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7/22

7恐怖のカマキリ怪物

薄暗い夕焼け教室

世界はオレンジ色と日陰の黒色をしていた

帰りのホームルームの前に手短に話があるとのことだ。

少年は学生だ。

そして怪物でもある。

人にまじり暮らしている

怪物から人間になることが最近なにより楽しく感じるようになっていた。

勉学に励むのも楽しみのひとつだ。

恋人と一緒に昼食を食べるのが日課であり。

放課後はデートを約束をした

机の中を見ると彼女はそこにいる。

赤い布にくるまれているけどいまもニコニコしながら小さく手を振っている

微笑ましくなり小さく手を振り返していると教師が言った


「今日は皆さんに理事長からお話があります。それではどうぞ。


廊下から白い服を着た男が入って来る。


「理事長の玉木奈央です。皆さん、おはようございます。


「「おはようございます!」」

皆が返事をする。


「さて、今日私がここに来たのは皆さんに伝えなければならない言葉があるからです。それは、神の言葉です。人々にはとても大事なことがあります。

人を慈しみ、悲しみを乗り越え、他者に優しくすることです。皆さんも隣人に優しくしていますか?


クラス委員長の女子が言った


「はい、しています!


理事長の言葉はいつも復唱させられている言葉だった。

少年は最初、うさんくさいと思っていた。

両親、と言ってもかりそめの両親だが愛している人間たち

彼と彼女の子供としてすごしていたらある日友人から進められたと言われこのカトリック系ともどことも言えない学校に行くことになったのだ

本当は行きたくなかった。

けれど、いつも理事長の言葉を聞き、この学校に通っていると何故だか理事長の言葉が素晴らしい言葉に聞こえてきていた。

理事長が優しそうな顔をして言葉を語り聞かせてくれると

ふと、涙が出た。

なぜだか涙が止まらない。

周りを見るとどの生徒たちも泣いていた。

ああ、そうか、泣いていいんだ。

そう思うとわんわん泣いた。

わんわん泣いて、わんわん泣いて、わんわん泣いて

キョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョ!と泣いた


静まり返る教室、気が付けばカマキリ怪物の体に戻っていた。

人に擬態したはずが興奮して人の皮を脱ぎ捨ててしまったのだ。

もうここで人として暮らすことはできない。机の中の彼女を抱きかかえるとそれをひと飲みにして彼女とひとつになることにした

バギバギバギ!


「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!

悲鳴が上がる


口の周りが真っ赤な血で濡れる。


「キョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョ!


鳴き声をあげる

怪物は優秀な怪物だった。

ほかの怪物と違い知性に恵まれた上位種の怪物にもなれる可能性を秘めた特異な存在だった。

幸か不幸かで言えば不幸なことだ。

人を理解できてしまうために怪物になり切れず狂っていた

怪物が怪物だったのか、宗教が人を狂わせるように人に習う怪物を狂わせたのか、ものを考える怪物が現れた。

雪崩れるように生徒たちが教室から出ていく。

少年は思った。どうせこの生活が終わるなら本能を解放のままに暴れようと、無敵の人になろうと。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!


スパン!


廊下に出た生徒から体を上下に両断されていく。

刃渡り2m近くある両手の鎌は毎秒4000万回振動する高周波振動を発生させ絶大な切れ味を持つ。


「う、う、う、う、ううわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!


「キョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョ!


黄色く光る両目をギョロギョロと動かし、とても悲しい気持ちで隅に追い詰められた生徒たちにゆっくり歩み寄っていく。

好きだけど今の彼女を優先して付き合えなかった子がたまたま目の前にいた

最後になるし強く抱きしめてあげなきゃね。愛は平等に、慈悲の心を持ちながら、両手を大きく振り上げ、死の抱擁をしようと迫る


「キョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョキョ!


「とお!


突然、廊下から現れた男が殴りかかるとカマキリ怪物を殴り飛ばす。


「大丈夫か!


三輪ユウキだった

三輪は言った

「早く逃げろ!


「は、はい!


生徒たちが逃げていくと教室には三輪と怪物だけが残った。


「ジンライ!


ロザリオ型腕時計から光が放たれると光の中からロストバスターが姿を現す。


「ロストバスターレイブン!」


全身に生々しい傷跡が残る漆黒のロストバスターが現れた

薄暗い夕焼けの中、両目が緑色に光り輝く

カマキリ怪物は鎌を振り上げ、体を左右に動かしながら円を描くように歩き出す。

こちらとの距離を測っているようだ。間合いに入ればやられる!どうする!

強敵だった。


「僕はこんなにも強いのに!どうして幸せになれなんだああああああああああああああああああ!キョキョキョキョキョキョキョキョキョ!


「錯乱している。どうする!?


一瞬でもミスをすればあの鎌で切り裂かれる。うかつに飛び込めない。だが、このまま睨み合っていても・・・。

慎重に敵を見る。

そのときだった!


「キョオオオオオオオオオオオオオオ!


カマキリ怪物の腹をぶち破ってカマキリタマゴカツオブシ怪物が飛び出してきた。


「あれは!


一説ではカマキリの卵鞘の中に卵を産み付け、孵化すると言われる生物だ。

カマキリ怪物もその例に漏れず寄生されていたようだ。

だがこれはチャンスだ!

腕のロザリオ型時計から電子的な音声が言った

シャフトクリスタル・べシンダー!

レイブンが叫ぶ

「シャフトクリスタル・べシンダー!


クローに光が宿ると一撃必殺技の強烈な光がほとばしる

「はああああああああああああああああああああああああああああ!」

最大威力の必殺技がカマキリ怪物もろともカマキリタマゴカツオブシ怪物を両断、大爆発が巻き起こる


「やった!


勝利したあとで振り返るとやつがいた


「食べに来ました。


夕焼けの差し込む教室にホオジロサメ怪物が立っていた


レイブンが叫ぶ

「来い!


もはや言葉はいらないとまでは言わないが熾烈を極めた天敵、油断はできない。

ホオジロザメ怪物がしゃがむと後脚が3倍に長く太く膨れ上がりバネのように突っ込んできた

そう、新たな能力。コオロギの脚力だ


「とお!


こちらも後方に飛び跳ね距離を取ろうとするも予測よりも相手のほうが動きが速い!

強力な拳が頬を殴る


「ぐあああ!


ドゴ!


椅子と机をなぎ倒し床を転がる。


「くそおお!


レイブンはボロボロになりながらぐったりとしている

ホオジロザメ怪物がくるん!とジャンプ、上空から迫る。

レイブンを強く殴りつけようと動きが大振りになっている。

だがそれはレイブンのフェイントだった

瞬時に起き上がったレイブンの腕のロザリオ型時計が電子的な音声を言った

シャフトクリスタル・べシンダー!

レイブンが叫ぶ

「シャフトクリスタル・べシンダー!


クローに光が宿ると一撃必殺技の強烈な光がほとばしる

「はああああああああああああああああああああああああああああ!」

最大威力の必殺技がホオジロザメ怪物に突き刺さる

腹部を貫通した!

腕を引き抜くとホオジロザメ怪物がドサンと地面に落ちた

完全に白目をむいて体が硬直している

死んでいるようだ。


「か、勝ったか・・・


油断したときだった

ホオジロザメ怪物が飛び起きると股間からムカデの体が飛び出してレイブンをぶっ飛ばす


「ぐあああああああああああ!


バゴン!


ステンレスの窓のフレームを粉砕してバウンドし、壁に激突する。


「ば、馬鹿な・・・確かに死んでいたはず・・・まさか!・・・疑死か!

疑死、身体を硬直させ捕食者から逃れようとするコオロギの能力だった


素早く立ち上がると、ホオジロザメ怪物の執拗な殴打が襲い掛かる


「はあ!とお!やあ!


体に走る痛みに耐えながらギリギリで受け流していく


「そこだあ!


正拳を叩き込もうとするとホオジロザメ怪物がしゃがんでから丸まった

全身に装甲のような甲羅が現れと凄まじい硬さの甲羅現れる


「これは!ダンゴムシの能力!


拳は硬い甲羅の上をむなしく打ち付けた。

高速回転を始めたホオジロサメ怪物のダンゴムシタックル、推定時速80km、戦車程度のスピードのタックルがレイブンをひき殺そうと襲い掛かる


「ぐあああああああああああああああああああ!


レイブンはギリギリタックルしてくる甲羅を両手で抑えつけた。

殺人的な摩擦が手の平に襲い掛かる。

高速回転するタックルに押されたまま壁を貫通、何クラスも通り過ぎていく。ついに校舎の壁を貫いた


「うああああああああああああああああああああああああああ!


そのまま真っ逆さまに転落した

不気味なことにホオジロザメ怪物は

地面に倒れぐったりとしているレイブンをじーっと見ていた

敗北したのだ

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