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第9話 獣人

部屋の奥にいた子供の様子を確認してみる。5歳くらいか?何でこんなところに子供がいるんだ。


「おい、起きてるか?」

「かなり衰弱しているようだな。」

「ローガーファミリーの人じゃないよな?」

「そんなわけあるか。もしそうならさっきの案内役の男が教えていたはずだろう。」

「お、目開けたぞ。水飲めるか?」


コップに少し水を注いで飲ませてみた。自分で飲めるようだな。これならまだ助かるかもしれない。包まっていた布を取ってみると頭の上に耳があった。モフモフの耳だ。狐耳かな?多分、女の子かな。


「む、獣人か。」

「これが獣人か。初めて見た。」

「そういえば奴隷を運んでいた馬車から商品が逃げたという話があったな。この子がその一人かもしれんな。」

「ああ、街の検問が厳しくなった理由がそれだったな。でも、迷い込んだだけの近隣住人の可能性もあるだろ?」

「いや、それはない。獣人で普通に暮らしている者はほとんどいない。」

「何でだ?」

「この国では獣人に人権はない。つまり、見つかれば即奴隷行きだ。」

「なんだそりゃ?駄目だな、この国は。俺を作った連中も頭がおかしいとは思っていたが、統治者も頭がおかしいのか。」

「ああ、同感だ。この国は頭のおかしい連中が統治しているんだ。」

「やれやれだな。エルメラがこの国を早く出たがるのもそういうことか。」

「ところで、私は疲れたから休んでてもいいか?」

「ああ、この子は俺が見とくよ。」


夜通し徒歩で移動だったからな。疲れていて当然だ。休める時に休んでもらわないとな。エルメラはコットを取り出して、いつもの緑の掛け布団に包まった。


獣人の女の子はこちらを気にしながら、少しずつ水を飲んでいる。お腹も減ってるかもしれないな、消化の良さそうなものを作ってやるか。お粥でいいかな。卵粥にするか。卵は滋養強壮に良いと聞いたことがある。

レトルトのごはんを煮込んで中華だしで味付けしてみた。そこに溶き卵を回し入れて中華風卵粥の完成だ。味見はできないから美味いかどうかは分からん!


「食べれるか?熱いから少しずつな。」


スプーンに少し掬ってフーフーして冷まそうとしたけど、俺、口なかったわ。


「あ、待てって。火傷するから。冷めるまで待て。」


獣人の子はお腹が空いていたようで、すごく食べたそうにしている。手で扇ぎながら冷まして、スプーンを口に運んでやった。美味いかどうかは分からんが、食べてくれてるから良しとしよう。

食べ終わるとすぐに寝てしまった。かなり体力を消耗している様子だ。だが、飯を食えるなら直に回復するだろう。


エルメラが以前使っていた折りたたみ式クッションマットを敷いて、その上に寝かせてやった。ショッピングサイトを起動してお急ぎ便で『ふわふわ暖かフランネル掛け布団』(色おまかせ)を購入する。開封すると今回は淡い黄色の布団だった。眠っている獣人の子にそっとかけてやる。


俺は外で周辺の警戒をするか。

立ち上がって緑と黄色の布団が並んでいるのを見る。平和に暮らしてる人もいれば、こんな生活を強いられてる人たちもいるんだよな。異世界も世知辛いものだ。俺はため息をついて外へ出た。



昼前になってエルメラが外に出てきた。


「おはよう。食事の準備を頼む。」

「ああ、おはよう。あの子も起きたかな?」

「いや、まだ寝てるぞ。」

「そうか。でも食事は2人分作っておくかな。食事を準備したら俺は魔石の採掘場に行ってきてもいいか?」

「そうだな。あの子は私が見ておこう。」


寝起きでも食べやすいものがいいよな。オムレツでいいか。挽き肉と玉ねぎを入れて食べごたえもあるようにしよう。ついでにチーズも入れておくか。子供は大体、チーズが入ってると喜ぶんじゃないか?あとはフレンチトーストとコーンポタージュでいいだろう。子供の好みは大体こんなもんだ、きっとそうだ。俺は子育てとかしたことないから分からんけど。


「おっ。起きたか。」


獣人の子も食事の匂いで目が覚めたようだ。


「もうすぐできるから待ってな。そういえば君は名前は何ていうんだ?」

「・・・キャロル」

「キャロルちゃんか。可愛い名前だな。」


とても小さな掠れた声だったが喋ってくれた。まだ警戒してるんだろう。俺はこの見た目だからなあ。


食事を準備して適当に購入した安物の子供服をエルメラに渡しておいた。


「じゃあ、俺は出かけるよ。夕方には戻るからキャロちゃんを身奇麗にしてあげてくれ。」

「分かった。警戒は怠るなよ?」

「ああ、分かってる。」


ハンマー斧とキャメロンを装備して地図に記載されている採掘場へと向かった。といっても村のすぐ隣だからすぐに着いた。どうやら露天掘りのようだ。魔石は地面を掘ったら出てくるのか。用意していたツルハシを取り出す。魔石の採掘場があると知ってすぐに購入したのだ。そこかしこに魔石が剥き出しになっており、大量に埋蔵されているのが見て取れる。ボーナスタイムの始まりだ。


ある程度小さく砕かないと体の投入口に入らない。採掘するより砕く方に時間がかかった。しかし、もうショッピングスキルで金欠に悩む必要がないのだと思うと、作業する手は止まらなかった。ずっとケチって安物商品で我慢してきたが、もうそんなことはしなくていいのだ。これまで購入した物で1万魔力を超えるような商品はほとんどない。俺の理髪用のハサミくらいじゃないかな。エルメラにはそんな物に魔力を使うなと怒られた。でも、俺の商売道具だからね。これは妥協できなかったんだ。


俺は嬉々としてツルハシを振るい続けた。だが、そんなボーナスタイムはすぐに終わりを告げた。


「俺のMAXチャージの限界か・・・。」


魔石を取り込みながら作業を続け、もうこれ以上取り込んでも蓄積されないことを感じ取った。ショッピングサイトを起動して残高を確認すると、874458魔力だった。確認のため、もう一度魔石を一つ取り込んでみたが、やはり874458以上にはならなかった。これはつまり、ショッピングスキルで購入できる商品はお値段874458魔力の商品までしか買えないことを意味する。100万魔力を越えるような高額な商品もあったけど買えないんだな。


あとはマジックバッグに詰めれるだけ詰め込んで行くしかない。そして、この場でできるだけ高額商品を大量に購入するのだ!

俺は欲しくて我慢していた格好いいフード付きロングコートを予備も含めて爆買いした。キャロちゃんにもいい服を着せてやろうと可愛い子供服をいっぱい買った!エルメラの服もついでに買った!

お値段数十万魔力の宝石類(鑑定書付き)も勢いでいくつか購入した。でもこんな物いらんかったわ。この世界で鑑定書とか意味ないやんけ。

俺は夕方まで魔石を取り込み続けながら、ショッピングスキルの爆買いを楽しんだ。不要な物も大量に購入してしまった気がするが、きっといつか役に立つだろう。購入履歴が大変なことになってるけど、検索機能があるから何とかなるはずだ。


それにしても、いつかこの世界から魔石がなくなったらどうしようとか考えてたけど杞憂だったな。魔石がこんなにごろごろ転がってる物だとは思ってなかった。道理で市場価格が安いわけだ。



廃村の我が家に帰ると、エルメラがキャロちゃんに小型魔導銃ミュスカの構え方を教えていた。


「おい、子供にそんな物を持たせるなよ。」

「この子は我々に同行することになった。自衛手段は必要になる。」

「この子の親族はいないのか?」

「詳しい話を聞いた。やはり例の逃げ出した奴隷で間違いないようだ。両親も知らないらしい。」

「まあ、こんな所に一人で置いていけないよな。」

「本人も了承済みだ。」

「そうか。そういえば自己紹介がまだだったな。俺はアキラだ。よろしくな、キャロちゃん。」

「ん。アキラ、ごはん。」

「ああ、お腹が減ったか?準備するから待ってな。」


昼前に準備していた食事も全部食べてくれたようだな。食欲があるのは良いことだ。山越えに備えて体力をつけてもらわないとな。

夕食はホワイトシチューにしてみた。キャロちゃんはバゲットを齧りながら、シチューを睨んでいる。冷めるのを待っているようだ。


「隣国は獣人も暮らせるのか?」

「ああ、ラフタリア王国は獣人にも寛容な国だと聞いている。」

「それは良かった。暮らしやすい所まで送り届けてやらないとな。」

「で、そっちの成果はどうだったのだ?」

「魔石は大量に入手した。ただ、俺の保有魔力の限界値が874458だということが判明した。」

「そうか。今はそれだけあれば十分だろう。必要なら外付けでパーツを付け足せば限界値は更に引き上げれると思うが。それは追々だな。」

「そんなことができるのか。それなら高額商品も購入できる可能性があるんだな。」

「用が済んだなら明日にでも出発するか。」

「そうだな。早くこの国は出るべきだ。キャロちゃんは俺が背負って行こう。」



今後の予定を話し合っていると、入り口の扉からガタガタと音が聞こえた。その後、ドンドンッと強くノックする音に変わった。


「追手か?どうする?」

「落ち着け。ローガーファミリーの組員かもしれないし、相手を確認してからだ。キャロはフードを被っておけ。」

「じゃあ、俺が出て確認してこよう。」

「いざとなったら壁を破って逃げるが、追手以外ならできるだけ穏便に済ませてくれ。」

「了解だ。」


やれやれ、何も食事中に来なくてもいいじゃないか。もう日暮れだぞ。


「おいっ!中にいる奴!出てこい!」


外の奴が強く扉を叩きながら怒鳴り始めた。どうやらマフィア連中ではなさそうだな。反撃も視野にいれるか。


「はいはい、今出ますよ。どちら様で?」


俺の言葉が言い終わらないうちに、扉が破壊された。そこには剣を振り抜いた態勢の、十代半ばくらいの少年がいた。

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