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第24話 ミッション

「ここから先は敵対組織の縄張りになる。」


武装を整えた俺たちは、3手に分かれて敵の縄張りである街の北側の区画に進軍した。マルダシリとレーゼの案内に従って進んでいく。目指すは主組織フィッツヴァルツのボスが立て籠もっている倉庫街だ。

ちなみにキャロちゃんは連れてきていない。ミュゼルファミリーの経営する宿に連れて行って寝かしつけてきた。


時々、爆発音や銃声が聞こえる。深夜だというのに、領軍の戦闘は今もどこかで行われているようだ。しかし、近隣の住人たちは逃げ出す様子もない。もう日常茶飯事なのだろう。肝の据わった住人たちである。


目的地に最初に到着するのは俺たちの部隊の予定だ。最短距離で向かっているからだ。他の2部隊は別の方角から北区画に侵入して、遊撃役をしながら倉庫街に向かってもらっている。敵の傘下の組が集まってきているという話だったので、できるだけ足止めをしてもらわなければならない。


途中で領軍の小隊と争っている連中がいた。屋根の上から弓を射っていたので、魔導銃で撃ち落とした。

事前にレーゼの部下の覆面連中が領軍に連絡していたので、俺達とは敵対することなく通してもらえた。どうやら周辺警戒役の部隊だったようだ。


少し進むとまた領軍の部隊がいた。レーゼが合図を送りながら先行する。

こちらは倉庫街の包囲網を築いている部隊のようだ。ここから先が本格的な戦場になる。敵のボスがどの倉庫にいるのかは分からないので、戦闘音のする方向に向かうことになった。

ここからは先導するのは俺の役目だ。俺が目立つように動いて敵を炙り出す。そして後続部隊が射撃する。


「よし、さっさと終わらせるぞ。」

「珍しくやる気だな。」

「俺は朝までに宿に戻りたいんだ。キャロちゃんが寂しがるだろ。」

「まあ、期待している。頑張ってくれ。」

「それにしても、お前も本当に前に出るのか?大丈夫か?」


俺ともう一人が前線の囮役を志願した。まさかのマルダシリだ。


「へい。問題ありやせん。これでも昔は他所の国で軍に所属していたんでさあ。これくらいの修羅場はいくつも経験済みでやす。」

「そうか。ただの事務職だと思ってたよ。」


こいつもきっと過去に何かあった訳有り者なのだろう。修羅場をくぐって生き残った軍人なら勲章もののはず。それが何故他国でマフィアをやっているのやら。

しかし、こいつ最低限の防具しかつけていないんだが、本当に大丈夫なのか。


「それにしても、どいつもこいつも古臭い銃を使っているな。この作戦が終わったら装備を整えることからだな。」


エルメラがボソッと呟いた言葉で部下の戦闘員たちが色めき立った。この作戦が成功すれば良い装備が配備される。それがあの噂の名工エルメラ製の魔導銃となると、部下たちの士気は俄然高まっていた。エルメラはこれを狙って言ったわけではなさそうだが、中々の人心掌握術だ。


一際大きな爆発音が聞こえた。


「よし、あっちに行くか。全員遅れるなよ!アキラ!マルダシリ!走れ!」


エルメラが檄を飛ばすと、隣にいたマルダシリが消えた。一瞬で数メートル先に移動していた。俺も遅れないように走り出す。

俺ができるだけ惹きつけるため、道の中央を走る。すぐに高所から敵が攻撃を仕掛けてきた。矢と銃弾が降ってくるが、当たるのは無視してこちらもキャメロンで応戦する。

マルダシリは緩急をつけながら変わった動きをしている。ブレるように動いているので、当てるのは難しそうだ。建物の陰まで移動して、マルダシリも射撃を始めた。後続の部隊も続いて攻撃を開始する。


一人は仕留めることができたが、他の連中は姿が見えなくなった。どうやら敵の戦略はヒットアンドアウェイのようだ。領軍が手こずっているのは、敵がすぐ逃げるからか。追うのは無理そうだな。ここは敵の縄張り、庭みたいなものだ。逃走経路や身を隠す場所は把握済みだろう。

しかし、今回の作戦は俺たちの進軍に合わせて、領軍の包囲網を狭めてもらう手筈になっている。倉庫の中まで虱潰しに探していけばいつかは袋の鼠だ。背後は盤石。俺たちは前進するのみ。


散発的に攻撃を仕掛けてくる敵を追い詰めながら進んで行くと、前方に領軍の最前線部隊が見えてきた。さっき爆発音があった場所もここのようだ。領軍が睨む先には魔法で攻撃したと思われる倉庫があった。


「連絡のあった援軍か。協力を感謝する。・・・ん?」

「あ、お前はラルフじゃないか。どうしてこんな所にいるんだ?」

「アキラじゃん!久しぶりだな!」


レインもいた。領主は冒険者まで雇っていたのか。しかし、困ったな。こいつらにエルメラを会わせるのはまずいか?


「ミュゼルファミリーに領軍に協力的な新しいボスが就任したと聞いたのだが、アキラがそのボスなのか?」

「いや、ボスは私だ。お互いに疑問はあるだろうが話は後だ。戦況はどうなっている?お前らがいるならさっさと乗り込めば片付くんじゃないのか?」


魔導ゴーグルを外しながら、後ろからエルメラが現れた。


「敵はあの倉庫に立て籠もっているんだが、厄介なことに中々強力な兵器を持っていて近づけないんだ。遠距離から魔法で攻撃したが、あの倉庫は頑丈に作られてるみたいでな。見た目は普通の倉庫なんだが、厚い鉄板か何かが仕込まれていて小さな要塞みたいになってるんだ。」

「強力な兵器とはどんな物だ?」

「でかい魔導銃だ。それがとんでもない速度で連射してくる。俺は身体強化には自信があるが、流石にあれは防ぎきれん。」


ガトリング砲みたいなのがあるのか?それは中々に手強いな。俺の体なら耐えれるか?


「一発の威力はどの程度だ?連中の持つライフル型魔導銃より上か?」

「同程度だと思う。あそこの地面を見ろ。穴が空いてるだろ?あれ全部その魔導銃によるものだ。用意していた大盾で防げたのは最初の数秒だけだった。」


穴だらけになった大盾が転がっていた。俺の持ってる盾でも連射されると多分同じことになりそうだな。


「ふむ。その程度の威力ならアキラは耐えれるな。」

「本当か?俺もあの大盾みたいになるんじゃないか?」

「流石にアルメディロ鉄鋼を撃ち抜ける魔導銃が存在するとは考えられんな。過去に魔導銃の威力の限界に挑戦する研究をしたことがあるのだが、少なくとも私の技術では無理だ。それでも何とか高威力な銃を作りたくて開発したのがイライザなのだが・・・。まあ、とにかくだ。連射速度が早くても威力が従来の魔導銃と一緒なら問題ないだろう。」


結局、俺が走って倉庫に乗り込んでガトリング砲を制圧。その後、皆が突撃するという作戦になった。


「しかし、あの兵器は2つあったぞ。一人では制圧は無理だろう。」

「俺が行きやす。旦那が倉庫に入ったら、遅れて乗り込みやす。」


またお前か、マルダシリ。こいつには恐怖という感情がないのだろうか?


「話を聞いた限りだと、最近帝国で開発された魔導銃だと思いやす。それなら倉庫の扉さえ開けてもらえれば、避け切って中まで侵入は可能でやす。」

「おい、レイン。お前、あれを避けれるか?」

「いやあ、無理じゃないかなあ・・・。」


冒険者組が首をひねっているが、俺はマルダシリを信じることにした。こいつならやってくれそうな気がする。


「あの大盾が転がってる所を越えると撃ってくるからな。」

「ああ、分かった。行ってくる。」


倉庫まで走り抜けて中に侵入、上階に上がってガトリング砲を制圧。頭の中で何度も流れをシミュレートした。そして皆の注目する中、俺はスタートを切った。


ズガガガガガガガッ!!!


ガトリング砲の一つが轟音を上げて火を吹いた。

俺の頑丈な体は問題なく弾丸を弾いてくれている。もっと弾圧に押されるかと思ったけど、意外と普通に走れるな。

よし、扉はもう目前だ!


ガチャッ


ああっ!扉の鍵が閉まってる!

そりゃそうか。閉まってるよな。立て籠もってるんだから。あんなに頭の中で制圧までの流れをシミュレートしたのに、こんなことを見落とすとは。俺はなんて間抜けなんだ。

後ろで待機している人達、今の見てるよな・・・。めっちゃ恥ずかしい。

ラルフとレインは双眼鏡で俺の挙動をバッチリ見ているに違いない。あいつらに双眼鏡売るんじゃなかった。レインは絶対笑ってるよな。エルメラには・・・後で絶対怒られるな。ミュゼルファミリーの恥晒しとか言われるのが目に見えるようだ。


俺はいそいそと少し下がって、扉に向けてイライザをぶっ放した。流石、エルメラ製の魔導銃だ。一発で扉を吹き飛ばしてくれた。


気を取り直して倉庫へ侵入だ。マルダシリは今頃スタートを切って走り出している頃だろう。ここからは絶対にミスは許されない。

倉庫の中へ入ると一斉掃射が始まるが、普通のライフル型魔導銃のようなので無視だ。階段を探してガトリング砲のあった場所を目指す。

イライザに装填しながら階段を上がっていると、青白い光が飛んできて俺の左肩の辺りに当たった。


!?


俺の左上半身が凍った!

ムンッ!と力を込めると左腕を覆っていた氷は砕けた。

敵は魔法師までいるのか。何でそんな奴がマフィアなんてやっているんだ。だが、危なかった。右手に持っていたイライザが凍結していたら制圧に支障をきたすところだった。足に食らうのもまずいな。動きが封じられる魔法は厄介だ。

魔法が飛んできた方向に向けてイライザを発砲しておいた。すぐに次弾を装填してガトリング砲を探す。前方から集中砲火を浴びるが、きっとそこに守るべきものがあるのだろう。まとまっているなら好都合だ。イライザをぶっ放して障害物ごと吹き飛ばしてやった。その先に目的の大型の魔導銃らしきものがあった。

射手を掴んで階下へと放り投げて制圧完了だ。

ガトリング砲は三脚みたいな物で固定されているが、動かすことはできそうだ。持ち上げて建物内へと向きを変える。

ふむ。このレバーを引いたら撃てるのか。試しにさっきの魔法が飛んできた方角に撃ってみた。そのまま弾切れするまで建物内に撃ちまくった。

もうマルダシリは倉庫に入っているだろう。応援に行くか。と、思ったが、もう一つのガトリング砲も建物内に発射し始めた。射手はマルダシリだった。もう制圧したのか。仕事の早い男だな。

俺は窓から地面に向けてイライザを発砲した。ガトリング砲の制圧完了の合図だ。


後は皆が一気に攻め込んで作戦は完了だな。

俺の仕事は終わりだ。良かった。キャロちゃんが目を覚ます前に宿へ帰ることができそうだ。


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