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Lonely Peace  作者: 天気雪晴
偽物の不断節季
6/35

富豪と貧民の境界線

 リェゼルのおかげで予定通り夜に着いた俺達は大きな壁の前にある森の中で身を潜めていた。

「どうだカユウ? まだ門の前に兵士はいるか?」

 木を登って双眼鏡で門の入口を見ているカユウに聞いてみる。

「ダメだね。人数は全く減らないし、正面から入るのは無理だと思うよ」

 前を見ながら双眼鏡を渡してきたので、俺も門を見る。

 門の前に兵士が4人、そしてたまに壁の周りを見回りしている兵士が通り過ぎていく。

「これは東門や西門も同じかもねー」

「そうだな」

 今俺達が見ているのは、ノースエンドの町を覆う壁で、南に位置している。

 ノースエンドは小さな国で、町は1つだけだ。

 もともと人口の少ない今の時代で国1つに町が2つ以上あれば多い方なので、そこは特に気にすることはない。1番大きなイーストエンドでさえ巨大な町が1つあるだけなのだから。

 問題は前にある大きな壁だ。

 トゥウの情報だと町全体を覆っているらしく、中の様子を見ることはできない。

「しょうがない。最初の作戦で行くか」

 俺とカユウは木から飛び降り、下にいたブライト達に南門からの潜入は無理だと伝える。

「わかったわ。じゃあ作戦通り私が西門、ブライトが東門でカユウは北門ってことで。ここでまた会いましょう」

 俺はリェゼルとともにここで待機し、ブライト達はそれぞれ東と西と北にある門を偵察しに行く、それが最初に考えた作戦だ。

 俺も行ってもよかったのだが、何かあったときにすぐにリェゼルに乗って駆けつけられるのは俺だけなので、ここで全員が戻ってくるのを待つことになった。

「じゃあまたあとでねナイト」

「ああ、危なそうだったらすぐに戻ってくるんだぞ」

「大丈夫大丈夫。私にまかせて」

 笑顔で言うブライトだが心配だ。

 カユウは慎重なので大丈夫だと思うが、ミーゼとブライトは学生のときにトラブルを持ってくることが多かったからな。

 3人がそれぞれの目的地に向かったあと、俺はまた双眼鏡で南門を監視する。

 しばらくすると、横からリェゼルが話しかけてきた。

「ねえ、ちょっと聞いてもいいかしら?」

 珍しく真剣な声のトーンだったので、監視を止めて耳を傾ける。

「なんだ?」

「もし、今回誰かを殺したなんてことになったら、アンタ大丈夫なの?」

「急に何の話だ?」

「アンタさ、何かを殺すまでは平然とやってのけるけど、殺したあとは罪悪感で苦しむタイプのニンゲンでしょ。ブライトと初めて会った日に殺した熊のときだってそうだったし」

「そう……だな」

 もう10年も前になるのか。

 ブライトを助けるために、俺は雌の熊を殺した。

 殺す前は行為に全然ためらいはなかったのだが、殺したあとの気分は最悪だった。

「それなんとかしたほうがいいわよ。今後のためにも」

「……ああ、わかってる。でも心配するな。どうせ()()()()()()()

「?」

 リェゼルはよくわかっていないようだ。実際俺も何故そう思ったのかはわからない。

 ただ、ヒトの心っていうのは変わりやすいものだ。

 どんなに固く決心しても、小さな出来事が重なったり、あるいは大きな壁によって揺らいでしまう。

 ましてや俺はまだ青二才の一人のニンゲンだ。変化など毎日のようにあって当たり前なのだ。

 そんなことを気にするぐらいなら、今やるべきことを見つけ、行動する方が有限な時間を無駄なく使うことができるだろう。

 そのあと、特に変わったことはなく時間は過ぎ、ミーゼとブライトが帰ってきた。

 とりあえずトラブルは持って来なかったようで安心した。

「やっぱり西門もここと同じだわ」

「私の方も同じです」

「そうか……」

 となると残りはカユウだけなのだが。

「カユウはもう少し時間がかかるでしょうね」

「町の反対まで行ってるからな。まあ、それまではここで大人しく……」

「もう来てるよ」

「うわ! びっくりしたぁ」

 急に横に現れたカユウに思わず変な声を出してしまった。

「そう驚かないでよ。面白いなぁ、ナイトの反応は」

「こんなところで横から急に話しかけられれば誰だって驚くだろ」

 マジで敵だと思ったわ。

「随分早いのね?」

「ああ、北門付近はそんなに見回りの兵士がいなかったからね。おかげで壁を登って中の確認も少しだけできたよ。そしたらちょっとおかしな光景が見えてさぁ」

「おかしい? 町の様子がか?」

「話すより見せた方が早い。すぐに北門に行こう」

 そう言って馬車に乗ろうとするカユウを見て、俺達3人は顔を合わせたあとすぐに馬車に乗って北門へ向かった。



 北門付近は大陸の端に近いこともあって、木が少なく隠れる場所があまりないらしい。しかも門には兵士がいるので壁を登ることでしか町に入ることはできない。

 なので、東門より少しだけ北に行ったところで、リェゼルと馬車を森の中に置いていくことになった。

「悪いなリェゼル。一緒に連れていけなくて。食料とかは十分に置いておくから計画的に食ってくれ」

 リェゼルなら大丈夫だと思うが、それでも森の中に置いておくのは心配だ。

「アタシは大丈夫よ。それよりも早く行った方がいいわ。夜明けまであとちょっとよ」

「ああ……」

「なによ? アタシそんなにヘマするように見えるかしら」

「いや、そんなことはない。リェゼルが凄い奴なのはよく知ってる」

「じゃあ問題ないでしょ。ほら、みんな待ってるから」

「……ごめんな」

 俺は躊躇いながらも3人の方へ歩き出す。

 見回りの兵士がいない隙を突いて壁をよじ登る。

 20メートルぐらいの高さなので、特に疲れるようなことはなかったが、頂上に着いて少し違和感があった。

「随分暗いな」

 そう、夜なのに町の明かりが1つもないのだ。

「だろ、普通建物の1つくらいは電気がついてもおかしくないのにね。もしかして全員夢の世界にでも行ってるのかな?」

「つまり眠っているということか……」

「それおかしくない? 人間は()()()()()()()()()はずでしょ? 私も眠ったことないし」

「そうですね。人間、というか生き物は全て眠ることができないはずです」

 ミーゼとブライトの言うとおりだ。今の生き物は睡眠というものができない。俺も眠ったことはない。

「ハハハ、そうだよね。冗談さ。ちょっと言ってみただけだよ。それよりもさ、見てほしいものは別にあるんだよね」

 そう言ってカユウは町の中心に近い場所を指差した。

 同時に朝日が出て、町全体が照らされる。

「……なんか、随分大雑把ね」

 ミーゼが言いたくなるのも理解できる。

 俺も最初に思いついた言葉がそれだった。本当に大雑把なのだ。

「まるで富豪と貧民の境界線ですね」

「いや、ホントその通りだな」

 この町は中心を流れる川を(さかい)に建物の作りが全く違った。

 俺達が最初に着いた南側は大きな屋敷が並べられているのに対し、北側は小さなボロい家が並べられている。

 見ただけでわかる。この町は金持ちと貧乏の住む場所が分けられているのだ。

「さて、見せたいものは見せたし、そろそろ壁を降りようか。ここは目立つだろうからね」

「……そうだな」

 その光景はおそらく俺達4人には不快に見えただろう。

 貧富の差、それをこれほど分かりやすく見せられれば誰だってそう思う。



 壁を降りて、町の中に入る。

 朝日は昇ったのに、誰も外に出てこない。

 おかしい。これだけ明るくなれば誰かしら出てきてもいいはずなのに。

「誰もいないのかな?」

「これだけ家があってさすがにそれはありえないだろ」

 ヒトの気配もするので、ここらへん全てが無人というわけではない。

「2人とも静かに! 何か来るわ。どこかに隠れるわよ」

 ミーゼがそう言ったので俺達は誰もいない家の中に入る。

 耳を澄ますと、確かに数人の足音が聞こえた。

 4人で1つの窓から外を覗き見る。

 南側から1人のボロボロの服を着た男の子が息を荒げながら走ってきた。

 黒い髪で身長からして10歳ぐらいだ。

 涙を流して、何かから逃げているようだ。

「誰か助けてぇ!」

「待てコラ、ガキィ!」

 後ろからは、黒装束の男2人が子供を追いかけていた。

 1人は赤い髪でもう1人は薄い黄色の髪、年齢は30前半くらいか。

 子供の足では逃げ切ることなどできるはずもなくすぐに捕まり、頭を手で地面に押さえつけられてしまった。

「やめろ! 誰かぁ! 助けて! 兄ちゃーん!」

 するとまた1人、おそらく子供の兄であろう痩せ細った男が駆け寄った。

「やめてください! どうかお願いします!」

「うるせぇ黙ってろ!」

 赤い髪の男が止めようとする男を肘で突き飛ばした。

「おい……」

「あ? ゴハッ!」

 見ているのが嫌になったのか、いつの間にか飛び出していたミーゼが赤い髪の男の顔面にパンチを喰らわせた。

 もう1人の男は突然現れたミーゼに警戒し、子供を離して後ろに下がった。

「あのバカ!」

「待て」

 ミーゼを助けようとするブライトとカユウの手を掴んで制止する。

「何してるのナイト! 離して!」

「俺達まで出てどうする? ここに潜入したことがバレたら任務は終わりだ。俺達が出なければ敵に知られるのはミーゼだけで済む」

「でもミーゼが危ないよ!」

「心配するな。ミーゼならあの程度の男2人どうってことはない」

 焦るブライトの気持ちもわかるが、今はそれが最善だ。

「あなた……何者です……? 見たところこの町の人間ではありませんね」

「さあ、どうかしらね」

 そう言ってミーゼは男の子の顔についた土を自分のマントで落とす。

「ほら、綺麗になったわよ。早くお兄さんのところに行ってあげなさい」

「うん……」

 男の子は涙目になりながら兄の側に駆け寄った。

「いててて、コイツなかなか良いパンチしてやがる」

 赤い髪の男が赤く腫れた頬を手で撫でながらもう1人の男の隣に並んだ。

「男らしくなって良かったわね。ならもっとかっこよくしてあげようかしら」

 色力を込めた赤い拳同士をぶつけてやる気満々のようだ。

「チッ、舐めやがって。ネーズ、やっちまおうぜ」

「……いいえチャップ、それはまた今度にしましょう」

 赤い髪がチャップ、黄色の方はネーズか。

「なんでだよ! こんな奴相手に逃げろってのか!?」

「あなたは相手を舐め過ぎです。あの拳を見なさい。あの色力の量……私達では勝てません」

「あら? 随分と臆病なのね。()()()()と一緒だわ」

「コイツ、マジムカつくぜ」

「挑発に乗らないでください。私まで馬鹿に見えてしまうでしょう。では、私達はこれで」

「チッ、クソが!」

 そう言って2人は南の方に逃げていった。

「ミーゼ!」

 家から出たブライトはミーゼに抱きついた。

「良かったー何もなくて! もしミーゼに何かあったらどうしようかと……」

「大袈裟よ。それにしてもなんで誰も助けに来ないのよ」

 ミーゼは俺とカユウを睨みつけてきた。

「いや、行こうとはしたんだけどさ……」

「あそこで4人とも見つかれば相手に人数を知られる。それは避けなきゃならない。だから俺が止めた」

 ブライトとカユウは悪くないと俺が説明すると、少しだけ黙ったあとミーゼは言った。

「あっそ、まあ怖いから出れなかったよりは全然納得のできる説明ね。でも謝罪くらいはしてほしいわ」

「……すまん」

「心が籠もってない。もっとちゃんと謝って」

「はい、すいませんでした! 今回のことは全て私のせいです!」

「そうそう、それでいいのよ」

 「勝手に出ていったお前が悪いだろ」と言いたかったがやめた。俺の監督責任だし、任務のために仲間を危険な状況で1人にしたことは確かに酷いことだ。

「あのー……」

 俺とミーゼの話が終わると、さっきの兄弟の兄の方がミーゼに話しかけてきた。

「さっきはありがとうございました。危険なところを助けてもらって」

「ありがとう、姉ちゃん」

 兄弟揃って深々と頭を下げて礼をする。

「別にどうってことないわ。そんな感謝されるようなことしてないし」

 そう言って顔を背けるミーゼだが、頬が赤くなっていた。絶対照れてるなアイツ。

「お礼をしたいのですが、生憎(あいにく)今は何もなくて……」

「いいわよそんなの。それよりも早く帰りなさい」

「いや、ちょっと待ってくれ。なら1つだけ頼みがある。この町のことについて教えてくれないか。ここで何があって今どういう状況なのか、知ってること全てだ」

「この町のことですか……はい、それがお礼になるならなんでも話します。ですが、今は家に戻る方を優先させてください。朝7時になるまで外出は禁止されていますから、また兵士の誰かが来るかもしれません。話は俺達の家で、ということにできませんか?」

 なるほどな、だから明るくなっても誰も外にいないということか。

「こちらとしてもその方がありがたい。俺はナイト、この小さいのはブライトで……」

「だから小さいって言うな!」

「はいはいわかったよ」

「……仲が良いんですね。兄妹(きょうだい)ですか?」

 小さいという発言に怒りを露わにするブライトを見て、兄弟は少しだけ気が緩む。

 ブライトを使って2人に親近感のようなものを湧かせることができたようだ。

「いや、俺がコイツを引き取ってるだけだ。それでこっちが……」

「カユウ、よろしくね2人とも」

「ミーゼよ」

「俺はラズム、こっちは弟のラージニイです」

「よ、よろしく」

「兄弟ですか? 私双子以外の人初めて見ました」

 ブライトと同じように俺も初めて見た。

 双子以外の兄弟が今の時代にいるとは。

 そのあと、話す場所を変えることになり兄弟の家に行くことになった。

 道すがら、ブライトとカユウに話しかけられた。

「君結構やるね。助けたお礼で情報を聞くなんて……」

「ホント、いつそんな悪知恵働かせてたの?」

「これ悪知恵って言うのか?」

「わからないけど……なんか悪者がやりそうな手口だよ」

「そうか……」

 なんか傷つくな、それ。

「思いついたのはミーゼが助けに入ったときだ。もっと上手くいけば、あの2人を捕まえてあいつらからも何か聞ければ良かったんだが……」

 ネーズという奴は勘がいい。

 2対1という有利な状況でミーゼの色力を見ただけで冷静に対処した。

 もしあそこでミーゼが捕まえていれば、兄弟よりもさらに重要な情報を聞けたかもしれない。

「あの2人、警戒した方が良いかもしれない」

「2人ってさっきの人達のこと?」

「ああ、ネーズとチャップって言ってたっけ? そんなに強いようには思えなかったけど、ナイトには何か引っかかったのかい?」

「いや、あの2人の強さというよりバックにいる奴のことだ。この町の誘拐事件があの2人だけで行われてるとは思えない」

「つまり、組織的犯行ってことだね」

「ああ、そういうことだ」

「じゃあトゥウの言ってたとおり……」

 ブライトも今回の事件の元凶がなんとなくわかったらしい。

「イーストエンドが関わっている可能性が高いってことだな」

「じゃああの2人はイーストエンドから来たってこと?」

「いや、それはまだわからない。僕達はまだここに来たばかりだ。結論は情報を集めてからにしよう」

 3人で頷く。

 前の方では、ミーゼがラージニイに構われていた。

「ちょっと、手引っ張らないで」

 どうやら気に入られたようだ。

「まるでお母さんですね。前から面倒見が良いと思ってましたけどここまでとは……」

「ブライト、聞こえてるわよ」

 「やべっ」と言って口を閉じるブライト。

「全く……」

 よく見るとミーゼの顔が赤くなっている。

「……満更でもなさそうだな」

 あの2人はミーゼにまかせればいいだろう。

 それよりもさっきから周りの視線が気になる。

 家の窓からこちらを見るヒト達。

 外出禁止の時間に外にいるから睨んでいるわけではない。どちらかというとあの目は羨望の眼差し。兄弟ではなく、俺達に対して向けている。

「……」



「それで、何から話せばいいでしょうか?」

 兄弟の家に入り、1つのテーブルを6人で囲む。

 小さい家なので、6人だとかなり窮屈だ。

「とりあえず、何故この町が今の状況になったのかを知りたい。わかる範囲で構わない」

 頼んだのは俺なので、ここは俺が話の進行をする。

「えっと、5年前、くらいでしょうか。この国を牛耳ってるルイスという人がいきなり俺達に言ってきたんです。子供を渡せ、渡せば富を与え、拒む者は富を奪うと」

「子供?」

「はい、そのあとからこの町は2つに分かれました。子供を渡した人達は南側に、渡さなかった人達は北側に、という感じで分かれてしまって。北側の人間はみんなルイスから金品を奪われてしまいました」

「それで上から見たとき貧富の差がハッキリとわかるくらい違ったんだね」

「俺もそのときはまだ10歳ですし、弟も7歳だったのですが、両親は手放さず貧しくても一緒にいる選択をしてくれたんです。だから両親には感謝しています。2人とももう死んじゃいましたけど……」

「……じゃあ、さっきの人達は?」

 あまり暗い話にしたくないブライトはすぐにネーズとチャップのことを聞いた。

「あれは、夜な夜なここで子供を(さら)っているルイスの兵士でしょう。ここが北と南に分かれると同時に現れるようになりました。南側ももうほとんど子供はいません。もしかしたらここの子供はラージニイ以外いないのかもしれない」

 そう言ってラズムはラージニイの頭に手を置いた。

「両親が命を落としてまで私達を守ったように、俺もラージニイを命をかけて守ると誓っていた。ですが……」

「結局捕まりそうになっちゃったと」

「はい、ミーゼが助けてくれなかったら、今ラージニイはここにいない。だから本当に感謝しています。ありがとう」

 また頭を深々と下げるラズム。

 同時にラージニイはミーゼの横に座り、マントを触りだした。

「だからもういいって言ってるでしょ。そんなに感謝されても迷惑よ。それよりもあなた達――キャッ!?」

 ラージニイが背中を触った瞬間、ミーゼがかわいい声を出した。

「ちょっと! 背中触らないで! びっくりしたじゃない! アンタちゃんと聞いてるの?」

 怒るミーゼだが、ラージニイは触った手をジッと見ていた。

「姉ちゃん、背中だけ凄い厚着してるね」

「な、なによ。それがどうしたのよ」

「背中だけふわふわしててまるでお布団みたい。そんなに着てて熱くないの?」

「べ、別にいいでしょ。私は寒がりなだけよ」

「そっか、それならしょうがないね」

 笑うラージニイを見て、怒るに怒れないミーゼ。

「子供には甘いんだねミーゼって」

 耳元でブライトがそう言ってきた。

「俺達が同じことしたら即グーパンなのにな」

「だから聞こえてんのよアンタ達!」

「「やべっ!」」

 俺達は揃って口を手で塞ぐ。



 7時になるとヒトビトが続々と外に出てきた。

 俺とブライトも外に出て、ヒトの観察をする。

 ラズムの話だと、子供が攫われるのは外出禁止時間のときだけらしい。

 おそらく外出禁止のルールは、子供を攫うためだけにルイスが作ったのだろう。

 北側のヒト達もそれはわかっている。最初は抗議してたらしいからな。だが、無駄だと悟り、短くても子供と一緒にいることを選んだってわけか……。

 ブライトはボロボロの服を着たヒト達を見て苦悶の表情をしていた。

「どうすればいいと思う?」

 俺は試すように質問してみる。

 心を読まれたことに動揺するが、顔に出やすいことを知っているので、すぐにいつものブライトに戻る。

「……この状況を作ってる元凶をなくすこと、かな」

「……そうか、お前は良い奴だな」

 それはほんの少しの正解と多くの不正解がある解答だ。

 たとえ元凶をなくそうとも、新たにそれは誕生してしまう。

 もしその方法で解決したいなら、元凶どころかさらに元凶となるもの、未来で同じことをするものを根絶やしにするしかない。

 だが、ここでそれを言えばブライトに悪影響を及ぼすだろう。

 ブライトはポジティブだが、ヒビができやすい。

 だから、俺の考えは何も言わない。

 自分の胸を張って答えられるような考えにたどり着けるように上手く立ち回るだけだ。

「別に……そんなわけじゃ……」

「いや、本当のことだ。お前は元凶を倒すんじゃなくて、なくすと言った。それはつまり、相手の考えを変えて問題を解決するという平和的な方法も含まれてるってことだろ?」

「私は、そこまで深い意味を込めて言ったわけじゃない」

「なら気づかずにそういうことを考えてたってことだな」

 ここは無理矢理にでもブライトを褒める。

 そうすることで、ブライトの思考に少しでも光ができるようにする。

「もういいよナイト。それよりも家に戻ろう」

「……そうだな」

 周りからの視線も多いことだしな。


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