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第2章-1 出会い

レオンはロビーのドアを押し開けた。冷えた空気が身体を包み込み、旅の熱を少しだけ奪っていく。


カウンターの奥にいた少女がふと顔を上げ、柔らかな微笑みを浮かべた。 そしてフロントの帳簿を開く。


「いらっしゃいませ、宿泊ですか?」


レオンは肩にかけた荷物を床に置き、疲労混じりの息を整えながら頷いた。



「そう、一泊頼むよ」


少女は手際よく宿泊カードを取り出し、彼の前へと滑らせた。その動作は慣れているようで、無駄がない。


しかし、レオンは宿泊カードを手に取るより先に彼女の瞳に心を奪われていた。


淡い光が差し込むロビーで、彼女の黒髪が優しく揺れている。まだ幼さの残る顔立ちに、どこか落ち着きのある雰囲気が漂っていた。


一目惚れだった。


だが、彼はその感情を悟られないように、目線を紙へと落とした。


彼女は宿泊カードを差し出しながら、尋ねる。


「この街に初めて?」


「ああ、旅の途中でたまたま見つけてね」


その言葉に、少女の目が少しだけ輝いた。そして、レオンは何か思い出したように口を開く。


「……君、歳はいくつなんだ?」


何気ない口調を装いながら問いかけると、少女は少し驚いたように瞬きをした。


「えっと……今は大学受験生だから、来年18歳になるわ」


レオンは彼女の言葉を聞きながら、視線をそっとカウンターの奥へ移した。


デスクの上には開いた参考書や問題集。


幾つもの書き込みがされたページには、彼女がこのモーテルで働きながら勉強を続けていることが刻まれていた。


「勉強しながらバイトしてるのか?」


エミリーは、少し照れ臭そうに笑った。


「うん、でもこれは家業の手伝い。うちはね、父がこのモーテルを経営してるんだ。女の子って、服やコスメとか何かとお金かかるでしょ?

お小遣いはもっと欲しい…。でも受験も近いから、こうして家業を手伝いながら空いた時間に勉強してるの。夕方からは特に静かだから、集中しやすいのよ」


レオンは彼女のその言葉に、思わず感心していた。


バイトをしながら大学を目指し、一人で勉強を積み重ねている。


「すごいな……なかなかできることじゃないよ」


エミリーは少し肩をすくめると、ペンを手に取りながら軽く笑った。


「ただの習慣よ。やらなきゃいけないことだし…」


その言葉には、どこか強い意志が感じられた。


レオンは、目の前の少女がただの受付係ではなく、夢を追いかけている人間なのだと改めて気づいた。


「……いいね。その姿勢、俺も見習わないと」


エミリーは少しだけ笑い、宿泊カードを指さした。


「あなたも目標に向かって旅してるんでしょう?じゃあ、そろそろ名前を書いてくれる?」


レオンは肩をすくめながら微笑み、ペンを走らせた。


彼女との会話に、どこか心地よい気配を感じながら、


「ところで、どこの大学を志望してるんだ?」


エミリーは参考書の隅を指でなぞりながら答えた。


「**グレートプレーンズ州立大学(Great Plains State University)**よ。少し都会にあるけど、私の目標にぴったりだから」


レオンはその言葉に驚き、思わずペンを止めた。


「えっ、俺もそこに通ってるんだけど…!」


エミリーも驚き、目を見開く。


「本当?それなら私、先輩になる人とこうして話してるわけ?」


レオンは笑いながら頷いた。


「そんなことになるな。俺はちょうど夏休みを使って旅してたんだけど、まさかこんな場所で後輩になるかもしれない人と会うとは思わなかったよ」


エミリーは楽しそうに笑い、ペンを転がしながら言った。


「これは運命かもね。入学したら案内してもらおうかな?」


レオンは少し照れながら微笑んだ。


「もちろん、歓迎するよ。その前にまず合格しないとな?」


エミリーは冗談っぽく肩をすくめた。


「そのプレッシャー、先輩としてはもう少し優しくしてほしいんだけど?」


ロビーの空気はいつの間にか和やかで心地よいものになっていた。



彼女はからかう様に笑い、話を変える。


「……変な話かもしれないけど、ここには少し不思議な噂があるの」


興味を引かれたレオンは、宿泊カードを記入しながら首を傾げた。


「不思議な噂?」


彼女は視線を落とし、少し間を置いてから続けた。


「夜になると、時々誰もいないはずの廊下で足音が聞こえたり……誰もいない部屋の窓から影が見えたりするって。泊まった人たちの中には、妙な体験をした人もいるみたい」


青年は無意識に背筋を伸ばした。


「それは面白そうだな。じゃあ、今夜少し話さないか?」


少女は一瞬驚いたような顔をしてから、微笑んだ。


「いいよ。夜のロビーで待ってるね」


「レオンだ!」自己紹介すると、


「知ってるわ、今帳簿に書いてくれたでしょ(笑)」


彼女はそう微笑んで


「エミリーよ!また後でね」


それが2人の出会いだった。

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