第007話 「白い世界の環境改善(下)」
確かに絵面は良くなりましたが……
※2021/09/18 続投に向け整合性見直し、全体の記載方法統一、誤字修正実施
アレから1時間が経過していた。
「ふふ、ふふーん♪」
鏡の前でクルクル回る。
元オッサン。
顔は美少女。
しかもアイドルでも早々は居ないだろうレベルの美少女だ。
背中まである黒髪ロングヘア。
体系は細め。
胸はまぁ少ないが…そこはいい、許容範囲。
身長?
元々が164cmしか無かったので変わらない位だな。
自分の手を見る。
すらっとした指。
マジ綺麗。
「あーっ、あーっ、おほん。ら~ら~ら~♪」
おぉ、良いね。
声も良さそうだ。
服も女子高生らしいブレザーにチェック柄プリーツスカート。
首元はネクタイじゃなくリボン。
あーもう。
何この美少女!?
俺、これ俺でいいの?
「もう、ずっと見てられるんですけど!!」
俺の[ひとりごと]が響き渡る。
ここで1時間半。
「斎京さんや。もう良いかの?
そろそろ暇になってきたのじゃが…」
……
その声にキョロキョロと部屋を見回す俺。
あれ?
2畳程度なのに伊勢が居ない?
…
と思ったら幼女が床に転がってスマホいじってた。
ようじょーな伊勢だ。
「あんまりしつこく見てるなら元の姿に戻そうかの?
もちろんその服装のままで……じゃがの。」
ほ…ほぅ、想像してみようではないか。
…
うふふw
気持ち悪い(はぁと)
「ごめんなさい。もう大丈夫です。」
反省しました。
あれ?そう言えば天の声さんが仕事してない。
と言うか、忘れてた。
『天の声さん?居ます?』
『…モゴッ、ふぉ、ふぉりふぉみひゅうれす。』
「あ、天ちゃんは今昼休憩なのじゃ。言うとらんかったわ。」
あら。
天の声って食事とるの?
それは知らなかった。
「スマンの。
そうそう、スマンついでにこれから私の事はカタカナでイセちゃんと呼ぶ事。
良いかの?
で、斎京さんはキョウちゃんじゃ。
天の声も天ちゃんでよかろう。」
また、唐突に…
別に良いんだけどさ。
捻りもオチもない呼び名だけどな。
「はいはい。それでいいよイセちゃん。」
もう……
子供かよ?
見た目は子供だけどさ。
あれ?
「んむ。苦しゅうない。
んむむ?、むむむ?これは……苦しい?」
プーンと言うか、ツーンと言うか、ウボェェグホッォォと言うか。
もの凄ぇ変な臭いがする!?
「臭っ!!
何か臭い……とかいう話ではないのじゃ!!
目にしみて息苦しいレベルで臭いのじゃ!!!」
本当(マジ:死語)だ!?
なんだ?
(どこからともなくとんでもなく臭い、猛烈な悪臭がする…)
――死臭かっ!?――
つか、目にしみる程臭いってどうよ!!
ヤバい。
嘔吐きそう(涙)
「うぉえっ…と危ない…」
ゲロ吐く女子高生になるところだったわ。
そんな中で[ハッ]と我に返る如く、何かを思い出したロリ伊勢神。
「これっ!天ちゃん!
もしかして、アレを食うとらんかの!?
アレを空間に出すときは前もって言うように伝えた筈じゃが?」
(アレ?アレって何?)
『申し訳御座いません。
アレとアレで御座います。』
――2個になった!?――
「そうか。アレとアレじゃなぁ……
仕方ない……
ちょっとこの世界から切り離すが~
よいかの?」
『構いません。』
え?
この臭いってそう言うレベルなの?
「ちょっと天ちゃん、まってまって!」
『天ちゃん?
…
…
…
はい。
斎京様。
どういったご用件でしょうか。』
今ちょっと呼んだ時に間があったけど…
呼び方で止まった?
俺がそう呼んだから止まった?
…
まあいいか!
イセちゃんの指示だしね。
「アレとアレってなに?」
これだけは聞いておかないと。
『地球産の食べ物です。
シュールストレミングバーガーと、くさやとブルーチーズのラザニアです。
久しぶりに地球人の方との接点があったので思い出しまして、この機会に食べておこうかと思いまして』
(うーん。)
――臭いので有名なヤツー!――
アレって世界を切り離さないと臭いが防げないんだ…
でも、天の声…いや天ちゃんっていったい何所にいるんだろ?
「ねぇ、イセちゃん?」
「なんじゃ、キョウちゃん。」
「天ちゃんって何所かにいるの?」
聞かれた幼女は「ああ!」と言って[ポン]と手を叩き、俺の真横の壁を指さす。
狭い室内なので手を伸ばすと届く距離だ。
「ソコ、放送室なのじゃ。
そこに居るのじゃ!」
――えーーーーーっ!!――
「扉…無いよ?」
「壁に触ると自動で開くのじゃ。凄いじゃろ!」
俺はそっと壁に手を伸ばす…
「待てキョウちゃん!
今開けてはならん!!」
制止するイセちゃん。
しかし時すでに遅く、俺の手は壁に触れていた。
プシューン、ウィーン……
という音と共に白い壁がスライドし横に開いた。
ムワっとした空気。
ならぬ、ヌワッとした悪臭が襲いかかる!!
「ぐわぁっつぅぅ!くっせぇーーーーーーー!!」
目が、私の目が!!
臭いとマジで目にしみる!!
「鼻が!!鼻が曲がってまた曲がってもとに戻るのじゃーーーー!」
ちょ、それは曲がってないというのだぜ?
立ちこめる臭い。
滲んだ視界。
俺は開いた扉の奥に放送室なる物を確認した。
同じような白い部屋だった。
1つの会議テーブル。
その上にはノートパソコンとマイク。
そして食べかけラザニアがあった。
机の前にはキャリアウーマン風の眼鏡女性がオフィスチェアに腰掛けている。
紺色のスーツ?
頭は金髪だがお団子?
見た目には如何にも仕事出来そうって感じだ。
手には食べかけのバーガー。
机の上のラザニアと見比べる。
フォークが刺さっているので手は付けているようだ。
アレとアレがアレか…
女性に目線を戻す。
目が合った。
美人だった。
が
とっても冷たい目で見られた。
口がモグモグしている。
現在進行形で食事中だった。
プシューン
……
…
扉が閉じた。
気まずい……
「天ちゃんや、ホントにすまんの。
キョウちゃんは残念な子なんじゃ。
許してやってくれ。」
なんか、おばあちゃんに庇って貰ってる気分…
見た目は幼女なのにな。
あ、中身はいい歳したオッサンだったわ…
『はい。キョウ様は残念な子と記録いたしました。問題御座いません。』
その記録は問題だ。
本心でお詫びせねば!
そうだ、詫びねばならぬな!!
「天ちゃん。ごめんなさい。」
『いえ。こちらこそ臭くて申し訳御座いませんでした。
ではまた、異世界に向かわれる際にお声掛けください。』
そ、そうだった……
この話、異世界に行く話だった!!
「イセちゃん?」
「言わずともよい。
妾もちょっとばかり忘れておったわ。」
テヘペロする幼女。
待てや、元オッサン。
「さてと、次は人にしようかの。
特殊な状況を再現しようと思うのじゃが?」
え?
特殊?
「特殊って人間なのに?
もしかして凄いスキル持ちとか?」
「いや、シチュエーションが特殊。
ってことじゃのぅ。」
もしかして、村を滅ぼされた生き残りの少年が、冒険者になって成り上がるとかか?
いいね!
ちょっと不謹慎かもしれないけど、展開としては燃えるな。
なんて思いながらイセちゃんの説明を待つ。
「乗合馬車で弓の練習場の横を通ったら、何故か流れ矢が飛んできて膝に受けて引退する予定の兵士希望の少年なのじゃが。」
「…」
なんと!
なんですと!!
それ、あの有名な人より最悪じゃねぇか!!!
戦ってもいないのに負傷して引退とか、その後どうやって生きていくの?
労災とか保険とかないよね?
あれ?
兵士[見習い]って、まだ兵として就職出来てないじゃねぇか!
働く前に働けなくなった男とか、どんだけ不幸なんだよ。
「そうそう。矢を受けた直後に痛みで転生者だと目覚めるようにしようかと。
どうじゃ?
燃えるじゃろ?」
「なんで矢を受けた直後?」
「?
丁度痛みMAXの時に意識が目覚めたほうが、こう[グアァァ!!]ってやる気出るかなって思ったのじゃ。
そうは思わんか?」
ぜんっぜんやる気出ねぇよ。
「で、その兵士見習い、特殊な力とかスキルは?」
「無いのぅ。
普通の兵士見習いじゃ。
じゃが鍛えれば英雄位にはなれる。
それ位の性能は持たせてある。
とは言え、脚が普通ならという前提での。」
じゃあ駄目じゃん。
「チートは?チートの約束は?」
「キョウちゃんは異世界知識があるじゃろ?
ほれほれ、十分チートじゃ。」
おい。
それは立派な詐欺ですよ?
「不死は?不死はつけられるんだよね?」
「まぁそうじゃが、誰かにバレたら悲惨じゃぞ?
少しず~つ千切られては不死のお薬の実験材料とかにされるかもしれんぞ?」
あ~、確かに…
人間怖いからなぁ。
そしてロリは無い胸をババーンと張りこう言い放った。
「仕方がないのじゃ。
特別に異世界言語理解の知識をスキルとしてつけよう!」
完全に欺しに来てるわ。
「それ、目覚める前の意識が言語拾得してるよね?
普通だとそのスキル覚えてなくても言語は覚えてるよね?」
「お、お主!?良い勘をしておるのう!」
――このやろう……――
まぁいい。
まぁいいけど、最低限のスキルくらい要求してやろう。
それくらいならいいだろう?
「鑑定と収納、これだけでも良いから欲しい。」
[うーん]と悩む幼女、そしてそれを見つめる女子高生。
どっちもオッサン。
嗚呼、無情。
「ま、いいじゃろ。
そのスキルはレベルとかは無いのじゃがよいな。」
レベル?
「と言うか、他のスキルはレベルがあるのか?」
「あるのじゃ。
レベル上限は無しで上げ放題じゃ。
急に変異したり他のスキル統合するなんてのはないのぅ。
それと、鑑定と収納は現地には無いスキルなのじゃ。
あえて作ってないスキルを要求しておるわけじゃし、今回作って付与するのだからレベルは要らんじゃろ。
拡張や改善に関しては後で出来るようにしておくからの。」
ほうほう。
拡張とか改善は出来ると。
「で、機能拡張とかは後になって簡単にできるものなのか?」
「そこはホレ、天ちゃん経由で都度聞くがよかろ。
問題無く拡張出来るようにしておいてやるのじゃ。
安心してよいぞ。」
あー、それは良かったかな。
そう言えば、イセちゃんの話し方も少しずつ安定してきた気がする。
いや?ただ俺が[のじゃ]に慣れただけか?
「さて、いつまでもここにこうしておってもなんじゃろ。
早う行ってくるのじゃ。ほれほれ、さぁ行くぞい!
えいっ!」
って、また[えいっ!]か。
気に入ったのかな?
とかなんとか思いながら意識を失いましたよ?
斎京おじさん改めキョウちゃんの異世界での運命や如何に。
斉京おじさん、女子高生になりました。
幼女のイセちゃん、女子高生のキョウちゃん、キャリアウーマンの天ちゃんです。
白い部屋におじさんはいません!
中の人などいないのです!!
まぁ…異世界行ったら別の姿ですけどね
もし
もしですよ?
異世界じゃ白い部屋の美醜関係ないけどいいや!って続きが気になりましたら★★★★★頂ければ幸いです。
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宜しくお願い致します。