第13章-2 叔母の記憶と手掛かり
エミリーの叔母は席につき、テーブルに並ぶ料理を軽く見渡すと、開口一番に問いかけた。
「で、君は何をしにこの町へきたの?」
レオンはフォークを軽く持ちながら、叔母へ向き直る。
「夏休みを使って旅をしているんです。この町の絶景ポイントを見たくて……でも、倒木で道路が塞がっていて、開通するのを待っているんです。」
「その間、この町の不可解な出来事の原因をエミリーと一緒に探っていました。」
叔母は軽く顎に手を添えながら、興味深そうに聞いていた。
「なるほどね……」
彼女の表情には、どこか懐かしさと複雑な感情が入り混じっていた。
そして、叔母はふと思い出したように言った。
「そういえば……昔、ある夢を見たことがあるの。」
### **叔母の夢――風に乗る声**
叔母はゆっくりと言葉を紡いだ。
「私、趣味で写真を撮るの。コヨーテや野生動物、それから砂漠の風景なんかをね。」
「ある日、鉱山の近くへ撮影に行ったことがあったんだけど……帰る途中で、ふと祖父の家が懐かしくなってね。」
エミリーは静かに聞いていた。
「祖父……曽祖父の家?」
叔母はうなずく。
「ええ。昔の記憶がふと蘇って、見に行ってみたのよ。」
「町の中は静かで、風の音しか聞こえない。でも……その風に乗って、何か**人の声**が聞こえた気がしたの。」
レオンは食器を置き、真剣に耳を傾ける。
「耳を澄ませても、ただの風の音。だけど、何かが話しかけている気がしたの。」
「気のせいかもしれない……でも、心の中に違和感が残ったまま家に戻った。」
叔母はワイングラスを軽く指で回しながら言葉を続ける。
「その夜――夢を見たの。」
「祖父が現れて、私をじっと見つめながら言った。」
「**『鉱山に近づくな、危ない!』**」
エミリーは息をのんだ。
「……夢の中で、そう言われたの?」
「ええ。その言葉があまりに鮮明すぎて、今でも覚えているのよ。」
叔母は軽く肩をすくめる。
「ただの夢かもしれない。でも、あの場所で風に乗った声を聞いた後だったから……偶然とは思えなかったわ。」
**沈黙――そして気づき**
エミリーは考え込むように指を組みながらつぶやいた。
「やっぱり、何かある……あの時、鉱道の入口で私たちが聞いた声も、ただの錯覚じゃないはず。」
レオンも黙ってうなずいた。
「俺も同感だ。誰かがこの場所に近づかせたくない……そんな気がする。」
叔母は静かに二人を見つめた。
そして、そんな沈黙を破るように、エミリーの父がフォークを持ちながら口を開いた。
「おいおい、三人とも手が止まってるぞ。」
「まずは飯を食ってからにしよう。」
その言葉に、3人はハッと我に返る。
エミリーは笑いながらフォークを手に取り、レオンも再び料理に手を伸ばした。
そして、彼らは改めて夕食を楽しむことにした。
エミリーの叔母は、料理を見渡しながらにこりと微笑んだ。
「さぁ、遠慮せずに食べてね。今日は特別に、うちの店の定番料理を一通り出したの。」
レオンはテーブルの上の皿をじっくりと眺める。
**ミートローフ、マッシュポテト、コールスロー、パン、コーンブレッド――まさにアメリカらしいボリューム満点の夕食。**
「これはミートローフね。ひき肉にスパイスやパン粉を加えて焼き上げるんだけど、うちは特別に、スモーク風味をプラスしてるの。外はしっかり焼けてるけど、中はジューシーな仕上がりよ。」
叔母の説明に、レオンは期待を込めてフォークを手に取る。
「それから、マッシュポテトはバターとガーリックを効かせてるから、コクが強め。クリーミーだけど、しっかりとした味わいになってるわ。」
エミリーもすかさず補足する。
「このコールスローは、うちの店の特製ドレッシングを使ってるの。普通のより酸味がやや控えめで、キャベツの甘さがしっかり味わえるのよ。」
レオンはコールスローをじっくり見つめた後、小さく笑う。
「確かに、見た感じ、一般的なものよりドレッシングがなじんでるな。」
叔母はさらに説明を続ける。
「それと、パンとコーンブレッドは焼き立てよ。コーンブレッドはふんわり甘みがあるけど、少し塩気を加えてるから、バターと一緒に食べると絶品なの。」
エミリーはそれに加えるように言った。
「焼き立てのコーンブレッドは、お父さんが特に好きなのよ。ほら、いつも真っ先に手を伸ばすでしょ?」
エミリーの父はすかさず手を伸ばし、コーンブレッドを取りながら軽く肩をすくめた。
「うまいものは先に食うべきだろ。」
レオンはその言葉に微笑みながら、まずミートローフを一口食べた。
ジュワっと口の中に広がる旨味――スモークの香りがふんわり漂い、ひき肉の柔らかさと肉汁が絶妙に絡み合う。
「……これ、めちゃくちゃ美味しい!」
驚きの表情とともに思わず声が漏れた。
エミリーの叔母は満足そうに微笑む。
「でしょ?うちの店では人気メニューなのよ。」
続いて、マッシュポテトを口に運ぶ。
なめらかな食感の中にバターの香りがふんわり広がり、ガーリックの風味がしっかりと効いている。
「うん……これもすごいな。コクがあって、バターの甘みがしっかり感じられる……。」
レオンの感動する様子に、エミリーは嬉しそうに笑った。
「でしょ?ここのマッシュポテトは、ちょっと贅沢なのよ。」
最後に、コーンブレッドを手に取り、一口かじる。
ふんわりした生地の中に、ほのかな甘みとしっかりした塩気が混ざり合い、バターが溶けることで口の中でじんわり広がる味わいになる。
「……こんなに美味しいとは思わなかった。」
思わず、レオンは幸せそうな表情を浮かべた。
エミリーの叔母は満足そうに言う。
「気に入ってもらえたなら良かったわ。旅の途中なら、美味しいものを食べるのも大事でしょ?」
レオンは頷きながら、ゆっくりと食事を進めた。
### **夜の団らん――そして次なる手掛かり**
食事を進めながら、叔母がふと思い出したように言った。
「この町の歴史が語ることは多いけど……いまだに分からないことが多いわね。」
エミリーはフォークを置きながら、小さくため息をついた。
「……結局、鉱道に入る方法もないし、供養も効果がなかったんでしょ?」
父はゆっくりと頷いた。
「そうだ。俺たちも何度か試みたが……それでも、何も変わらなかった。」
レオンは黙って考え込んだ。
「でも、まだ分からないことがある。鉱山に眠る遺品が……もしあったら?」
父は眉をひそめた。
「遺品……?」
レオンはゆっくりと答えた。
「もし、犠牲者が最後に持っていたものが、事故現場に残っているなら……それが重要な鍵になるかもしれない。」
叔母はその言葉に、何かを思い出したように息をのんだ。
「……そういえば、祖父は鉱山でいつも同じロケットペンダントをつけていたわ。」
エミリーはすかさず聞く。
「それって、事故の後どうなったの?」
叔母はゆっくり首を横に振る。
「分からない……遺体が回収されなかったから、遺品も一切戻ってこなかった。」
エミリーは視線をレオンへ向けた。
「つまり……それが今も鉱山にある可能性があるってこと?」
レオンは小さく頷いた。
「鉱道に近づくな……そんな警告の声が聞こえた理由は、何かを隠そうとしているのかもしれない。」
父は腕を組みながら呟いた。
「鉱道の入口は塞がれているが……確かに、事故現場には何かが眠っているかもしれないな。」
叔母は深く息を吸い、言った。
「何かを見つけるなら……それが最後の手がかりになるかもしれない。」
レオン、エミリー、叔母、そして父。
彼らは静かに考えを巡らせながら、次なる行動について想いを巡らせた。
そして、この夜はさらに深まりながら、新たな決意へと導かれていくのだった。




