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新天地へ
翌朝、私はチェックアウトを済ませませた。
南エリアにある馬車乗り場。
取りあえず、ここから半日ほどの街へ行く馬車に乗ることにした。
早朝だからか客は私を含めて五人。
運賃は銅貨七枚である。
出発時間になるまで朝食として購入したリンゴを食べる。
ふっと視線を感じてそちらを見ると、女の子がジッとこちらを見ていた。
正確には私の持っているリンゴに釘付である。
私は紙袋から新しいリンゴを取り出して女の子に渡した。
「お姉ちゃん、ありがとう!」
女の子は満面の笑みで感謝の言葉を述べる。
女の子の両親もまた私に礼を言って来た。
そうしているうちに時間となったらしい。
「それでは出発します」
馬車が動く。
大通りを進み、門から外へ出る。
どんどん王都から離れて行き、しばらくすると完全に見えなくなった。
こうして、元聖女で現サキュバスの私は新天地へと向かうのであった。