表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/39

第14話 休息日

国境の山を下山してから4日目。それなりに大きな街が見えてきた。このまま進めば日暮れ前には街に着くだろう。だが、今日は街に行くつもりはない。

まだ昼過ぎだが、今日は野営場で早めに腰を落ち着けることにした。街に着いてからの詳細な計画を練るためだ。


「計画と言っても、マフィアから身分証を買えるかどうかで大きく方針は変わるだろう?」

「そうなんだが、最初にマフィアに渡す手土産の選定とか俺の準備があるんだよ。それにたまにはのんびりしようじゃないか。国境を越えたお祝いに美味いものでも用意するから。」

「休息日ということか。分かった。この野営場は安全度が高そうだし、まあいいだろう。」


この野営場は川辺に隣接している以外は、周りはだだっ広い草原だ。魔物が隠れ潜めるような場所もない。いつかのように知らないうちにハウンドドッグに囲まれてました、なんてことにはならないだろう。こんな時間から野営をしている人はいないから、少し目立ってしまうかもしれないが問題はないはずだ。


「よし、私は酒を飲みたい。長いこと禁酒していたんだ。」

「その前に風呂に入らないか?折りたたみ式の浴槽なんて物を見つけたんだよ。」

「風呂か。もう何が出てきても驚かんな。」

「水はそこの川から汲んでくればいいんだが、お湯を沸かせれないんだ。エルメラの魔法で何とかならないか?」

「私は魔力が少ないからそんなことはしたくない。魔道具で解決するのが私のやり方だ。ちょっと待ってろ。」


エルメラはマジックバッグから予備の魔導コンロを取り出すと分解し始めた。

何をするのか知らないが、自信がありそうなので任せておこう。俺は浴槽を組み立てて川の水を汲んでおくことにした。


「できたぞ。これを水の中に投げ込んでおけば、そのうち湯になるはずだ。名付けて『投げ込みヒーター』だ。スイッチを入れると熱くなるから気を付けろよ。」


丁度、水を汲み終わったところで、円盤状の金属塊を渡された。浴槽が傷まないように、木製のまな板の上に投げ込みヒーターをのせて沈めてみた。そして、四方を囲えるタープを設置して準備が整った。


「よし、準備できたぞ。お湯の温度は俺には分からないから自分で調整してくれ。キャロちゃんの世話は任せるぞ。」


温度調整用の水を汲んだバケツと着替えやタオルを側に置いて、俺はタープの外に出た。

日除けのタープを張って、アウトドアチェアを用意しておく。休息日ということで、今日はいつものイスではない。ゆったり座れるものを準備した。


『折りたたみ式リクライニングチェア:ハイバック枕付き:ドリンクテーブル付き』


2つ並べて設置する。


これから俺の戦いが始まる。装備品をチェックして、戦闘の流れをイメージしておく。最初の一手は一秒でも早く打たねばならない。遅れれば遅れるほどダメージは大きくなってしまう。


「いやあ、いい湯だった。野営場で風呂に入れるとはな。」

「来たか!さあ、すぐにここに座ってくれ!」

「何だ、またか。朝もやったからもういいだろう。」

「風呂上がり後は時間との戦いなんだ!早く!」


洗顔後の肌ケアはとても大事だ。

まずは導入美容液を使用する。多種多様な商品があるが、洗顔後、最初に使うものだからこそ保湿効果の高い商品を使うべきと俺は考えている。次に使うのは化粧水だ。これはさっき使った導入美容液と相性の良い商品と組み合わせて使っている。お次は美容液。気になる肌の悩みに合わせて商品を選ぶものだが、エルメラは美容に無関心なので俺が勝手に選んだ物を使っている。最後に乳液を塗って完了だ。これでエルメラの肌は守られた。


「やれやれ、毎回毎回、何故こんなことをせねばならんのだ・・・。」

「キャロもやる。」

「キャロちゃんのも準備してるぞ~。エルメラもキャロちゃんを見習え。」


キャロちゃんは美容に積極的だ。エルメラの真似をしたいようで、いつも催促される。

0歳から使える無添加美容液を塗ってあげた。子供だからね。保湿程度で十分だ。

髪の手入れもして、エルメラに作ってもらったドライヤーの魔道具で乾かす。これで俺の戦いはようやく終わった。


「よし、終わったな?酒だ!酒を持って来い!」

「その前に水分補給だ。水を飲め。希望の酒はあるか?」

「ワインを飲みたい。」

「了解。」


俺の手にはショッピングサイトで購入したワインの本が握られている。ワインの順番というのがあるらしい。

食前酒はスパークリングワインでいいか。キャロちゃんは風呂上がりだし、フルーツ牛乳にするか。料理は簡単にできるカプレーゼがいいかな。

トマトとモッツァレラチーズを輪切りにして交互に並べていく。オリーブオイルに塩コショウ、粗挽きブラックペッパー、レモン汁、乾燥バジルを入れて、ぶっかけて完成だ。



リクライニングチェアで寛ぎながらドリンクを楽しむ二人。

野営場に現れたセレブだな。



二品目の料理を作らねば。

次はとあるキャンプ芸人さんが作っていて、すごく美味そうだったから真似したこともある料理だ。俺が生前食べた海老料理の中で一番美味かったと言える。その人は海老の地中海風炒めと呼んでいた。

海老は頭と尾を残して殻を剥く。頭を残すのが重要なんだと力説していた。頭からいい出汁が出るんだとか。

ニンニクをオリーブオイルで炒め、エビを加えて焼く。タバスコを振りかけて、エビが浸かるくらい白ワインを加えて煮る。コリアンダーパウダーを散らして完成だ。


この海老料理と一緒に出すワインはシェリー酒だ。今、料理に使った白ワインの残りだ。それなりのお値段のワインだったから、料理に使ったのは勿体なかったかもしれない。


「おいおい、随分飲んでるな。それ食前酒だぞ。」

「久々の酒なんだ。うるさいことを言うんじゃない。」

「次のからはアルコール度数が上がるから飲みすぎるなよ。シェリー酒だ。」


さて次の準備だ。次はロゼワインを出すつもりだ。

俺の手には『猿でも作れるお手軽キャンプ飯レシピ集99選』という本が握られている。ロゼに合わせるのに良さそうなレシピは・・・。お手軽ディップでブルスケッタ、これにしよう。


アボガドとクリームチーズとスモークサーモンを混ぜる。

イカの塩辛とクリームチーズを混ぜる。

トマトと生ハムを刻んでを混ぜる。


3種類のディップを薄切りにして焼いたバゲットにそれぞれ塗って、粗挽き黒胡椒を振ったら完成だ。

キャロちゃんには、イチゴとクリームチーズのブルスケッタだ。メープルシロップにつけて食べてもらおう。



夕方になって野営場が賑やかくなってきた。あちこちで焚き火を焚いている。だが、うちは焚き火はしない。お肌が乾燥しちゃう。俺、肌無いけど。

その代わりに小型の折りたたみ式バーベキューコンロを用意している。炭火でステーキを焼くためだ。予め用意しておいた炭はいい感じで燃焼している。

今回はイチボステーキ肉とフィレステーキ肉を用意した。炭を端っこに寄せて強火で両面を焼き上げる。アルミホイルに包んでコンロの炭のない側に数分置いて予熱で火を通す。

用意しておいたガーリックライスにステーキをのせてソースを掛けたら完成だ。


ステーキと一緒に出すのは、フルボディの赤ワインだ。


「良いワインを持ってるじゃないか。これはマフィアに売っていた物か?」

「いや、マフィアに売ったのは全部安物だ。それは俺が二日間駆動できるくらいのお値段だったよ。」

「そうか。アキラの寿命が2日縮んだか。それは味わって飲まねばな・・・。」


今日開けたボトル全部を合計すると2日分どころではないがな。


最後にデザートワインだ。

デザートワイン?何だそれは?ワインの本に従ってボトルを開けてきたのだが、最後に知らないワインが出てきた。どうやら甘みの強いワインらしい。

ワインなら手当たり次第にいろんなものを購入したから、1本くらい該当するものがあるはず。しかし、ショッピングサイトの購入履歴を検索しても、それらしいワインが引っかからなかった。サイト内検索ではヒットしたので、お急ぎ便で慌てて注文した。痛い出費だ。

本を詳しく読むと冷やして飲め、と書いてある。気温は低そうだから今回は大丈夫かな。今度、エルメラに氷を作る魔道具を作っておいてもらおう。ワインクーラーとデカンタも買わなきゃ。それに、もっと勉強しないと駄目だな。今回の経験は良い勉強になった。


焦りながら準備したデザートワインと梨のコンポートを運んで、ようやく俺は一息つけた。

すごく疲れたな。俺の体は疲れないはずなのに。


優雅にワインを楽しんでいるエルメラ様はご機嫌な様子だ。キャロちゃんは既に隣で寝てしまっている。梨のコンポートは明日のおやつタイムに出してあげよう。


「実に良い休日だった。」

「それはどうも。俺はこの世界に来て初めて疲れたよ。ワインは難しいな。」

「うむ。ワインはとても良かった。こんな所で飲むべきものではなかった。」

「ああ、物が良すぎた。俺では扱いきれていなかった。この状況に合う物を選ぶべきだったな。反省している。」

「分かっているなら良いのだ。精進するようにな。」


こんな寒空の下で飲むのは勿体なかったな。もっと安いワインで良かったのだ。それこそ寒いのだから、ホットワインにするとかすれば良かった。


「最初に飲んだワインを最後にもう一杯飲みたいな。」


スパークリングワインで始めてスパークリングワインで〆るか。俺にはワインのことはよく分からないが、何かすごく通っぽく見えるな。どれも初めて飲むワインのはずなのに妙に様になってるし。流石、元貴族なだけあるな。


キャロちゃんを布団に包んでコットに移動させる。エルメラも就寝するようだ。


この野営場に滞在した目的がまだ果たされていないのだが。


「明日、街に着いてからの計画考えないとな。」


魔導ゴーレムの夜は長い。朝までたっぷり時間はある。

結局、一人で計画を練ることにした。

まず、マフィアに献上する手土産だな。ワインでいいか。

これまで会ったマフィアの連中の顔を思い出す。うん、あいつらにワインの違いなんて絶対に分からない。やっぱり安物で十分だろう。他に対策しておくべきことは・・・。


あー、何かどうでも良くなってきた。


大の字になって寝転がる。


知らない星空だ。やっぱり異世界なんだなあ。


しばらく星空を眺めて、時間が過ぎていった。


まあ、たまにはこんな休日もあってもいいか。俺も休もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ