第13章-1 夕食、夜の団らん
時刻は21時を迎えようとしていた。
モーテルのロビーには静けさが広がり、フロントの時計の針が遅い時間を示している。
3人は軽く身支度を整え、町のレストランへ向かった。
道中、エミリーは歩きながらぽつりと話し始めた。
「私ね、お母さんが亡くなっているから、いつも夕飯は私が作ってるの。でも、今日みたいに遅くなった時はレストランで済ませてるんだ。」
レオンは彼女の言葉を静かに受け止めながら、モーテルで見せていた明るい笑顔の裏にある事情を少しだけ理解した気がした。
その横で、エミリーの父は何やら電話をしていた。
内容は聞き取れないが、短いやりとりの後、軽く頷いて通話を終える。
レストランの扉を押して中に入ると、カウンターの奥から声が響いた。
「兄さん、待ってたわ。」
レオンは、その女性店員が**今朝、朝食の注文を担当してくれた人だ**とすぐに気づいた。
「やはり親戚なのか……」
そう心の中で思いながら、視線を女性へ向ける。
彼女は明るい笑顔で迎えながら、店の奥へ3人を案内した。
厨房の出入口近くにある奥の席へ向かう途中、エミリーが小さな声でレオンに説明する。
「ここはね、父の妹である叔母夫婦が経営してるの。」
レオンは納得したように頷いた。
「やっぱりそうだったんだね、今朝あの人のことを‘叔母さん’って呼んでたから。」
「聞こえてたかww」
エミリーは会話を聞かれていたことに気づき、少し恥ずかしそうに肩をすくめる。
店内はディナーのピークを過ぎていて、いくつかの席が空いている。
厨房の奥から食器の音が響く中、エミリーの叔母がコーヒーを運んでくる。エミリーの父はテーブルにつきながら一口飲むと、叔母へ告げた。
「いつも通りで頼むよ。」
叔母は軽く頷いて厨房へ向かう。
父も続けるように席を立ち、「ちょっと行ってくる」と言いながら厨房へ入っていった。
エミリーはそれを見て、にこりと微笑んだ。
「わかった、いつものね〜!」
レオンは父の様子を気にしながら、エミリーに問いかける。
「お父さん、厨房に入ったけど……?」
エミリーは他の客に聞かれないように、小声で説明した。
「ここで夕食をいただく時は、余り物だったり余剰食材で賄いみたいなものだから、お父さんが少し手伝うの。その代わり、ほとんどタダみたいなものなの、親族の特権ね!」
レオンは微笑ましく思い、エミリーの親族のつながりの深さを感じた。
### **昨日から今日までの出来事を振り返る**
エミリーはコーヒーを飲みながら、ぽつりと口を開いた。
「昨日の夜から今日まで、すごいことばかりだったよね……。」
レオンは深く頷く。
「本当に。まず、昨日はモーテルに到着して……夜中には変な現象が起きた。」
「そうそう、213号室で……って、あの部屋にまた泊まるのよね?」
「……そうなんだよ。」
2人は顔を見合わせ、少し笑う。
「それから、今日の朝はレストランで朝食をとった後、鉱山会社の事務所へ行った。」
「そこで夜間当直日誌を見つけたのよね……あれを読んだ時、ゾッとしたわ。」
「事故の記録が、ただの落盤事故じゃないことを示していた。坑道での異変……体が重くなったり、聞こえてくる声……。」
「それに、鉱道の入口で見た黒い影……。」
エミリーは静かに息を吐く。
「本当に、この町の歴史がただの鉱山閉鎖じゃないことが分かってきたわよね。」
レオンは腕を組みながら考え込んだ。
「写真の異変もあったし……それに、お父さんが語ってくれた鉱山の真実……。」
「成仏できない人たち……ね。」
2人は、ここまでの出来事を振り返りながら、沈黙する。
何かを解決する方法があるのか、それともこれ以上深く関わるべきではないのか――。
2人の頭の中には、まだ答えが出ていなかった。
### **夕食の到着**
しばらく話していると、厨房からエミリーの父と叔母が夕食を持って戻ってきた。
大きな皿をいくつもテーブルへ並べながら、叔母は軽く微笑んだ。
「さぁ、どうぞ。ちょっと多めに作ったけど、全部食べられるかしら?」
アメリカらしいボリュームのある夕食が広がっていた。
メインディッシュは、**ミートローフ**――牛ひき肉をスパイスとともに焼き上げた家庭料理。
付け合わせは、**マッシュポテト**と**コールスロー**。
さらに、サイドメニューとして**パンとコーンブレッド**が並んでいる。
レオンは料理を見て思わず口元を緩めた。
「すごい量ですね……!」
叔母は笑いながら席についた。
「お腹いっぱいになるわよ。」
しかし、レオンの視線はあることに気づいていた。
**料理は4人分並べられていた。**
叔母は4人目として座った、赤ワインと共に…。
レオンの頭の中は、「???」状態だ。
エミリーはレオンの困惑した顔を見て、少しクスッと笑う。
「叔母も一緒に食べるのよ。私たちはいつもこんな感じなの。」
「そうだったんだね……」
何だか、家族の食卓のような雰囲気に包まれた。
それが、不思議と心地よかった。




