第1章 旅の途中
夏の陽が傾き始める頃、レオンはバイクのハンドルを握りながら、荒涼とした道路をひたすら走っていた。
エンジンの振動が身体に染みつくような感覚。この旅もすでに数週間が経過していた。
大学の夏休みを利用して始めた旅。
旅の目的は、ただひたすら「走ること」。そして、アメリカの広大な風景をその目で確かめることだった。
すでに二つの町を巡ってきた。長い道のりを走るほどに、地図の上では想像できなかった空気感が見えてくる。
そして、この町 ―旅の三番目の目的地― へと、彼はバイクを走らせていた。
この町のすぐ近くには絶景ポイントがあると聞いていた。旅をする者の間では、そこから見下ろす景色はまるで世界の果てを眺めているかのようだ、と囁かれている。
「それを見ないわけにはいかないな…」
そう思いながら、アクセルを軽く開けた。
しかし、この町は近くの都市からはかなり離れている。
長い一本道の先に広がる小さな町。街並みは穏やかで、時折すれ違う車の数も少ない。
舗装された道からは砂埃がわずかに舞い、どこか寂しげな空気を帯びていた。
レオンはここへ来るまでに、何度か休憩を挟んでいたものの、旅の疲れは確実に彼の身体へと溜まっていた。
太陽はすでに傾き、空には深いオレンジ色の光が滲んでいた。
空の端には紫が混ざり始め、夜の気配が少しずつ広がり始める。
遠くに見える建物の影が長く伸び、町の街灯が次々と灯り出す。
そして、町の端に差し掛かった時、遠くに「MOTEL」と書かれたネオンの看板が見えた。
黄色い光がぼんやりと点滅しながら、これから訪れる夜を予告しているかのようだった。
「今夜はここで休むとするか…」
そう呟いた瞬間、彼のバイクがモーテルの駐車場へと滑り込んだ。
エンジンの唸りを残しながら、彼はモーテルの駐車場にバイクを停めた。
アスファルトの熱がまだ残る午後、エンジンを切ると辺りは静寂に包まれた。
旅の疲労が一気に押し寄せてくる。
ヘルメットを脱ぐと汗を拭った、そして熱を帯びた風が頬を撫でる。
夜の匂いがかすかに混ざった風。
一日が終わり、これから始まる夜の静寂を感じながら、レオンは息を吐いた。
「やれやれ……ようやく落ち着けるな」
彼は息を整え、モーテルのロビーへと足を踏み入れるのだった。




