転生
意識が浮上した。
(生きてる?)
目を覚ました私は身体を起こして辺りを見渡す。
ここはダンジョンの中。
恐らく私が刺された場所である。
(回復魔法が効いた……訳ではなさそうね)
私は自分の身体を見下ろした。
辛うじて大事な部分を覆っている露出度の高い服。
お腹の辺りにハートマークのような紋様が刻まれていた。
「鏡よ」
目の前に浮かぶ鏡で自身の姿を確認する。
金髪碧眼が黒い髪と黒い目に変わり、異性を誘惑するに適して体つきに変貌。
頭に二本の角、背中に蝙蝠のような羽、お尻から尻尾が生えている。
(サキュバス……どうやら私は淫魔として転生してしまったようね)
ダンジョンで死んだ人間が魔物に生まれ変わると言う話を聞いたことがある。
まさかその話が本当だったとは思わなかった。
「ステータス」
自身の情報が表示された。
名前:セシル
種族:サキュバス
レベル:47
レベルと各ステータスは人間だった時のままだ。
「スキルは……やはり聖女はないか」
スキルの欄を確認した。
盗まれた聖女のスキルはない。
他のスキルは存在している。
それから魅了などのサキュバスらしいスキルが新たに習得していた。
「使用可能な魔法も聖属性の魔法は殆ど使えないようね」
これはサキュバスに転生したからではなく、聖女のスキルを奪われたからだろう。
「聖女のスキルを持っていた私が魔物……しかもサキュバスになるなんて……」
自身のステータスを確認し終えた私は、ガックリとその場に項垂れた。




