さっちゃん
「知ってる? 絵里子ったらカレ氏に浮気されたって言って朝からカンカンなんだよ。絵里子ってすぐキレるじゃん、言っちゃあ何だけど私は浮気される絵里子の方に隙があると思うの」
同じクラスの早苗はそう言っておかしそうに笑った。早苗は絵里子と幼馴染で一緒に学校に来てるけど、内心絵里子の事をよく思っていないようで、私はしょっちゅうグチを聞かされている。正直うんざりしていた。私にとって絵里子は特別仲が良いわけでもないけど、敵視しているわけでもない、はっきり言ってどうでもいい存在だった。
「さっちゃんいる?」隣のクラスから絵里子が鬼の形相で入ってきた。瞬間早苗の表情が凍りついた。
「ちょうどいいわ。二人とも放課後付き合って」絵里子は私たちの方にツカツカ歩いてくるなり、そう言い放った。
「ちょっと、絵里子落ち着いて、怖いよ」早苗がオドオドしながら宥める。
「ひどいよ、さっちゃんだったんだね。マー君と浮気していたの」絵里子は涙目になりながら訴える。
「マー君て木村将司君のこと?」私は早苗に問いかける。
早苗は複雑な表情を浮かべて頷いた。
ははぁ、そう言うことかと私は状況を理解した。そしたら、なんだか絵里子に意地悪をしてやりたくなった。
「まぁしょうがないよね。さっちゃん可愛いし、絵里子に隙があったんじゃない?」私は絵里子に言った。
「ちょっとやめてよ」早苗が私の言葉に慌てふためいた。
「他人事みたいに言わないでよ!」そう言って絵里子は私を睨んだ。
「それにね将司君の方から、さっちゃんにアプローチしてきたんだよ。だから、さっちゃんは悪くないんだよ」私は怯むことなく言い返した。
早苗は教室を飛び出した。
「あんた!」絵里子が怒鳴った。
「自分のこと、さっちゃんって言うのやめな!」




