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裏切り

 その日、仲間に裏切られた。


 王都にあるダンジョンの二十五層。

 一般冒険者ではまず到達不能な場所である。

 だが、勇者のスキルを持つマサキをリーダーとする私たちのパーティなら余裕で到達可能だった。


「……この辺りでいいか?」


 マサキが立ち止まりそう呟く。


 何のことだろうか?

 そう首を傾げていると、後ろから誰かに刺された。


(つ、痛覚遮断!!)


 燃えるような痛みが消える。

 しかし、口から大量の血を吐いてしまった。


 かなりのダメージを受けている。

 段々、力が入らなくなって来た。


「カン……ナ?」


 後ろを振り返る。

 私を刺したのは仲間のカンナだった。


「ごめんね、セシル」


 言葉では謝っているがその表情は全く悪びれる様子はない。


 剣が引き抜かれて私は倒れ伏す。

 普通の人間なら即死レベルのダメージ量だ。


(すぐに回復魔法を使わないと……)


 聖女のスキルがある私ならこの程度……

 そう考えていた私を更なる絶望の淵へと立たされる。


「スキルテイム」


 マサキは他者のスキルを奪うスキルテイムを使用した。

 奪われたスキルはもちろん聖女である。


「……ま……さき?」


「悪いなセシル。聖女のスキルは俺たちがきちんと活用してやるから安心しない」


 ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべるマサキ。

 この時ようやく私は幼馴染みであるマサキたちに裏切られたことを理解した。


「じゃあな」


 マサキとカンナが去って行く中、私の意識は暗闇に沈むのであった。

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