9恐怖のアンコウ怪物
戦術人工知能アナヒット
シカゴ大学の栄えあるケネス・アロー教授が提唱したアローの不可能性定理を盛り込んだまったく新しいAIだ。
アナヒットは全国のサーバーを介して施設のセキュリティ、監視カメラ、個人のPC端末にバックドアを作りユーザーの人格を疑似的に形成、仮想国民たちを作り上げ、膨大なデータ量から敵の行動を予測する。
行動を三つの選択肢からより可能性の高い複合的な行動パターンとして推測することができる
怪物たちの動きを先読みして素早く行動することができる。
「ゲバラが創設されてから、ようやくここまで来たか。
「岡本総司令、大変でしたね。
「ここまで来れたのもみんなのおかげだ。感謝する。
そう、この男こそ、岡本イサム、グレンツ怪物との戦いで死んだかと思われていた歴戦の勇士だった。
33年間、怪物たちと戦い続けて来た。
現在はゲバラを率いる総司令だ
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大型ヘリは本部とつながる空中指令室でもある。
岡本はヘリのドアを開く。
雨と風が吹き荒れていた
怪物の研究施設上空を飛んでいる。
闇にまみれているがあまり時間はかけられない。
「風が強すぎます!降下できません!
「作戦は続行する。お前たちは帰投しろ!
「指令!
岡本は部下たちの静止を振り切ると飛び降りる。降下していく中で叫んだ。
「ジンライ!」
腕時計型ロザリオが全身を包み込むとロストバスターへと装着が完了する。
蜘蛛の巣状のヒビを大地に作り着地した。
ロストバスタースネーク
長い年月が装着装置と人体にどう影響を及ぼしたのかは未知数だが、
すでにその体は5段階の強化システム中、最強の強化装置であるムーブメント・クラフト装置の力と一体化していた。
全身に生々しい傷跡が残るモスグリーンのロストバスターだ。
暗闇の中、両目が黄色に光り輝く
耳の通信機に語り掛ける。
「こちら、岡本、潜入した。」
広い庭を無音でしばらく進んでいく
扉をくぐると正門の前に警備の怪物たちがいるようだ。
全速力で走り、正門の上を手でつかみジャンプする
ガシャン!音が鳴る
「バロバロ!?」
警備たちが異形の言葉を話す。
知性を有する優秀な怪物たちだ。
限定的な言語を話すことしかできなさそうだが、それでも鍛え続けていけば幹部にもなれる可能性を秘めている
怪物たちが見たのは揺れる正門の柵だけだった。
何事もなく業務に戻ったようだ
そのまま裏口に回り込むと
「はあ!
ロストバスタースネークがチョップでカギを破壊、扉をくぐる
通信機越しに岡本は言った
「中に入った!
「了解、そのまま直進して左に階段があります。3階まで登ってください
「了解。誰か来た!
シュッと壁の影に姿を隠す
見張りのようだ。
やりすごす。と潜入を続行、上の階まで行く
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
外でうなり声が聞こえた
「まずいな。足音が近づいて来る!
「はあ!
ジャンプして天井に捕まると、警備の怪物たちがゾロゾロと外に出ていく
窓の外を見ると怪物と人間が戦闘をしていた。
激しいマズルフラッシュと発砲音、
「暴徒か、助けたいところだが、いまは作戦を優先する。
窓の外、暗闇の中、怪物たちの両目が光っていた。
廊下を一気に走り抜けると扉を通過、
さらに廊下を走り、横目に研究ラボを見ていく。
「情報どおりだ。やつら新しいロストバスターシステムを開発している。
その部屋の中は70mほどの緑色の培養水槽が周囲を囲んでいた。
その中央だけ研究できるスペースが確保されたデザインの部屋だ。
電線ケーブルがいくつもつながれた、いくつかのロザリオ型腕時計が置かれている。
「これを回収できれば人類は怪物たちに対抗する新たな力を得ることができる。
手を伸ばそうとした時だった。
ガシャーン!ドバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
突然、水槽が割れ、50万リットルほどの水が滝のように部屋を満たした。500リットルと言えばドラム缶1本くらいの量だ。
500でドラム缶1本
5000でドラム缶10本
5万でドラム缶100本
50万でドラム缶1000本
滝のような水ですぐに生き埋めにされ、目を開ければ水中の中だった。
そして信じられないものを目にする。
「なっ!
驚愕
いままで、にごっていて見えなかったが、ホルマリン液の中には無数の少年の死体が浮いていた。
「人間の命を材料にしている!
皮膚の状態からして死んでからかなり時間が経過しているようだ。
そのときだった!
ブワアアアアアアアアアア!
水中に謎の液体が噴き出す
「なんだこれは!
そして水中の中に、ボウ、とした球体が光る。
黄色い二つの目がこちらを見ていた。
アンコウ怪物だ。
頭部の誘引突起から発光液を噴出する。
手足のように変形したヒレを使いものすごい勢いで襲い掛かって来る。
「ふん!
魚体を受け流し、下方へと逃げると魚体につかまり
「ふん!ふん!ふん!
胸部を何度も殴りつける。
水中のため拳に速度が出ない。
だが確実にダメージにはなっているはずだ。
「ふん!はあ!はあ!
さらに胸部を殴りつける。
ドガン!ドガン!ドガン!
壁に何度も激突、スネークを振り落とそうとしてくる。
死んでも離すものか!そう思いながら力強くしがみつく。
ドガン!ドガン!ドガン!
何か決定打になる攻撃をしかけなければ!
そう思い、よく観察していると魚型の突起物がアンコウ怪物の体から飛び出ていた。
「あれは!
吸収されたオスアンコウだった。
「あそこならもろいはず!
思いっ切り手を伸ばしオスアンコウだった部分を握り締めると
「はあ!
思いっ切り引きちぎった。
ブジャアアーーーーー!
大量の血液が水中に噴き出す。
コイがたきのぼりをするように上に向かって泳ぐと一気に海面が近づく。
いまなら隙だらけだ。
「そこだ!
腕のロザリオ型時計から電子的な音声が言った
ムーブメント・エピセスィ!
スネークが叫ぶ
「ムーブメント・エピセスィ!
「はああああああああああああああああああああああああああああ!」
両腕の牙に光が宿ると一撃必殺技がアンコウ怪物に突き刺さり大爆発が巻き起こる
巨大な水柱が巻き上がり、アンコウ怪物がバラバラに吹き飛ぶ
空中でバク宙しながらスチャ、と着地すると地に手を付いた。
「か、勝った・・・。
床を見ていると、目の前に異形の手が差し伸べられる
「大丈夫か!
「お前は!
ロストバスターレイブンだった。
2人のロストバスターの戦士が初めて相まみえるのだった。