第10章-2 鉱道入口での奇怪現象
レオンはバイクのエンジンを軽くふかし、事務所のある小高い丘を下った。
風がわずかに西側から流れ込み、乾いた砂ぼこりを巻き上げながら、山のふもとへ続く道を走る。
**鉱道へ向かう途中の風景**
鉱道の入口が近づくにつれ、かつての採掘作業の名残が目に入ってくる。
道の脇には、錆びついたレールの跡が続いていた。かつてトロッコがこの道を行き来し、採掘された岩石を運び出していたのだろう。
ところどころ、崩れかけた木製のプラットフォームや、地面に埋もれかけた鉄製の車輪が姿を現す。
そして、さらに進むと――
かつて岩石を運び出すために設置されていたと思われる**ベルトコンベアの骨組み**が見えてきた。
金属製の支柱はすっかり錆びつき、機械の一部は崩れて地面に埋もれている。
しかし、そこに並ぶコンベアのフレームは、この場所が長い間大規模な採掘現場であったことを証明していた。
**鉱道の入口**
やがて、2人は鉱道の入口にたどり着いた。
しかし、そこはすでに封鎖されていた。
岩やコンクリートの塊が積み上げられ、入り口は完全に塞がれている。
「何もないわね……」
エミリーは落胆したように言った。
レオンはバイクを降り、ポケットから先ほどの集合写真を取り出す。
入口の風景と写真を慎重に見比べながら、静かに呟いた。
「……だが確かに、ここで撮られたんだ……」
彼は写真を持ったまま、辺りを見回す。
**時刻は17時になろうとしていた。**
空は淡いオレンジ色へと変わり、日没の気配を感じさせる。
西の山々が影を伸ばし、光は徐々に弱まり始めている。
**写真に現れる異変**
レオンは写真を鉱道の入口へ向けて交互に見比べる。
当時と今で何か変わった部分はないだろうか――そう間違い探しをするように細部を観察していると、ふと違和感を覚えた。
**写真の中のひとりが歪んで見える。**
レオンは目を凝らし、一瞬写真に意識を奪われたが、すぐに入口へと視線を戻す。
すると――
**そこには、写真の中で歪んだ人と同じ位置と思われる場所に薄黒い影が立っていた。**
「……なんだ、あれ……」
驚いたレオンは、再び写真へ目を向ける。
**やはり、その人物だけが歪んでいる。**
「エミリー!」
レオンは写真を握りしめながら彼女の方を向き、入口を指さす。
エミリーは訝しげに鉱道の封鎖された入口へ視線を向ける。
「鉱道の入口がどうかしたの?完全に塞がれてるわね……」
「違う!黒い影!」
レオンは入口を再び見た。しかし――
**そこには、もう何もなかった。**
「えっ……?」
レオンは我が目を疑った。
そして、急いで写真を確認すると――
**写真の異常も消えていた。**
「黒い影?そんなの、どこにもないわよ?」
エミリーは不思議そうにレオンを見た。
レオンは息を整えながら答える。
「じゃあ、俺の言う通りにしてみて……」
彼は先ほどの動作を説明し、2人は並んで同じ位置に立ち、写真と入口を交互に見比べた。
1回、2回、3回――見比べる度に、確かに**入口に黒い影が現れた。**
次第に影は濃くなる。
「えっ、嘘……」
影は微動だにせず、ただ入口の前に立ち尽くしていた。
それだけではない。
写真の中でも、入口の影と同じ位置に立っている人物が**再び歪みだした。**
2人は不気味さを感じながら、無言で写真を見つめる。
そして、再度視線を鉱道の入口へ向けた、その瞬間――
**人の形をした黒い影はすぐそばに立っていた。**
レオンもエミリーも、息を飲み、動けなくなる。
そして――
**「きちゃだめだ!」**
突如、頭の中を第三者の声が響き渡った。
2人は驚いて辺りを見回した。
しかし、誰の姿もない。
急いで入口の方へと視線を戻すと――
黒い影は消えていた。
「……あの声は何だったんだ……」
レオンは呟くように言い、額の汗を拭った。
「やっぱり、ここから遠ざけようとしてる……?」
エミリーは不安げに、考え込むように答えた。
**写真の異変、そして名前**
レオンは周囲の観察に気を取られているとき――
突然、「バチッ!」と写真を持つ手に静電気のような衝撃が走った。
驚いて写真を手放す。
エミリーが落ちた写真を拾い上げた――そして、思わず声を失う。
「えっ……なにこれ……」
レオンはエミリーの様子を見て、彼女の手元を覗き込んだ。
そこに写る写真――
**ある作業員の顔が、焼け焦げたように黒くなっていた。**
レオンは背筋に冷たいものを感じながら、呟いた。
「……これ、事故で亡くなった人の一人なのか?」
エミリーは息を整えながら、写真の裏をめくり、焦げた人物の名前を確認する。
そこに記されていた名前は――
**「エドワード・ウィンチェスター」**
エミリーは息をのんだ。
「……私と同じ名字よ……」
彼女は写真を見つめたまま、声を震わせた。
レオンも考え込みながら言う。
「もしかしたら、エミリーの親戚とか……これは明らかに偶然じゃない気がするよ……」
**夜の帳が降りる**
辺りは徐々に闇に包まれ始め、空にはぽっかりと月が浮かび始めていた。
「今日はもう帰ろう、暗くなる」
レオンがそう言うと、エミリーも静かに同意した。
2人はバイクに跨り、モーテルを目指す――。
しかし、彼らはすでに確信していた。
この町には、**まだ語られていない真実**が眠っているのだ――。




