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第009話 「このアロー、無かったことにハロー」

やっと人間ですよ。


タイトルがオートファジー?

なんのことやら。


※2021/09/18 続投に向け整合性見直し、全体の記載方法統一、誤字修正実施



 今、全身で人間の身体を感じています。


 生きているって素晴らしいです。


 世界は輝いています。



 田舎の母さん……



 これ、他人の身体です。

 俺の身体だけど他人です。


 何言ってるか分かりません。


 ごめんなさい。



 そして輝いている世界の根源は馬車の窓から入る光…

 …を反射する目の前のハゲです。


 日焼けで黒いハゲのようです。

 顔は精悍なイケメン。


 なのに何でハゲなんでしょうね?

 勿体ないなぁ。


 そんな屈強そうな革鎧の兄ちゃん(黒いハゲ)。

 驚愕の表情で俺の膝あたりを見ています。



 俺も俺の膝を見ています。

 両膝です。

 多分俺も驚愕の表情をしていると思います。



 あ、そうそう。

 この世界での自己紹介をします。

 俺の名前は頭の中にありました。


 え?

 今はキョウちゃんじゃないよ?


 ここ、白い部屋じゃないからね?


 でもキョウちゃんであってるよ?

 というか、中身は普通に斎京です。


 今は忘れてても大丈夫。

 大丈夫……



 おっと、僕はヒガシカ。

 今年15歳になった元準男爵家の三男。


 なんで元かって?


……


 住んでた村、僕と妹を残して地図からなくなりました。

 準男爵の父も。

 優しかった母も。

 頼りがいのある兄二人も。

 美人の姉も。

 家族は僕と妹一人を残してみんな居なくなりました。


 山奥にある、大きく綺麗な湖から流れる川沿いにある村でした。


 父はそんな何にもない村を任されていたようです。

 平和な村でした。


 川の魚と、山菜と、畑の野菜。

 少し狩りをして。

 本当に輝いていたんです。

 毎日が。



 でも、そんな平和は続きませんでした。


 あれは10年位前の話です。


 突如湖から緑色のヘドロが大量にあふれ出したのです。


 父や付近の住民達は、湖の緑のヘドロが15年程掛けて徐々に増えていたのは知っていたのです。

 そのヘドロは干しても燃やしても絶対に死にませんでした。

 ただ、直接触れても特に害のないものでしたし放置していたんです。


 ですがその日、なぜか急に猛烈な勢いで増殖し溢れだしたんです。

 そして、それだけではなくヘドロは変異していたそうです。


 触れた植物、動物を瞬間に取り込み消化するという恐ろしい化け物に……




 次々と色んな物が飲み込まれたそうです。



 まるで緑色の津波のようだったと……

 生き残った人は言っていました。


 何で他人事なのか?

 何で生きているのか?


 僕と妹はマナ熱の病気で、寒い国の別の町で治療していたんです。

 極寒の国では火属性のマナが少なく治療に向いているんで。


 え?マナですか?

 魔法を使う時に使う世界の力の流れです。


 魔法に適正の低い人間は火属性マナの流れが滞るマナ熱病に掛かりやすいんです。


 で、助かったと。

 そういう訳です。


 そうそう、そのヘドロ、氷の魔法が弱点だったらしいです。

 6年前に人族とエルフ族連合軍と、アイスジャイアント、あと永久氷壁に住む氷属性の古代竜が協力し完全に凍結封印しました。

 その後、一昨年だったかな。

 ヘドロは何もなかったように消え去ったそうです。

 氷の檻の中から忽然と消えたそうです。


 ですが、僕も気が付いたら何も無くなっていました。

 家族とワグチ家という準男爵家はもうありません。


 え?

 フルネームですか?


 ヒガシカ・ワグチです。


 妹?


 ニシカです。

 ニシカ・ワグチ。


 なんです?

 変ですか?

 2歳下の可愛い妹、たった一人の家族です。

 今も最後に治療をしていた村にいますよ。


 それで僕は何をしているのかと?


 今僕は乗合馬車に乗って移動中です。

 大陸で一番大きな国、アルケンダス帝国の兵士になるため、首都クルー=マイス近郊にある帝国の軍施設に向かっているんです。


 一人でかって?

 いえいえ。

 ちゃんと保護者がいますよ?


 親じゃないです。

 死にました。

 さっき言いましたよね?

 ボケてますか?


 向かいに座ってる人が保護者です。

 色黒でスキンヘッド、革鎧に身を包んだ屈強な人です。


 アルケンダス帝国 剣術指南役 ショーヴ・ノワール・ミズカミ。

 当代の剣聖です。

 剣術のレベルは82。

 普通の人は一つの技能が50を超えるだけで一生を終える程です。

 ですがこの方の年齢はまだ34歳です。

 まさに最強の剣士です。


 自分の中身は[斎京 剣士 - サイキョウ ケンシ -]ですが、最強の方はショーヴさんでした。


 ミズカミなんて日本の名前みたいですよね?

 そうです。

 何代目かの皇帝は簒奪者でした。

 異世界からの転生者だったそうで、その方の治世の時代からミズカミ姓の家が出てきたらしい。

 ショーヴさんはその中でもノワール家の当主ですね。


 それでなんでそんな凄い人といるのかって?

 それはショーヴさんが僕の剣の師で、僕がその弟子だから。

 あとは身寄りのない僕を引き取り育てて下さったのがショーヴさんだから……ですかね?


 偶然、領地のある極寒の国に来て領内の見回りをしていた時に僕を見かけたらしいです。

 その時、ただの木の棒で遊んでいた僕に[剣の才能]を見た。

 と、そう言っていました。


 そうして剣を習っているうちに実家は村ごと消滅しました。

 親族も家も失った僕と妹ですが、二人ともショーヴさん……もう師匠でいいですね。

 師匠が引き取り育ててくれました。


 そして、15歳を迎えた僕は師匠の推薦で同じアルケンダス帝国への仕官が決まりました。

 配属は剣術指南役 補佐。

 オマケのような役職です。

 師匠には僕の他に正式な弟子がいませんので、師匠不在時に指導出来る人員が必要だったようです。


 まぁ、剣術道場でいうならば師範代のようなものです。

 なので師匠が師範で、その次に偉いのが僕という事になります。


 剣聖である師匠は客分以上の特別な立場を与えられていますが、僕はただの補佐なので立場としてはあまり高くありません。

 ですので補佐するのも剣術の指導だけです。


 師匠のように外交や内政に係わる事はありません。


 とは言え僕のような若輩者には過ぎた役職です。

 ありがたい限りです。


 ただ、やはり年若い事もあり、一度は兵士としての訓練を受けるようにとの事で今に至っています。

 新人研修みたいなものですかね。


 どうですか。

 状況は分かりましたか?







 え?



 ヘドロ……ですか?








『天ちゃん?聞いてます?』





暫くして声が返ってくる。


『はい。

 聞いております』


『ヒガシカ君の言うヘドロってなんだったの?』


『はい。

 グリーンフラットです』



――やっぱ俺でした。


 なんか、こうやってすぐブーメランで返ってくるのやめない?

 最悪なんですけど……


『神の意地が悪いのは往々にしてあることです』



 知ってる気がする。





 さて……と、続きと行きますか。


 師匠と僕が驚愕の表情で膝を見ている所に戻りましょう。





 はい!

 右足から左足に向けて矢が貫通してます。





 ?


 理解出来ませんか?




 馬車の右側の扉に穴があいています。


 その先の僕の膝に矢が刺さっています。


 右足から刺さりました。


 左足に向けて右足を貫通しました。


 貫通した矢が左足に刺さりました。


 そして左足を鏃が貫通した所で止まりました。






 狙撃でしょうか。


 扉の閉まった馬車の中にいる人物に弓で狙撃?

 ライフルじゃないんだから可能性は低そう。



 では、まさかの流れ矢?


 木の扉とはいえ、綺麗に貫通してます。

 僕の膝も一緒にです。


 どんな流れ矢ですか……





 僕にもなにが起こったのか良くわかりません。




 ただ、両膝に矢が刺さってるのだけは分かります。










 今ここです。



 説明が長かったですね。






 はい。


 そろそろいいですか?

















「いっっっっってぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」


馬車の中にヒガシカの悲痛な叫びが響き渡った。



本当に膝に矢を受けた所に転生しました。

有言実行です。


転生先の身体の家族はゾウリムシの時の被害者。

酷い話です。


そして、[膝に矢を受けてしまってな]です。

これどうなるの?


もし

もしですよ?


黒ビカリンや膝の矢さんの事も気になって貰えたなら★★★★★頂ければ幸いです。

ブックマークやコメントも嬉しいです。


宜しくお願い致します。

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