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第39話 バージョンアップ

ドレスを着て魔導銃を構えるキャロちゃんの写真を最後に、今日の撮影会は幕を閉じた。


華やかな撮影会が終わった後、疲れた顔をしたエルメラが本題を投げてきた。


「アキラ、お前の体の改良準備が整ったのだ。いつやる?」

「作業時間はどれくらいかかる?」

「半日くらいだな。朝から始めて夜までには終わるだろう。」

「一日潰れるのか。じゃあ、週末だな。」


週末は食堂を定休日にしているのだ。最近は食堂利用者が多いから、フーちゃん一人では運営は無理だろう。俺の用事は定休日にできるだけ片付けねば。



翌日、購入しておいた辺境伯家への贈答品を梱包してマルダシリに渡した。


「すごい量になりやしたね。」

「ドレスが思った以上に嵩張ったんだよ。頑張って運んでくれ。」

「ボスか代行が持っていった方が良くないでやすか?」

「いや、やめておく。写真見ただろ?あの奥方、顔が怖いんだもん。万が一にも会いたくない。」

「はあ、分かりやした。それなら俺が持って行きやすが。玄関先で渡してすぐ撤退しやすぜ。」

「ああ、それと。送り主はミュゼルファミリーとラルフの連名で渡してくれ。昨日の晩飯の時にラルフから頼まれたんだ。」

「ラルフの旦那がマフィアと連名はおかしくないでやすか?実の妹の祝いですぜ?自分で用意して直接渡すもんじゃないでやすかね。」

「何を用意すればいいか分からんそうだ。それに多分、しばらく会ってない妹に会うのが、お兄ちゃんは恥ずかしいんだろ。金も受け取っちゃったから配慮してやってくれ。」

「どうなっても俺は知りやせんぜ。」


これで贈り物ミッションは完了だな。後はマルダシリに任せておけば上手くやってくれるだろう。



そして、週末がやって来た。

いよいよ俺の体のメンテナンスだ。そもそも俺がエルメラに同行したのはこのためだった。何だかんだで先延ばしになっていたが、ようやく約束が果たされる時がきた。どこか悪い所が見つかったりしなければ良いが。俺は寝台に寝かせられて手術前の患者の気分だ。しかし、改良もしてくれるというので、期待も膨らむ。


「ところで、どんな改良をするんだ?」

「うむ。まずは腕をガトリング砲アニエスに換装して、背中に弾倉を積むことで長時間の連射を可能に。肩にはイライザを搭載して、頭には」

「ちょっと待て!お前は俺を何に作り変えるつもりなんだ!」

「駄目か?」

「駄目に決まってるだろ!腕がないと生活に支障をきたすだろ。キャロちゃんたちを抱っこする時も危ないだろ。危険物を取り付けるのはなしだ。俺は戦闘用魔導ゴーレムじゃないんだぞ。お世話魔導ゴーレムなんだ。」

「そうか。それは残念だ。じゃあ、新たに取り付けるのはこれくらいだな。」

「パーツを見せられても俺には分からんぞ。説明してくれ。」

「うむ。これこそ、以前話したこの世界の魔道具業界に革命をもたらす物だ。これまでは大型の魔道具は燃費が悪すぎてあまり開発されてこなかった。しかし、このパーツを組み込むことで大幅に燃費が改善するのだ。仕組みとしては大気中の魔素を取り込んで動力となる魔力に変換するというものだ。」

「つまり、俺は魔石を取り込まなくても永久機関になるのか?」

「いや、これ単体ではそこまでの効果はない。実験の結果からは、おそらくアキラの場合は今の半分くらいの燃費になるのではないかと予想している。」

「ほう。それはすごい。今までは一日当たり4万魔力くらい消費されていたが、半分で済むのか。」

「加えてアキラの場合は頭の中のプレートもいじる。不要な精神制御の魔法陣が刻まれていただろう?あれを消去して、代わりに周囲の魔素を引き寄せる効果を付与しようと思う。」

「おお、なるほど。さっきのパーツと組み合わせて使うわけか。」

「その通り。これでショッピングスキルを使わなければ、限りなく永久機関に近い状態になると思う。」

「遠出する時の安心感が増すな。燃料切れを気にしながら生活するのは落ち着かないんだよ。これからはスキルを使う時だけ魔石は用意すればいいわけだ。」

「他に行うのも全体的にパフォーマンスの向上を目指す改良だ。破損箇所等がないかチェックしたりといったメンテナンスも含めて。」

「今以上に能力が上がるのか?」

「ああ。アルメディロ鉄鋼は硬い。しかし、関節部分とか破損しやすい箇所もあるのだ。作りに無駄な部分も見られるし、改善の余地はある。」

「そうか。よく分からんからその辺りは任せるよ。ところで、改良中は俺は意識が消えるのか?」

「うむ。動力部分をいじるからな。一旦停止させねばならない。早速だが、カバーを外すぞ。資料によるとこの辺りから・・・」


胸部装甲が取り外されると中身のパーツがあらわになった。


「これが停止レバーだ。」

「再起動したら俺は戻って来れるんだよな?」

「多分大丈夫だろう。」

「ちょっと待て。多分って何だよ。確信がないのか?俺の魂が離れてしまう可能性もあるんじゃないのか?冗談じゃないぞ。俺がいなくなったらキャロちゃんとフーちゃんは誰が育てるんだ。飲んだくれの駄目人間のエルメラには任せられないぞ。」

「落ち着け。魂が離れる心配はない。魂は降霊術という魔法で定着しているのだ。魔導ゴーレムの構造とは無関係なのだ。ただ、動力部分を大幅に変更する都合上、体に馴染むのに少し時間を要する可能性がある。それと私は飲んだくれの駄目人間ではない。」

「本当に大丈夫なんだな?俺が戻らなかったらペリ○ジュエのシャンパンも飲めなくなるんだぞ?食堂もフーちゃんだけじゃ運営はできないぞ?食材は全部俺が用意してるんだからな?キャロちゃんも絶対泣いてくれるはずだぞ?」

「ええい!うるさい!大丈夫だと言っているだろう!さっさと停止してしまえ!」


エルメラが勢いよく停止レバーを押すのが見えた。


俺の意識はそこで途絶えた。



ペチペチと音が聞こえる。

どれくらいの時間、意識を失っていたのか。ぼんやりと意識が戻ってくるのを感じる。


「こうしてアキラの二度目の人生は幕を閉じたのだった。(完)」

「(完)って何だよ。まだ生きてるよ。」


聞き慣れた尊大な声を聞いて俺は覚醒した。


「やっと戻ったか。」

「俺、戻ってこれたんだな。良かった。」


キャロちゃんの顔が目の前にあった。俺の体の上に馬乗りになって顔をペチペチ叩いている。キャロちゃんを抱っこして起き上がると、側にフーちゃんもニコニコしながら立っていた。どうやら二人は俺の体を磨いてくれていたようだ。


「天使がいる。俺、本当に戻ったんだよな?お迎えじゃないよな?」

「二人が天使なら私は女神といったところか。よし、神が飲むに相応しい神酒を献上するのだ。さっさとスキルを使え。」


うむ。この傍若無人振りは間違いなくエルメラだ。死後の世界の神様がこんな奴でたまるか。本当に戻って来れたようだな。

少し体を動かして動作確認をしてみる。


「体は特に変わったような感じはしないな。」

「全力で走ったり殴ったりすれば違いが分かるはずだ。全体的に性能が上がっている。一部の関節の可動域も広がっている。より体を動かしやすく、人間離れした動きもできるようになっている。」


言われて確認してみると腕が変な方向に曲がった。この改良は必要だろうか?

スキルの確認も行ってみた。見慣れたショッピングサイトの画面だ。確認するのはやはり魔力残高だ。


「おっ。魔力が増えた。」

「うむ。周囲の魔素の取り込みも問題ないようだな。」


これまでは徐々に減っていくだけだった魔力残高が、増えたり減ったりを繰り返している。


「それと予定していた改良は思ったより早く終わったから、他にも機能を追加してみた。確認して見てほしいのだ。」


エルメラが楽しそうな顔をしている。俺の体に何をしたんだ。とても嫌な予感がする。


「どんな機能なんだ?」

「まず、腕を前に向けてくれ。」

「こうか?」


右腕を前に突き出してみた。


「うむ。そして、脇の辺りから肩関節の中のスイッチを強く押すのだ。」


スイッチか。これかな。ポチッとな。


ズドンッ!


大きな音と共に強烈な反動で後ろに仰け反ってしまった。何事かと思ったら、右腕の肘から先が無くなっていた。


「おい!俺の腕どこいった!」

「うむ。上手くいったようだな。」


エルメラの視線の先には、尻を押さえてのたうち回っているマルダシリがいた。どうやら飛んでいった俺の腕がケツに直撃したようだ。


「ロケットパンチか。いらん機能付けるなよ。」

「なかなかの威力ではないか。」

「俺の体、希少金属でできてるんだよな?腕が回収できなかったらどうするんだよ。」

「うむ、それが欠点なのだ。失くなったら大損失だからな。必ず回収するようにしてくれ。」

「やれやれ、使う機会はないだろ。魔導銃があるんだから。おい、マルダシリ。無事か?」

「痛いでやす・・・。身体強化してなかったら尻が粉砕されてるところだったでやす。」


積み上げたウイスキーのケースを持ち上げようと、身体強化を行って踏ん張っているところだったようだ。マルダシリじゃなかったら死んでたかもしれないな。改めて威力だけはすごいな。でもやっぱり二度と使うことはないだろう。

飛んでいった腕を拾って装着すると、元通り動くようになった。


「やっぱり危ないから元に戻してくれないか?」

「いいや、この機能は絶対にあった方がいい。楽し・・・戦略の幅が広がる。」


誤作動したりすると危ないと思うのだが。

離れて見ていたキャロちゃんがやって来た。


「アキラ、かっこよかった。」

「え?そうかな?じゃ、じゃあ、このままにしておこうかな。」

「ん。手、飛んでいくのかっこいい。」

「う、うん。武器がなくなった時の切り札にはなるかもしれないしな。まあ、悪くないかな。」


キャロちゃんが気に入ってくれたみたいだから、このままにしておくか。

『やっぱり多機能ゴーレムにすべきか』、と不穏な言葉が聞こえた気もするが、純粋にスペックは向上したみたいだから良しとしよう。特に燃料切れを気にしなくてよくなったのは大きいしな。


俺はエルメラに文句言える立場じゃないし、素直に感謝しておくとするか。


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