表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

古びたラーメン屋

 テレビや雑誌に取り上げられたラーメン屋に1時間も並んでいるような奴らは俺から言わせればまだまだビギナーだ。

 俺くらいになってくると、嗅覚というか直感で、その良し悪しがわかる。そんなわけで、俺は路地裏にある「ラーメン野郎」の暖簾のれんを潜った。

「いらっしゃい」老夫婦が年に似合わぬ威勢の良さで出迎える。

 メニューはラーメンとチャーシュー麺の二種類のみ。

「合格」俺は心の中で呟いた。やたらメニューの多い店を目にするが、あんなのは自信のなさの表れだ。

 店は古いが清潔だ。「合格」

「チャーシュー麺」俺は女将に言う。

「あいよ、チャーシュー麺一丁」

 850円と言うのも良心的だ。なぜか世間の奴らはラーメンの価格設定にやたら厳しい。1000円になると高いと言うくせにパスタの1500円には何も言わない。どう考えてもそっちの方が原価安いだろ。

「へいお待ち」大将がチャーシュー麺を差し出す。

「ん?」

 スープに大将の親指がどっぷり浸かっている。「不合格」

「ちょっと大将、指はいってんだけど」俺はたまらず言った。

「ああ、大丈夫。ちゃんと洗ってるよ」こともなげに大将は言う。

「そう言う問題じゃないだろう」俺は思わず大声を上げる。

「うるせえな、お前は素手で寿司を握るなってクチか!」大将がキレた。

 頭に血がのぼった大将はふらつき、女将が肩を支えて言う。

「あんた早く病院に」


俺はラーメンに入っている大将の親指をレンゲで掬った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ