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第19話 商談

王都に到着したのだが、検問所が結構混雑している。


「キャロちゃん、はぐれたらいけないから抱っこしようか。」

「ん。抱っこ。」


キャロちゃんが両手を挙げて抱っこ待ちポーズになる。可愛いキャロちゃんを抱っこしていると、周囲から向けられる俺への視線も和らぐから、検問所では大体抱っこするようにしている。

今日も性能の良い魔導ゴーレムを演じ切って、無事検問所を通過できた。


街の中も主街道は割りと混雑している。主街道から外れると人通りは落ち着いている様子だが、俺たちの目的地が主街道沿いなのだからこのまま進むしかない。


街道の端を歩きながら街並みを見物する。綺麗に整った街並みだ。整い過ぎている。ここでは俺たちが隠れ住むには都合が悪そうだ。もっとごちゃっとした感じの街を求めているのだ。やはり王都は安住の地にはならないな。


「お、あれが商業ギルド本部だな。明後日の目的地だ。」

「アポは取っておくか?」

「いや、ここはアポ無しで突撃してすぐ退散するつもりだ。次の目的地の王都総合百貨店バーンスタイン商会へ向かうぞ。その辺の人に場所をちょっと聞いてくる。」


聞き込みによると、どうやらこのまま主街道沿いに進めば良いらしい。貴族街のすぐ手前にあって大きな建物だから見落とすことはないという。

途中で寄り道して買い物をしながら進み、目的地に到着した。


「貴族街の近くって聞いた時から予想はしていたが、これは大商会なんてもんじゃないな。」

「うむ・・・。これは王都でも1、2を争うレベルかもしれんな。」

「今の俺達が入ると場違いな気がする。先に宿をとって着替えて行こう。」

「そうだな。さっき通り過ぎた所に良さそうな宿があったから、そこにしよう。近い方がいい。」


こうして話している今も豪華な馬車が店の前に止まり、いかにも富裕層という様相の人たちが店に入っていった。

今の俺達は旅装束だ。アポを取るだけとはいえ、これで店に入るわけにもいくまい。


この辺りの区画は富裕層向けの施設ばかりのようだ。向かった宿は高級宿だった。

2人部屋で一泊金貨4枚だと・・・!?予想外の出費にげんなりしつつ、2泊分金貨8枚を支払った。

くそっ!表の街でもぼったくられるとは。


「お部屋広い。いい匂いする。」


キャロちゃんが初めての高級宿にそわそわしている。部屋の中をぐるぐる回って落ち着ける場所を探しているようだ。


「浴場があるらしいから折角だし入っていくか。キャロ行くぞ。」

「風呂上がり後の肌の手入れを忘れるなよ?すぐにやるんだぞ?キャロちゃん、俺はついて行けないからエルメラの面倒を見てやってくれ。」

「ん。大丈夫。任せて。」


キャロちゃんはエルメラの肌の手入れもできるようになっている。ちゃんと美容液などの使う順番も覚えているので、安心して任せられる。二人が風呂に入ってる間に、俺はダークスーツに着替えておいた。


二人が風呂から戻ってきたら着替えてもらって出発だ。

今日はアポを取って少し店内を見るだけなので、フルメイクはしていない。服装もキャロちゃんとペアルックのカジュアルなものにしている。


再び、バーンスタイン商会まで戻ってきた頃には夕方になっていた。客足も引いている頃合いだし、丁度良いだろう。

店内に入ると年配のメイドみたいな格好の店員が対応してくれた。エルメラがフランシーナ会長の名刺を見せて用件を伝えると、どうやら今は店長さんは不在らしい。アポ取りに来て正解だったようだ。明日の朝来ることを伝えて、店内を見せてもらうことにした。

一階は家具や寝具が並んでいる。どれも良いお値段がする。複雑な彫刻や彫金細工が施されている商品もあり、いかにも高級店といった感じの品揃えである。安っぽい商品は一つも見当たらない。2階は装飾品や衣類、食器類などの生活雑貨類のようだ。店側は百貨店を名乗っているが、超高級なホームセンターみたいな印象を受ける。



ざっと見て回って店を後にした。

宿に戻ってからエルメラに感想を聞いてみた。


「エルメラはあの店をどう思った?具体的には価格は適正だったか?」

「うむ、とても品質の良い物を扱っている。値段も適正な価格だと思う。それだけに不思議だ。あれだけの種類の商品を一つの店が揃えるなど、一体どうなっているのか。」

「エルメラもバルテラ王国にいた時は王都に住んでいたんだよな?どんな所で買い物していたんだ?」

「大抵は専門店を回っていたな。その方が品質も良いし、値段も安いからな。色んな工房から仕入れて複数の種類の商品を扱う店もあるにはあった。しかし、そういう所は値段が割高になる。」

「あの百貨店は扱う商品の各分野の職人を抱えているんだろうな。オリジナルブランドみたいな商品もあったし。各ブースに職人みたいな人が配備されていた。原料以外の仕入れはほとんどしていない可能性が高い。」

「各分野の専門店があの建物に集っているというわけか。」

「やっぱり裏にマフィアがいる可能性は高いな。」

「そうか。規模の大きなマフィアなら可能か。奴らは手広く事業をやっているから、多くの分野の職人を抱えていることになるな。」

「各分野の店から支店をあの建物内に出店させるだけで、百貨店の出来上がりだ。」

「ふむ。だとすると明日の商談は何を売るんだ?」

「フランシーナ会長が求めているのは、おそらく絶対にこの国で手に入らないような商品、・・・だと思う。」

「大抵の商品は自分の抱えている工房で用意できてしまうわけだもんな。普段はしない他所からの仕入れをするのは未知を求めてか。」

「未知で尚且つ貴族を含む富裕層をターゲットにした商品でなければならない。」


明日の商談は適当に済ませていいものではなくなった。フランシーナ会長はマフィア関係者である説が濃厚だ。あの異様な雰囲気は幹部クラスの可能性さえ有り得る。先日の盗賊の情報を早くに掴んでいたのも、マフィアの情報網を持っているなら納得だ。期待に応えなければ後で報復もあるかもしれない。マフィアを敵に回すのは恐ろしい。本気で挑もう。


以前、魔石の採掘場でお値段数十万魔力の宝石類を勢いでいくつか購入したが、それらを今回放出してしまおうと思う。本当にあの時の俺は何故こんなものを買ってしまったのやら。大量の魔石を前にして、おかしなテンションになっていたからなあ。


ダイヤモンドペンダントネックレスK18ホワイトゴールド0.5ct(鑑定書付)お値段833000魔力

イエローダイヤモンド天然0.63ct(鑑定書付)お値段737000魔力

ピジョンブラッドルビー1.13ct(鑑定書付)お値段745800魔力

ピンクゴールドモルガナイト:ダイヤモンドペンダントトップ(中古)お値段689000魔力

アクアマリンペンダントネックレス:お値段374000魔力

花珠真珠パールネックレス/イヤリング2点セット8.0-8.5mm(鑑定書付)お値段176000魔力


以上が購入している高額商品だ。この内、アクアマリンのネックレス以外を全部売ってしまいたい。

アクアマリンのネックレスは可愛らしいお洒落なネックレスだな、くらいの感じで購入したものだが、今はキャロちゃんが大きくなったらあげてもいいかなと考えている。

☆天使の石・ロマンティックなアクアブルー☆、なんて売り文句が書いてあったし、天使のようなキャロちゃんの為にあるようなネックレスだろう。これは売らずに時が来るまで大事に持っておこうと思う。


真珠のネックレスセットは、先日の野営場でフランシーナ会長に見せている。すごく似合いそうだったから。購入の意思を示されているので既に売れたようなものだ。


一体、どれくらいの値段が付けてもらえるのか。鑑定書が意味を為さない以上、低価格で買い叩かれる可能性もあると思っている。正直、期待はしていない。これらの商品が不発で終わる可能性も想定して、他にも商品を用意しておくか。



翌朝、いよいよ勝負の時がやってきた。

今日は早起きしてもらってフルメイクをばっちり決めた。髪もアップでまとめて商人らしく『できる女』を演出した。キャロちゃんも目一杯おめかしした。二人共、まだ眠そうだ。


バーンスタイン商会を訪れると中年の紳士が出迎えてくれた。どうやらこの人が店長さんのようだ。エルメラと軽く挨拶を交わして奥の応接室へと案内される。

店長さんの年齢から考えて、この人はフランシーナ会長の息子ではなさそうだ。雇われ店長っぽいな。つまり、本社がどこか別の所にあって、そこに息子がいるのだろうな。きっとそこはマフィア組織の根城なのだろう。


早朝だというのにもう客が入っている。繁盛しているようだな。

む、仮面を被ってる客がいるな。貴族の人だろうか。俺が目立たずに済むのはありがたい。この店内では誰も俺を不審な目で見る者はいない。とても居心地が良い空間だ。もっとも、今日はエルメラが目立っているので、結局注目を集めてしまっているのだが。


「昨日は大変失礼致しました。商業ギルドに出向いておりまして。」

「いや、我々も事前の連絡を入れておくつもりで立ち寄っただけだ。」

「そうでしたか。マリアン様一行が近日中に訪れることは、フランシーナ会長より早駆けの便で連絡を受けておりました。商業ギルドにもその件を伝えに走っていたのですよ。ギルドへはいつ立ち寄られても対応できるように計らっておきましたので。」

「それは助かる。明日にでも立ち寄ろうと思っていたのだ。」


少し世間話を挟んだ後、早速商談に移った。


「こういった物があるのだが、買い取りは可能だろうか?」


最初は無難に金策実績のある双眼鏡とウィッグを出してみた。今回は男性用ウィッグも準備してみた。ウィッグ用マネキンヘッドを並べて装着していく。

店長さんは双眼鏡には目もくれず、ウィッグに飛びついた。


「これは造りものの髪ですか?とても自然な髪質ですね。」

「バルテラ王国でも少し販売したのだが、需要はあるか?」

「ええ!それは勿論!貴族の方々が社交の場に赴く時に気にされる方は、結構いらっしゃるのですよ。」


エルメラも元貴族だが、社交界にはほとんど出たことがないため知らなかったようだ。

色んな髪型、髪色で用意したウィッグはその数100品。全て買い取ってもらえることになった。マネキンヘッドまで良いお値段で買ってくれた。合計大金貨310枚也。

あまり直射日光に当てないようにとか使用上の注意を説明しておく。エルメラは頭がいいので、商談で喋ることは全て暗記してくれているから助かる。


「こちらは双眼鏡というものだ。遠くを見るための物だな。」

「これも素晴らしい物ですね。ううむ、調節までできるのですか。仕組みはルーペや眼鏡の延長のようですが、一体どうなっているのか。」


渡したのはお値段10000魔力くらいのそれなりの性能の物だ。この商会は眼鏡を扱っていたし、ガラス食器類も多数あった。おそらく良いガラス職人、レンズ職人を抱えていることだろう。きっと購入した双眼鏡を分解して仕組みを知ろうとするはず。だが、渡した双眼鏡は光学部品が使用されていたはずだ。光の仕組みを理解しなければ再現は不可能。再現できたとしても、光学部品を使用しないオペラグラス程度だろう。


「昨日、店内を見せて頂いた。腕の良い職人を抱えているようだな。だが、それだけではその商品を製作することはできない。分解すれば分かることだが、もっと違う技術や知識が要求される。それを踏まえた上で値段を付けて頂きたい。」

「必ず納得頂ける値で買い取りはしますので、一つ職人に見せてきても良いですかな?」

「ああ、構わない。分解してみてくれ。」


結局、一つ当たり大金貨5枚で、用意した10個全て買い取りとなった。


さて、いよいよ高額商品シリーズの査定だ。どれ程の値段が付けてもらえるか。



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