第002話 「異世界の真実?」
よくある白い部屋っていうのはなんですかね?
そもそも広さってどのくらいあるのかな?
※2021/09/18 続投に向け整合性見直し、全体の記載方法統一、誤字修正実施
※2022/03/23 誤記修正
ハッと失っていたと思われる意識が戻る。
……
なぜか立ったままのようだ。
一面真っ白の…うん?――ここは部屋?だろうか。
目の前にはほぼ全裸の伊勢がいる。
…
なぜだ?
…
……
もう一度周りを見てみよう。
えっと、白い部屋だな。
壁も床も天井もよくある白漆喰のような普通のものに見える。
広さは…
2畳位しかない……
狭いんだけど。
目の前に半裸の伊勢。
半裸というか葉っぱという名のパンツ一丁な伊勢。
ちなみに[伊勢 44歳 独身 中年太りの肥満体系 少してっぺん禿げ]。
俺?
なんと年上だぜ!
45歳、以下同分。
切ないぜ…
という訳で。
「ふざけんな伊勢、なにその格好!?マジ気持ち悪りぃ!」
「え!?えぇ~!!
自分のプライベート空間なんだから、どんな格好してたっていいじゃないですか!」
プライベート空間?
それならまぁ伊勢のいう通り…
「じゃねぇよ!
お客さん呼ぶときは服着るでしょ!?」
「へぇ~、そうなんですね!
すごい発想ですね!!新機軸ですか?
私は着ませんけどね。
人を呼ばないので。
でも斎京さんも見た目はあんまり変わらないですし、見慣れてるでしょ?」
今俺をそのプライベート空間に呼んでるじゃん……ってもういいや…
「でさぁ、俺はこれからどうなるんだ?
存在を消された元の世界ではどうなったんだ?」
もうここは異世界なのだろうか。
元の世界での存在は消されたと言っていた。
なんてご都合主義なんだ…
「そうですね。
まずはこれから、異世界に行くための設定を決めましょう。
それと元の世界ですが綺麗サッパリ居なかったことになってますよ。
ご家族も誰も覚えてませんよ。
なんて言えばいいですかねぇ……
そうそう、泥酔した帰りにコンビニで買って帰ったオニギリがあるじゃないですか?
それよりもしっかりと忘れ去られてます!
なので安心してください。」
「そ、そうか。安心したよ…あれ?して良いのか?
って言うか、そのオニギリでの説明やめて…?
元の扱いがコンビニのオニギリ相当なんだと思うとなんか悲しいし」
「そんなに気にすることないですよ?
人間なんて神からすれば実にちっぽけなもんです。
虫との差は微々たるもんです。
オニギリの方が売買されるだけ価値がありますよ」
ふ~ん…
なんか、すご~くちっぽけな気持ちになってきた。
「神にそういわれると哀れな子羊が可哀想だと思わないかね?」
「???
あぁ~、あはははは。
子羊は多分そんなことで自分が可哀想だとか思わないです。
でも、どうしてもって言うなら向こうで事故なんかで普通に死んだことにも出来ますよ?
頼んでみましょうか?
そうそう、死んだことにするなら自宅のパソコンとか色々残るんですけど、SSDやHDDのデータは大丈夫ですか?
大丈夫なら今からお願いしておきますよ?」
そう言って伊勢は下半身を隠す葉っぱの隙間からスマホを取り出す。
――葉っぱのサイズよりデカいスマホを――
もう葉っぱじゃなくてスマホで隠したらいいんじゃないか…
それだと電話できないな。
うん。
却下だ。
「いや、伊勢、俺のあの世界での人生(ダウンロード済ファイル)はもういいよ…
あの世界のことは全部無しで…」
俺のプライベートで集めた趣味丸出しのファイル群。
公開されるくらいなら、人生丸ごと全部なくなったほうがいい…
なんかほんと悲しくなってきた。
よしっ!
気を取り直そう!!
「ところでさ、異世界の設定って何を決めるんだ?」
実はこの設定っての、結構興味があるんだよね。
ゲンキンな奴と思うだろう?
これは才能さ!
どうせ逃げられないのだから楽しまなければ損だ。
「そうですね。まず基本の世界観ですか。
これはファンタジーにしましょう。
安直なのが都合つけやすくていいんですよ。」
ほうほう?
なるほど?
ってご都合の為か!
伊勢よ、神様でももっと仕事しろ!
…おっとイカンイカン。
それは置いといてと。
「それって剣と魔法の世界ってことか?
そうするとやっぱ獣人とかも居るとか?」
イヒw
そんなど定番な展開なら楽しそうだな。
オラァちょっとワクワクしてきたぞ?
「そう言うのは何とでもできますよ。
剣と魔法の世界でも、ペンと紙の世界でも、それこそうまい棒とポテトチップスの世界でもね。
獣人だって居るのも出来ますし居ないのもありです。
ランダム設定の世界にも…まぁとりあえずは行けますね。
そうだ。
ちょっと試しにランダムに送ってみますね?」
プシュン!
――は?――
真っ白?
いや、赤か?黄色?オレンジ?
視界が変わっ……
「アッツ!ギャーーーー!!!!」
意識が飛んだ!
いや、消えた?
なんかよくわからないけど飛ばされたらしい。
そして今はまた白い部屋で伊勢と向かい合っている。
「すみません。
ちょっとランダムにしてみたら恒星でしたね」
こ う せ い……
こう…せい……
恒星か!?
太陽じゃねぇか!!
「知覚と同時に蒸発したようです。
体表のデブ水蒸気バリアは0.5秒耐えれたかな~
アッツ―とかギャーって言おうとしてたみたいですが、実際は声になってなかったみたいですよ?
じゃ、次行ってみましょう」
プシュン!
視界が暗転する。
また飛ばされた?
今度はなんだ?
光が目を指す。
超眩しい……
すぐには目を開けられないぞ…
そしてちょっと寒い?
呼吸は…
出来る?
スー
ハー
スー…
!?
!?!?!?!?
「うっッゴぉゲェェ…ァッカッ!ヒュー、フヒュ-…ガッハッガ…」
呼吸が…おかしい!?
てか、これ、息…が?出来てない、の、か??????
……クソッ!!!
バタッ!
……
…
あ、これ。
死に逝ってるわ。
俺死んだわ。
…
そしてまた伊勢と向かい合う。
「まて、待ってくれ!
待とうぜ!STOP!!
いきなり勝手に送るな!
今度もまたすぐに死んだぞ?」
なんなんだこれ……
そして伊勢は不思議そうな顔をしている。
「まぁ人間の下り立てる惑星なんて、宇宙には存在しないに等しいですからね。
飛んだ途端に死ぬのは普通、至極当然、当たり前ですね」
分かってたんかい!!!
いや、分かっててやってるのは俺も多分だけど分かってた…
「なぁ……伊勢よ…
これは、何をしたいんだ?
ん?
俺を使って実験か?」
伊勢はフルフルと首を振る。
「いえ別に。
そんなつもりじゃないです。
斎京さんもいろんな体験が出来て面白いかな?と思いまして」
伊勢流 リアル地獄めぐり観光ツアーだった…
「ぜんっぜん面白くないDeath!!
泣きそうだから…
俺さっき始めて死んだばっかりだよ?
死亡ビギナーだよ?
っていうか、さっきはちょっと泣きながら死んだからやめて?
ね?
さっきの星とか毒の空気?
あれ、マジで苦しかったし」
多分さっきのは毒を吸ったかなんかそんな感じなんだろうか。
「ああ、さっきの星ですか。
空気中の成分濃度の割合が地球と全然違うだけな筈ですよ?
あれ?そういえば酸素あったかな?」
「それは死ぬだろ普通」
「地球人類であればそうでしたね!
いや~、すっかり忘れてましたよ……
ちなみにこの部屋は地球と同じ空気で24時間換気されてます。
まぁ自分、創造神なんで生体維持に酸素要らないんですけどね~」
この神め!
有機物なめんな!!
って、なんでか分からんが不思議とあんまり腹立たないんだよなぁ。
マジで2回ほど死んでるんだから、普通だったらもっとゴルァァァ!!ってなっても良さそうなもんだけど……
やっぱ俺が丸くなった?
いや、確かに身体は丸いぜ?
中年太りだしなw
それに毛もだいぶ減ったしな……
怒髪天を衝くって言う位だし、髪がなくなると天も衝けないから怒りも湧かないのかも知れん……
ってそんな訳ねぇよ!!
ま、いっか。
あぁ~……地球恋しい…
そういえば、地球の神も伊勢の仲間だったな…
――ふっ――
「さあさあ、それじゃあ設定決めますよ!」
パンパンと伊勢が手を叩く。
「最初からそうしてくれ……」
ノリノリの伊勢が恨めしい。
「で、設定は中世ものファンタジーな世界でレベルとスキル制で魔法がある…と。
精霊なんかも居て、神の加護とかあった方がいいですね。
文明の過度な発達はないようにします」
ん?
「あれ?
この世界の神って伊勢だよな?
じゃあ神の加護って伊勢の加護ってこと?」
俺の立ち直りは○び太の昼寝並に早いのだ。
寝るのと起きるのを比べるなって?
まぁいいじゃない。
「与える事もできますが、根本が違いますよ?
ちなみに私は創造神です。
異世界人とかの木っ端共に加護を与えるのは地回りの星の担当神ですよ。
もちろん私の加護も与える事が出来ますが、ちょっと悪目立ちしちゃいますので。
担当神は星に対して、その存在を1以上で設定してます。
私は星の特性で付ける派ですね。
猿人類がベースの星なら、神もその容姿にまつわる神です。
参考程度ですが、地球は無限に近いくらい居るんですよ?
大きめの神でも八百万以上はいますねぇ
地球の創造神は設定が非常に細かいですので」
大きめ?
八百万の神々に含まれるのにサイズ関係あんの?
もしかして、たまごやミカンと同じ扱いなのか?SとかLとか?
「それって、小さめの神とかもいるってことなのか?」
「いやだなぁ。
当たり前に居ますよ?
あれ?
あぁ、斎京さんは現地の神は見えないんでしたっけ?
ご飯粒にもいっぱいくっついてるじゃないですか?
まぁあれ、くっついてるってだけで何もできない神ですけど」
言い方な!
でもそうなんだ。
お米の神様、七福神だっけ?
あれ、米粒にくっついてるだけなんだ。
トリモチか?
もうそれ、神じゃなくてよくね?
なんか神って定義の問題だけだろうがよ…
「斎京さんの思ってることは大体わかります。
ま、概ねその通りですね。
あと、地球には次元違いで精霊ってのも無数にいますよ。
と言うことで神や精霊や魔人や亜人、獣人が同じ次元で存在するところにしましょう。
エルフとオークはセットですし、巨人とか竜とか龍とか……クッころとか大事ですよね~」
地球に精霊とかエルフとオークがセットとかサラッとトンデモ発言に聞こえたけどスルーしよう。
クッころ?
さぁ、なんのことだか知らんな。
「なにが[と言うこと]なのかはわからないけど、まぁそれでいいよ」
それを聞いた伊勢はどこでも無いところを見てブツブツと言っている。
ちょっと頭イカレてるみたいで気持ち悪いが、どうやら何かを設定しているようだ。
…
おっと、聞き忘れがあるな。
「ところで俺は転移になるのか?
それとも転生か?」
まだ設定中のようで、伊勢は目線だけをこちらに寄越した。
「転移したいですか?
さっきと同じことになりますよ?
魔法の世界は節理が違うので、地球の体だと先程のように即死にますよ?」
それ、最初から選択肢ないんじゃん…
「転生なんだな…
ほかに選べるようにも思えないしな。
で、転生する先は?
というか、どう転生するかは選べるのか?」
そう、転生は生まれが大事だ。
最強生物か、はたまた勇者などの称号持ちか。
いずれにせよ楽しく生きるにはチートが必要だ。
「そうですねぇ…
あ、できれば色々試してみましょう!
チートなスラ…イム…って訳には行かない事情があるので、それっぽいので一回いってみましょうよ!
ね!
今設定どおりの世界を構築しましたから」
え?
なんですと?
「今作ったって、もうある場所に行くんじゃないの?」
普通、今ある星とかで見合ったのに行くんだよね?
「違いますよ?
さっき既存の星に行ったでしょ?
普通はみんなあんなのですから。
夜空に輝く無数の星なんて全部恒星ですが、その周りに回っている無数の惑星は殆どが太陽系の地球以外の星と同じです。
地球みたいに色んな生物のいる星なんて、基本的に創造神のデザイナーズ惑星ですよ?
あ、地球の生命誕生は無限とも思える時間の中で無数の宇宙創造の繰り返しのなかで発生した奇跡の産物だそうですけど」
いや~、デザイナーズ惑星ってさ……
マンションかよ。
人類にその用語はないだろう?
地球がそんなんじゃなくてよかったわ。
「って、そんなすぐに作れるもんなの?」
「作れるもんですよ?
慣れてますし、実際は[存在していたことにする]だけなので。
そうそう、後で天の声の設定しておきます。
じゃあ送りますね」
へぇ~、天の声ねぇ~…
!?
「って、ちょ!もう行くのかよ!
こっちの都合も聞けーーーー!!!!!」
プシュン!
そしてまた勝手に飛ばされてしまった斎京おじさんなのであった。
次回、決してスライムじゃない何か。
もし
もしですよ?
スライムじゃなくても続きが気になりましたら★★★★★頂ければ幸いです。
ブックマークやコメントも嬉しいです。
宜しくお願い致します。