
レオンは、恐怖と疲労が入り混じる中で怒鳴った。声は浴室の壁に反響し、一瞬の間だけ異様な静けさが広がった。
すると、不穏な空気はあっという間に消え去った。
水の滴る音だけが部屋に響き、湿った蒸気が静かに漂っている。
「勘違いに決まってる…」
そう自分に言い聞かせるように呟きながら、彼はシャワーを終えた。体を拭きながら鏡をちらりと見るが、今度は何の異常もない。
バスルームを出て部屋へ戻ると、外はまるで先ほどの嵐が嘘だったかのように静まり返っていた。
レオンは窓へと近づき、外を見た。
――星がきれいだった。
澄んだ空気の中で、夜空は鮮やかな輝きを放ち、無数の星々が瞬いている。
「こんなに星が見えるなんてな…」
レオンは腕を組みながら、しばらく夜空を眺めていた。どこか落ち着きを取り戻し始めていた。
ふと時計を見ると、針は深夜3時を指していた。
「もう寝なくては…」
旅の疲れもあって、彼はベッドへと身体を沈める。
しかし、枕に頭を預けた瞬間、部屋の奥でわずかな音がした。
――コン……
レオンは目を開けた。
ドアの外だろうか?
彼は耳を澄ませた。
……だが、何も聞こえない。
「気のせいか…」
そう思いながら、彼はゆっくりと目を閉じた。
夜は静寂に包まれ、強い風はすでに過去のものとなったかのようだった。
**やがて、レオンは深い眠りへと落ちていった。**
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第6章 静かな朝
目覚めた時、窓の外には眩しい朝日が差し込んでいた。
レオンはゆっくりと身体を起こし、ベッドサイドの時計を確認する。
**午前7時23分。**
昨夜の嵐が嘘のように消え去り、外からは鳥のさえずりや車のエンジン音が聞こえている。
「ああ、もう朝か…」
彼はぼんやりと天井を眺めながら、昨夜の出来事を思い出そうとする。
不気味な影、奇妙な囁き、そして最後の静けさ――
だが、何かが起こるわけでもなく、無事に朝を迎えたことに少し安堵した。
「変な夜だったけど、結局は何もなかったか…」
そう呟きながら、レオンはベッドから立ち上がる。
窓を開けると、爽やかな風が入り込み、心地よい朝の空気が彼の頬を撫でた。
モーテルの駐車場には数台の車が止まり、スタッフたちが出勤の準備をしているのが見える。
昨夜のことはただの疲れによる錯覚だったのだろうか?
それとも……
レオンは軽く首を振り、深く息を吸い込んだ。
「気にしても仕方ないな。そろそろチェックアウトの準備をするか」
昨夜の奇妙な出来事を胸に残したまま、レオンは朝の支度を始めるのだった。




