第5章-1 影の気配
レオンは背後を振り返った。
しかし、そこには何もいない。
ただ、バスルームの静けさだけが広がっていた。彼は息を整え、もう一度鏡を見た。
――影は消えていた。
レオンは眉をひそめながら、わずかに苦笑した。
「全く、疲れてるだけだろ。長旅のせいで頭がぼんやりしてるんだ……」
そう言いながら、彼はシャツを脱ぎ、シャワーをひねった。
勢いよく流れ出した温かい湯が、旅の疲れを心地よくほぐしていく。レオンは目を閉じ、額に打ちつける水の感触を味わった。
しかし――その瞬間。
**カタ…カタ…**
シャワーの音の合間に、微かな物音が響いた。
レオンは目を開けた。
浴室の扉はしっかり閉まっている。だが、外から何かがかすかに揺れる音がした。
「風か……?」
そう思いながら、彼は気にせず湯を浴び続ける。
しかし、次の瞬間――
**かすかな囁き声が、水音に紛れるように聞こえた。**
それははっきりとした声ではない。しかし、言葉があるような感触だけが、耳に届く。
**……ようこそ……**
レオンは息をのんだ。
それは……どこから聞こえた?
彼は急いでシャワーを止め、水滴がしたたるまま浴室の壁に手をついた。心臓の鼓動が耳に響く。
そして――鏡を見る。
次の瞬間、そこに――
**ぼんやりとした黒い影が、映っていた。**




