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第10話 一触即発

扉を破壊して人の家に入ってくるとは盗賊だろうか。まだ未来ある若者に見えるのだが。


「おいおい、人の家の扉を壊すなよ。何の用だ?」

「お、お前何だよ。」

「それはこっちのセリフだ。お前こそ何だよ。食事中に扉壊して入ってくるなよ。」


俺の怪しい仮面顔と巨体にビビっているようだ。よく見ると扉を壊した少年の後ろにも2人いた。こちらも10代半ば位の少年と少女だった。後ろの前髪の長い少年が怯えながら、俺の質問に答えてくれた。


「すみません、冒険者ギルドから脱走した奴隷の捕獲の依頼を受けているんです。この廃村に隠れていたりしないかと思って来たんです。廃村と聞いていたので、住んでる人は誰もいないと思っていたんです。」

「そうか。残念だがその奴隷とやらはここにはいないから帰ってくれ。扉を壊したことは大目に見てやるが、今後は気をつけろよ?」

「待てよ!お前が逃げた奴隷じゃないのか!?」

「デラン、逃げたのは子供だって言ってたよ。」

「そうだよ。この人は関係ないよ。ほら謝って帰ろう。」

「いいや、廃村に住んでるのは絶対怪しい!こいつは悪い奴だ!」


うーん、考えなしの頭の悪い子かと思ったけど、勘はいいようだ。痛いところを突いてくるなあ。これは穏便に済ますのは難しいかもしれない。


「確かに君の言うことも最もだ。俺はこんな見た目だしな。実はこの仮面は呪いの仮面でな。外せないんだ。そのせいで街で暮らせなくてな。ここに勝手に住み着いて・・・」

「うるせえ!悪い奴は死ね!」


俺の言葉が言い終わらないうちにまた剣を振り抜いてきた。


ガギンッと金属がぶつかり合う音が響く。


「ナマクラだな。もっと装備には金を掛けたほうがいいんじゃないか?」


俺の体にぶつかった少年の剣は根本からポッキリと折れていた。当然だが俺は無傷だ。いや、また服が破れたから無傷ではないな。


「は?えっ?俺の剣が・・・」

「それで?まだ続けるのか?」

「高かったんだぞ!返せよ!俺のけ・・・」


ゴスッ!


もう時間の無駄だと判断して、拳骨を落としてやった。勿論、手加減はした。


「おい、そこの二人。こいつを連れて帰れ。それとこれは助言だが、お友達は選んだほうがいいぞ?」


後ろにいた二人は倒れた少年を引き摺って帰っていった。


「やれやれ、冒険者にはあんな奴がいるのか。」

「ここまで怒鳴り声が聞こえてたぞ。まだ駆け出しの若者だろうが、あれは早死するな。アキラの対応は良かったと思うぞ。」

「だが、帰したのは悪手だったかもな。憲兵やギルドに俺のことは報告されるだろうし。」

「あの冒険者の報告は遅れるはずだ。負傷者を引き摺りながらだと、街まで戻るのに相当時間がかかるだろうからな。」

「そうは言っても、早めにここを発つべきだよな。」

「ああ、どのみちここでの用件はもう済んだんだ。食事が済んだら出発だ。夜の間に距離を稼ぐぞ。」

「もう一泊してキャロちゃんを休ませてあげたかったな。」


部屋の奥に隠れて怯えていたキャロちゃんが出てきた。

冷めたシチューを温め直していると、俺の破れた服を触っていた。


「俺は大丈夫だよ。頑丈だからな。キャロちゃんもいっぱい食べて頑丈な体になるんだぞ。」

「アキラは、食べない?」

「・・・ああ、俺は食べれないんだ。」


キャロちゃんは黙ったまま、シチューが温まるまでじっと俺を見上げていた。



食事の片付けが終わると荷物をまとめて出発だ。

ショッピングサイトで『背負い搬送具』というものがあったので購入してみた。ベルトで固定することができるので、キャロちゃんを背負って運べる。


「本当に何でも出てくるな。アキラのスキルは。」

「これならキャロちゃんは寝てても大丈夫だ。先を急ごうか。」


山道は荒れ果ててはいるが、ちゃんと道になっている。これなら楽に進めそうだ。と、思っていたら後ろにいたエルメラが魔導銃キャメロンを発砲し始めた。


「ハウンドドッグだ。」

「またか。この辺は他の魔物はいないのか?」

「夜だからな。夜行性の魔物なんだよ、あいつらは。射程に入ったらどんどん撃て。」

「了解。」


俺の魔導銃のデビュー戦だ。エルメラと背中合わせになり、キャメロンを構える。木の影から顔を出して様子見してる奴がいたので、遠慮なくヘッドショットを決めてやった。うむ、扱いやすい良い銃だ。

その後は一斉に襲いかかってきたので、バンバン撃ちまくった。流石に動く的をヘッドショットは難しく、当たってもまだ生きている様子だった。だが、倒れて足を止めることができただけで十分だ。止めは後で刺せば良い。

装填していた弾を撃ち尽くした後は、すぐにハンマー斧に持ち替えた。今の俺ではまだエルメラのようにスムーズな再装填ができないのだ。接近してきていた最後の一匹をハンマー斧で殴り飛ばして戦闘は終了した。エルメラの方も既に片付いていたようだ。


「悪くない腕だな。経験があるのか?」

「このタイプの銃と似たような物を前世で使ったことがあるんだ。クレー射撃っていうスポーツでな。」

「ミュスカも作った方がいいか?」

「いや、ハンドガンタイプは使ったことがないから必要ない。構え方すら知らない。」

「そうか。まあ、魔物相手にはミュスカはあまり役に立たないしな。」


再び歩みを進め、先を急ぐ。だんだんと道が険しくなってくる。魔導銃を抱えて魔物を警戒しながらの行軍はなかなかに大変だ。時々現れるハウンドドッグの群れを退けながら進み、夜が明ける前には一つ目の野営ポイントの川辺に着いた。


「私は寝る。昼前に起こしてくれ。」


エルメラはコットを設置するとさっさと寝てしまった。疲れていたのだろう。


「アキラ、おなかへった。」

「うん、キャロちゃんは先にごはんにしようか。」


背負っていたキャロちゃんを降ろして、食事の準備をすることにした。キャロちゃんは待ちきれない様子だし、簡単に作れるものが良さそうだ。

レトルトごはんを湯煎で温めている間に、焼鳥の缶詰と玉ねぎを麺つゆで煮込んで溶き卵を入れる。卵がいい感じで半熟になったところで、ご飯の上にのせる。簡単親子丼の完成だ。

キャロちゃんはニコニコしながら親子丼をスプーンで掬って口に運んでいる。口数は少ないが、少しずつ表情が豊かになってきている。良い傾向だ。彼女が普通に街で暮らせるようにしてやりたい。犯罪歴があるわけでもないし、俺やエルメラと違って隠れながら生きる必要はないのだ。隣国に入ればそれが叶うはず。


キャロちゃんは移動中に寝ていたからか眠くないようだ。退屈そうだったので、食事後はシャンプーをしてあげることにした。髪も綺麗に整えてあげよう。頭の上にケモ耳がついてる客のカットなどしたことがないから悩むな。折角の狐耳が映えるようにショートカットにするか。もうすぐ耳を隠す必要もなくなるわけだし問題ないだろう。


シャンプーすると綺麗な金髪サラサラヘアーになった。可愛らしさに一層磨きがかかったな。鏡で自分の顔を見せてあげると不思議そうな顔をしていた。


まだ昼前まで時間があるのでどうしようか、と思っていると黒っぽい鹿が見えた。川に水でも飲みに来たのだろう。だが、距離は結構離れているのだが、サイズ感がおかしい。あれは俺の知っている鹿の大きさではないし、筋肉ムキムキのやたらガタイのいい体をしている。おそらく魔物だろう。迂闊に手を出していい相手ではない気がする。エルメラを起こすべきか。

向こうはまだこちらに気付いた様子がないし、このままやり過ごすか。様子見をしていると今度は森の中から緑の人型生物が複数現れた。ファンタジーの定番みんなの大好きなゴブリンだろうか。やっぱりいるのかゴブリン。

どうなるだろうかと様子見を続けていると、ゴブリンはあの強そうな黒い大鹿にちょっかいを掛け始めた。石を投げつけて効果がないとみるや、木の棒を持って殴りかかった。

勝負は一瞬だった。

大鹿は振り向きざまに一匹を角で串刺しにしていた。残る二匹のゴブリンも一匹は高く蹴り上げられ、一匹は踏みつけられて動かなくなった。


高く蹴り上げられたゴブリンは俺たちが野営している側に落ちてきた。それによって大鹿が俺たちの存在に気付くことになってしまった。ゴブリンの襲撃で気が立ってしまったのだろう。こちらに向かって突進してきた。

あのゴブリン共、余計なことをしやがって!


「キャロ!エルメラを起こせ!」


俺は叫びながらイライザを発砲した。初めて使ったイライザだったが、凄まじい威力だった。バシュッという気の抜けたような音で弾が飛んでいき、避ける様子もなく突進してくる大鹿に正面から命中した。そして、思っていた以上の爆発を引き起こした。

しかし、全く油断できるような相手ではないと判断して、キャメロンに持ち替えて追撃する。その判断は正しかった。イライザの強力な一撃で一瞬怯んだものの、すぐに突進を再開してきた。だが、着弾した箇所は大きく抉れており、間違いなく致命傷を与えられている。

的がでかいので当てるのは簡単だ。キャメロンを駄目押しとばかりに連射し続けた。大鹿は叫び声を上げながらも足を止めることなく突っ込んでくる。


止めきれない!

俺はキャメロンを放り捨てて、迫りくる大鹿の巨大な足に踏みつけられた。その瞬間に大鹿の足に組み付いたことで、大鹿は躓いて転倒した。何とか止めることができたようだ。

キャメロンの発砲音が響くのが聞こえる。エルメラの追撃だ。そして、ようやく大鹿は動きを止めた。


「はあ~。俺、死んだかと思った。」


俺は大の字になって倒れた。


「大丈夫か?相変わらず無茶な戦い方をするな。人間ならミンチになってるところだぞ?」

「本当に俺は丈夫に作られてるなあ。かすり傷だ。」


相変わらず服は破れることになったが、踏まれた腹部を確認しても特に異常はない。


「立派な鎧鹿だな。こんなに成長している個体は珍しいな。角だけ頂いていくか。良い値で売れるぞ。」


エルメラは呑気に鹿の角を切り始めた。やれやれ、現金な奴だ。


キャロちゃんが駆け寄ってきてギュッと抱きついてきた。


「キャロちゃんも無事だったか。もう大丈夫だぞ。」


何も言わずに抱きついたままのキャロちゃんを抱っこする。きっと怖かったのだろう。しばらくサラサラになった金髪ヘアーを撫でてあげた。


「ん?」


俺たちが登ってきた方角から誰か来る。統一された防具を身に纏っている一団だ。


「エルメラ!追手だ!」


一難去ってまた一難か。どうやら休んでいる場合ではなさそうだ。

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